Q.私有地なら飲酒運転をしてもいいの?

家の近くの販売店には、試乗用のちょっとしたコースがあります。スピード違反など道路交通法にかかわる違反は、私有地では適用されないと聞きましたが、休日、ちょっとお酒を飲んだ状態でも私有地ならば試乗できるのでしょうか?

A.法律での判断を仰ぐまでもなく、飲酒運転をするべきではありません

まず、法律うんぬんの話をする前に、社会通念上、それが私有地であろうが公道であろうが、飲酒運転をするべきではありません。飲酒をしての運転は、判断力や反応を鈍らせ、思わぬ事故を引き起こします。もし、周りに人も物もない場所でも、自損事故でケガなどをしてしまう可能性も大いにあります。飲酒しての運転は決して行わないようにしてください。

さて、法律的な話に移りましょう。道路交通法にいう道路とは「道路法に規定する道路、道路運送法に規定する自動車道および一般交通の用に供するその他の場所」です。私有地であるかどうかは重要ではありません。完全に外部と遮断されていて、他の車や人間が入ってこない場所ならば、道路交通法は適用されず、スピード違反などを犯しても罰せられることはないでしょう。サーキットなどがよい例で、いくらスピードを出しても、スピード違反にはなりません。ただし、サーキットにしろ、相談にある販売店にしろ、安全を守るための独自ルールがあるはずなので、それは必ず守ってください

ここで勘違いしやすいのが、私有地ならばどんな運転をしてもいいという思い込みです。たとえ空地でも、不特定または多数の人間が出入りする一般的に交通がある場所では、道路と見なされて道路交通法が適用されるという裁判例があります。例えばサーキットの駐車場での事故。これは、事故の程度によっては、道路交通法が適用されることがあります。今回の相談も販売店の試乗用コースに不特定または多数の人が出入りしている状況で事故を起こした場合は、行政処分や刑事処分をされる可能性があります

また、人身事故を起こした場合には、自動車運転過失致死傷などでの立件もありえます。この場合は、相手への損害賠償も発生するでしょう。飲酒をして正常な運転をできない状態で人を死傷させた場合は、危険運転致死傷となりさらに重い処分が下ることも考えられます。

ハンドルを握るときには、場所がどこであろうとも安全運転を心がけ、ルールを守ることが重要です。
第93回:私有地では飲酒運転をしても罰せられないの!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

自動車過失致死傷(じどうしゃかしつちししょう)
自動車の運転上必要な注意を怠り人を死傷させたときには7年以下の懲役もしくは禁錮。または100万円以下の罰金
危険運転致死傷(きけんうんてんちししょう)
アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させたものは15年以下の懲役、人を死亡させたものは1年以上の有期懲役。制限速度(時速50km/h)超などのスピード違反や運転技能の欠如、重大な危険を生じさせる速度で故意の直前割り込みや幅寄せまたは信号無視をして人を死傷させた場合も同様