塚本奈々美


車で我々に夢を提供してくれている様々なスペシャリストたち。連載「スペシャリストのTea Time」は、そんなスペシャリストたちの休憩中に、一緒にお茶をしながらお話を伺うゆるふわ企画。

今回は、レース、ドリフト、ラリーと、3つの異なる競技で活躍する、世界で唯一の「三刀流」女性プロレーサー塚本奈々美さんとの“Tea Time”。
 

塚本奈々美

語り

塚本奈々美

12月14日、ブラジル・サンパウロに生まれる。レース、ドリフト、ラリーと、3つの異なる競技で活躍する、世界で唯一の「三刀流」女性プロレーサー。「美しすぎるレーサー」として様々なメディアへの出演実績がある。また、美容家やモデル、プロゲーミングチームのプロモーションディレクターなど、ジャンルを問わず活動の幅を広げている。

毎週のサーキット通い。朝から晩までカートで200周

車の運転に興味をもったのはカートがきっかけ。車の免許を取って間もない頃、友達に連れられてサーキットに行ったことがあったんです。

そこで小さなカートがびゅんびゅん走ってるのを見て、「あれなに?すごい! 乗ってみたい!」って。実際に乗ってみたらやっぱり楽しくて、タイムを削るのにすっかりハマってしまいました。

それで毎週末、1人でサーキットに通うようになったんです。朝から晩まで、ガソリンがなくなるまで、いつも200周は走ってましたね。

そのうち周りの人から「なんか変わった女の子がいるぞ」と言われるようになって。あるとき「草レースに出てみない?」って声をかけてもらったんです。

とはいえ最初から速かったとか、もともと才能があったとか……そういうことは一切ないんです。

あえて言うなら、常識知らずで怖いもの知らずのオネーチャン。壁に突っ込んだり、コースの外に飛び出したり、あちこちに迷惑をかけながらもなんとか走り続けてきました。

2013年の86/BRZレースからお金をもらって走れるようになって、そのときから「プロレーサー」という自覚をもつようになりましたね。
 

塚本奈々美 ▲レースの場面になると、顔つきだけではなく歩き方や仕草まで変わるという(写真はニュルブルクリンクにて)

レースのために肉体改造。お肉とワインがあればいい

仕事がオフのときは、一切家から出ませんね。ずーっとフトンの中にいて、干物みたいになってます(笑)。

アタマもカラダも完全にオフ! で休ませたいので、何もしないし難しいことも考えない。

強いて言うなら、好きなアニメを見るぐらいかな。最近イッキに見たのは『ゆるキャン』。あれを見ていたらソロキャンプに行ってみたくなったけど……でも行かないか(笑)。アウトドアは興味あるけど、私、虫が苦手なんですよね。それにカエルも大の苦手。

休みに出かけるとしたら映画館ですかね。アンジェリーナ・ジョリーとか、強い女性が出てくる作品が好きなんです。見るとパワーをもらえますしね。

食生活は、2015年にポルシェ・カレラ・カップに出場するために肉体改造したときから大きく変わりました。それ以来、お米、小麦粉、砂糖、果物といった“ 糖質”はほぼ取ってません。

その代わりに食べるのは“お肉”。お肉はいくら食べてもいいので。ちなみに私、朝からステーキも全然いけますよ。赤ワインも大好きなので、もうお肉とワインがあればなにもいらない、というぐらい(笑)。だから糖質を制限していても、ツライと思ったことはまったくないですね。
 

ヘルメットをかぶった瞬間、レーサーのスイッチが入ります

モータースポーツの世界って、女だから優遇されることってないんですよね。

女性カテゴリーがあるわけでもないし、当然のことながらハンディキャップもない。だからレーシングスーツを着てヘルメットをかぶった瞬間、意識的にオンナを捨てるようにしてますね。

自分の中に少しでもなよっとしたところを残していると、競っているときに負けてしまうので。だから、「私には(アイルトン・)セナがついてるんだ」と思いながらスイッチを入れます。

すると不思議なことに歩き方も変わるみたいで、周りからは「オジサンかと思った」とよく言われます(笑)。それでもやっぱり、女でよかったとは思いますよ。私が男だったら、無茶しすぎて……たぶん命が何個あっても足りなかったと思う(笑)。

そういえば昔、占い師さんに見てもらったとき言われたんです。「アナタ本当は男だったんですよ。でもちょっとした間違いで女に生まれてきたみたいです」って(笑)。
 

塚本奈々美 ▲つかの間のティータイムを終え、さっそうと次の仕事現場へ向かっていった塚本さん
文/河西啓介、写真/阿部昌也
※情報誌カーセンサー 2020年10月号(2020年8月20日発売)の記事「スペシャリストのTea Time」をWEB用に再構成して掲載しています