▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

邪道? いやいや、このデザインが最高なんです!

今回は、「BUBU MITSUOKA BUBU横浜」で出合ったシボレー SSRについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。

~語り:テリー伊藤~

やりました! これまでもカーセンサーエッジの「実写見聞録」ではおもしろい車、変わった車を紹介してきましたが、ついに真打ちの登場です!

シボレー SSR。

あなたはこの車の存在を知っていましたか? そしてここまでぶっ飛んだ車、見たことありますか!?

シボレー SSR(Photo:柳田由人)
▲ルーフは電動なんですよね ▲ルーフは電動なんですよね

SSRは、ピックアップトラックなのに2シーターでオープンカー。しかもこのデザイン!!

この車とダッジ バイパーは僕の中での“二大イッちゃってるアメ車”ですが、そのひとつに出合えたのですから、嬉しさもひとしおです!!

SSRが何をイメージしているかというと、「アメリカングラフィティ」時代のチョップトップ(ルーフをカットして全高を下げるカスタム)です。

チョップトップは、この当時の車だからこそ似合うんですよね。

これを現代の車でやってしまうというのは掟破りです。

とくに日本人は、こういう感覚を避ける傾向にある気がします。

だから、日本のアメ車好きからも「こんなもの邪道だ!」と完全否定されてしまった。

僕が大好きなバイパーも、日本では受け入れられませんでした。

やっぱり日本人はアメリカンスポーツ=コルベットなんですよね。ロレックスやオメガが圧倒的に支持されるのと同じだと思います。

もちろんアメリカでも商業的には失敗でした。たった4年で姿を消したのですから。

シボレー SSR(Photo:柳田由人)
シボレー SSR(Photo:柳田由人)

……でもね、よく考えてみてください。

あなたは幼少期、大好きな2つのものがあるのに両方手に入れることができなかったとき、「2つがひとつになったらいいのに……」と考えたことはありませんでしたか?

SSRはまさにその発想です。

ノスタルジックなスポーツカーのイメージでピックアップを作ったらどうなるのか。デザイナーの子供心がここまで前面に出た車を僕は他に知りません。

丸くて愛らしいフロントライトとリアライト。普通ならフェンダーもライトに合わせて丸くするのに、四角くしてしまった。そこがSSRらしい部分です。

だってフェンダーまで丸くしたら、フォルクスワーゲン ビートルみたいになってしまうから。

空力とかを考えてコンピューター上でデザインしたら、こんな車は生まれないでしょうね。

シボレー SSR(Photo:柳田由人)
▲この四角いフェンダー、変でしょう?(笑) ▲この四角いフェンダー、変でしょう?(笑)

SSRがデビューする前、僕はアメリカの車雑誌でSSRがデビューすることを知りました。

完全にやられましたよ。「すげえ、カッコいい!」と思いましたね。

そしてデビュー後に日本でもいくつかのショップが新車並行で入れたんです。僕は雑誌で広告を見て、芝浦にあったショップにすぐ見に行きましたよ。確か700万円くらいの値が付いていたはずです。

残念ながらそのときは縁がなくて手に入れることはありませんでしたが、その後もずっと気になっていました。

3年ほど前には湘南の134号線でSSRとすれ違いました。海が凄く似合っていた。カッコよかったですよ。

どれだけ人気のない車でも、絶版になると欲しがる人が現れます。

例えば、マイケル・ジャクソンが生前はいろいろ批判されていたのに、亡くなった途端、多くの人がベストアルバムを買い求めたのと同じですね。

本当は「これが現行です」というときに評価してあげないといけないのですが。

テリー伊藤なら、こう乗る!

どんな洋服を着たらこの車の雰囲気に似合うのか。これを買って家に帰ったら、奥さんはどんなリアクションをするのか。

……まったく想像できません。

でも、だからこそいいんです!

パリコレのオートクチュールが似合うような気もするし、普通に洗いざらしの黒いTシャツが似合うかもしれない。実際に手に入れた人だけが試せるというのがいいじゃないですか。

シボレー SSR(Photo:柳田由人)

ポット、掃除機、炊飯ジャーなど、最近は革新的なデザインのものが普通に家庭の中に入り込んでいるのに、車となると人は途端に保守的になってしまう。その壁を乗り越えられる感性を持った人に、ぜひ乗ってほしい1台ですね。

例えばデザイナーさんとかは絶対に注目するべきです!

僕なら、似合う洋服、似合う風景、似合う暮らし……すべてを確かめながらこの車と長く付き合っていきたいですね。

これだけ個性的なのですから、きっと30年後も飽きずに乗り続けられますよ!!

▲今後二度と現れない、“ぶっ飛んだ“デザインです! ▲今後二度と現れない、“ぶっ飛んだ“デザインです!

シボレー SSR

2003年に登場したシボレー SSRは、ピックアップトラックでありながら2シーターオープンスポーツの要素も備える非常に珍しいモデル。フロント、リアともに丸いライトでクラシカルな雰囲気を演出しているが、ルーフは約25秒で開閉できる電動メタルトップになっている。03年式、04年式のエンジンは5.3Lだが、05年式からはC6コルベットにも搭載された6LのV8に変更された。



■ テリー伊藤(演出家)
1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『ビビット』(TBS系/毎週木曜金曜8:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。

text/高橋満(BRIDGE MAN)
photo/柳田由人