▲世の中に星の数ほどある車の中で「これぞ今、中古車の理想像の一つ!」と筆者が言うアルファ ロメオ ジュリエッタの前期モデル。なぜ理想的なのか? ていうかそもそも「理想の中古車」って何なのでしょうか? ▲世の中に星の数ほどある車の中で「これぞ今、中古車の理想像の一つ!」と筆者が言うアルファ ロメオ ジュリエッタの前期モデル。なぜ理想的なのか? ていうかそもそも「理想の中古車」って何なのでしょうか?

中古車は安くなければならない。しかし安すぎてもいけない

いきなり結論めいた話で恐縮だが、今、アルファ ロメオ ジュリエッタの前期モデルほど「理想的な中古車」はちょっとないのでは? と思っている。

輸入車にはさほど詳しくない人に向けて「ジュリエッタとは果たしてどんな車か?」というのをまずは解説すべきかもしれないが、それはちょっとだけ後回しにさせていただき、まずは「理想的な中古車とは何ぞや?」ということからご説明申し上げたい。

理想の中古車。それは「安い」という必須条件をまずはクリアしていなければならない。

「中古車の魅力? それはね、とにかく安いということですよ!」と喝破したのは自動車評論界の巨匠、故・徳大寺有恒氏だったと記憶しているが、本当にそのとおりである。ごく一部のレアケースを除き、「新車時価格と比べて大して安くもない中古車」にさほどの存在意義があるとは思えない。「なら新車買うよ!」ということである。

しかし同時に、中古車というのは「安けりゃ安いほどいい」というものでもない。なぜならば、世の中の安いモノには「安くなるだけの理由」というのが必ずあるからだ。

例えば、放っておいても200円で売れる大根を意味もなく68円まで値下げする店主はいない。もしも68円への大幅値下げがあったとしたら、それは基本的には「古くなったなどの理由で商品力が著しく低下したため」であるはずだ。そういった売り切り系野菜を狙うのももちろん自由だが、それは「68円がおおむね妥当な大根を68円で購入した」というだけの話で、「安かった! だからトクをした!」という話とは微妙に違うのである。

▲新鮮でおいしい大根なら、仮に多少高めでもお金を払う価値はある。しかし「しなびた売れ残りの大根」は、仮にかなり安かったとしても「おトクな買い物」と言えるだろうか? ▲新鮮でおいしい大根なら、仮に多少高めでもお金を払う価値はある。しかし「しなびた売れ残りの大根」は、仮にかなり安かったとしても「おトクな買い物」と言えるだろうか?

実用的でありながらセクシー&スポーティなジュリエッタ

それと同様に中古車も、そりゃ探せばいくらでも安い物件はあるが、安い分だけ「正直ボロい」「ボロいってこともないが、車としての出来が正直イマイチ」などのネガ要素は必ず付帯している。それゆえ肝要なのは、やみくもに安さだけを追求するのではなく「ちょうどよく安い1台」を探すことなのだ。

先の大根の例で言うなら、「朝採れの超絶フレッシュ大根(1本200円)と比べればそりゃ見劣りもするが、収穫から1日余分に経過してしまったというだけの理由で1本140円にまで下がっている大根(でも味はまだ全然イケてる)」を探すのが「真のお買い得志向」であろう。そして中古車においても、そんなニュアンスを有している1台こそが「理想の中古車」であり、それを探しだすのが「真の中古車上手」であるはずなのだ。

そして今、冒頭で申し上げたアルファ ロメオ ジュリエッタの前期モデルこそが、そんな理想的ポジションにいるような気がしてならない。

アルファ ロメオ ジュリエッタは11年11月の登場以来、現在も販売中のCセグメント(フォルクスワーゲン ゴルフぐらいのクラス)。実用ハッチバックとはいえ、いかにもイタリアのアルファロメオらしい優雅かつセクシーな内外装デザインが特徴だ。パワートレインは(時期によってラインナップは異なるが)1.4Lマルチエアターボ+6速DCTまたは1.8L直噴ターボ+6MTとなる。

これらエンジンは、それまでのアルファ ロメオ各車に搭載されていた直4ツインスパークやV6と比べればエコ・コンシャスな設計ではあるものの、それでもアルファ ロメオらしい(要するに活発でセクシーな)エンジンフィールはある程度維持されている。ハンドリングも素直かつ軽快で、昔のアルファ ロメオと比べれば故障の発生確率も断然低い……ということで、「実用的でありながらセクシー&スポーティな車」を探している人には強くオススメしたい1台なのだ。

▲往年の車名「ジュリエッタ」の名を現代の世によみがえらせた第3世代のアルファ ロメオ ジュリエッタ。写真は前期型で、今年2月18日からはフロントマスクなどに変更を受けたマイナーチェンジ版が新車販売されている ▲往年の車名「ジュリエッタ」の名を現代の世によみがえらせた第3世代のアルファ ロメオ ジュリエッタ。写真は前期型で、今年2月18日からはフロントマスクなどに変更を受けたマイナーチェンジ版が新車販売されている
▲単なる5ドアハッチバックと言われればそのとおりでもあるのだが、しかし全体の得も言われぬフォルムと細部の洒落たあしらいは、やはりアルファロメオというかイタリア車ならではのものだ ▲単なる5ドアハッチバックと言われればそのとおりでもあるのだが、しかし全体の得も言われぬフォルムと細部の洒落たあしらいは、やはりアルファロメオというかイタリア車ならではのものだ

相場の「緩やかな下落速度」こそ実力と人気の証

そんなジュリエッタは登場以来、特に14年途中までの前期モデルが「ちょうどいいペース」でじっくりジワジワと中古車相場を下げてきている。

中古車相場というのはジワジワではなくドカンといきなり大きく下がり、その後もどんどん下がり続けた方が良さそうな気もするわけだが、それは実は間違いである。ドカンと下がり続けた車種は売却するときもドカンと安いいため、「安かった! トクした!」というのは単なるぬか喜びで終わるケースが多いものだ。そしてドカンといきなり下がるということは、その車種に「ドカンと下がるだけの理由」があったから……という場合も多い。

しかしジュリエッタは違う。中間グレードである「コンペティツォーネ」の低走行物件を例に取ると、新車時358万円だったそれの中古車相場は非常になだらかな下降曲線を描きつつ、約5年の歳月をかけてじんわりと170万円前後へ達した。「新車時価格の約半値」という中古車ならではのお値打ちプライスを十分実現しているわけだが、そこへ到達するまでの時間の長さと下降ペースのゆるやかさが、この車の実力と人気の高さを図らずも証明していると言えよう。

▲ちょっとした現代美術館の館内のようにクールな内装デザインも、ジュリエッタの大きな魅力の一つ。写真は「スポルティーバ」12年モデルの本国仕様 ▲ちょっとした現代美術館の館内のようにクールな内装デザインも、ジュリエッタの大きな魅力の一つ。写真は「スポルティーバ」12年モデルの本国仕様

もちろんジュリエッタの相場は今後さらに下落していくのだろうが、相場のこれまでの底固さから推測すると「いきなりの大崩れ」は考えにくい。ということは今後数年間に限れば「激安ガイシャwww」と後ろ指を差されることなく堂々と、晴れ晴れと乗ることができる。そして売却時も、少なくとも「まあまあ」程度の査定額にはなるはず……なのだ。

まぁ数年後の査定額については単なる予想の域を出ないわけだが、しかし少なくとも今、アルファ ロメオ ジュリエッタ前期モデルの中古車は「程よい安さで狙うことができる、まだまだぜんぜん旬といえば旬な1台」であることは間違いない。「我こそは中古車上手!」と自負する各位はぜひぜひ、車両価格180万円以下にして走行3万km台までの前期ジュリエッタに、強烈なまでにご注目いただければと思う。

text/伊達軍曹
photo/フィアット・クライスラー、photo AC