ランチアデルタHFインテグラーレ
写真上のランチアデルタHFインテグラーレEVOⅡを例に説明すると、状況により一概には言えないが3500rpmあたりからやっとブースト計が動きはじめる。低回転域からビンビンに過給される新世代ダウンサイジングターボと比べると若干まどろっこしいが、その「利きはじめるまでの待ち時間」もなかなかオツなものだ。写真下は不肖伊達が所有するデルタのエンジンルーム。平均燃費はおおむね7km/Lである。
デルタエンジンルーム
●伊達軍曹公式サイト「伊達軍曹.com」
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「ドッカンターボ」という禁断の果実

当たり前だが、誰しもが健康長寿を願っていることだろう。しかし、そのくせ深夜のラーメンや揚げ物弁当などを無性に欲したりするのも、同じその「健康長寿を願う人」である。矛盾しているわけだが、その矛盾をとがめるのもヤボというものだ。語弊をおそれずに言えば、「身体に悪いモノやコト」は一般的に大変おいしいのだから。

車においても似たようなことは言える。様々な状況を鑑みれば、いわゆるひとつのエコカーを選ぶのが昨今の正義だ。しかし、人はパンと正義のみにて生きるにあらずで、ときに悪徳っちゅうか背徳の甘美な味に引かれてしまうのも仕方のないことなのである。

ということで、昨今の清く正しい車が嫌いなわけじゃないけれど、何かがちょっと違うかも?・・・とお嘆きの貴殿にあらためて思い出していただきたいのが、往年の「ドッカンターボ車」だ。

ターボの利きはじめは高らかなファンファーレのごとし

最近の過給機採用車は、かなり清く正しい。排気量そのものがダウンサイジングされ、それを補うための過給機がごく低回転域からそれとなく、しかしビシッと効果的に利く。だから燃費もおおむね良好だ。それでいてパフォーマンスに不満はない。いや不満はないどころの騒ぎじゃなく、かなり凄いことになっている。

が、往年の「ドッカンターボ車」はまるで事情が異なる。低回転域が超スカスカかどうかは車種によりけりだが、一般的に「下」のトルク感は薄い。で、ターボ自体もある程度の回転数まで上げてやらないと利きはじめない。ということで回転数を上げ気味になるので、燃費はどうしても悪化する。排ガスもぶっちゃけ濃いめだ。どうにもこうにも「正義」とは言い難い存在である。

しかし、ひとたびターボあるいはスーパーチャージャーが利きはじめた瞬間の「キターーーーーー!!!!」という、ファンファーレが鳴るがごときのあの感触は、昨今の紳士的なターボ車では絶対に味わえない快楽だ。人間が潜在的に求めてしまう「背徳の味」と言っても良いだろう。加速性能そのものは新世代の清く正しいターボ車を実は下回ったりもするのだが、まぁそんなことはどうでもいいじゃないか。大切なのはあの「ファンファーレ」と、それがもたらす「快感」なのだから。狭いニッポン、のんびり行きましょう。

ということで、今回の伊達セレクションはずばり・・・
往年のドッカンターボ(およびスーパーチャージャー)、再評価してみては?


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE