シャシーは、1950年代の「ダットサン1000」のラダーフレームをベースに補強を加え剛性を高めたものでした ▲シャシーは、1950年代の「ダットサン1000」のラダーフレームをベースに補強を加え剛性を高めたものでした

初代シルビアは554台しか生産されなかった激レア車!

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2015年10月20日に発見したのは「日産 シルビア」の初代です。バブル期以降は“デートカー”として一世を風靡したシルビアではありますが、初代はプレミアム感漂う高級クーペでした。

1964年に開催された第11回東京モーターショーにて「ダットサン クーペ1500」として参考出品され、翌1965年4月からシルビアとして販売が開始されました。シルビアはダットサン フェアレディ(SP310型)のシャシーにSUツインキャブ付R型1.6L OHVエンジン(最高出力90ps)を搭載し、クーペボディを架装したものでした。組み合わせたトランスミッションは、当時としては“スポーティ”だったシンクロ機構を持つクロスレシオの4速フルシンクロ マニュアルトランスミッションです。

ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを持つ2ドアノッチバッククーペで、2人乗りという割り切った設計でした。ボディパネルはすべて手作業による叩き出し、フロントグリルはアルミの削り出し、というこだわりよう。スタイリングは直線を多用したシャープなボディラインと、宝石の“カット”を彷彿とさせる造形が特徴的でした。ちなみに日産はこのデザインを「クリスプカット」と呼んでいました。

▲ボディサイズは全長3985mm×全幅1510mm×全高1275mmで車両重量は980kg。それにしても大胆なロングノーズデザインです ▲ボディサイズは全長3985mm×全幅1510mm×全高1275mmで車両重量は980kg。それにしても大胆なロングノーズデザインです
▲サスペンションは当時のフェアレディ同様、フロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがリジッド/リーフ式を採用しています ▲サスペンションは当時のフェアレディ同様、フロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがリジッド/リーフ式を採用しています

室内にはリクライニング式バケットシート、木製のステアリングホイール、アームレスト兼用のグローブボックス、マップランプなどを装備。この頃の国産車として、最も美しく、高級感漂うものだったと言ってもいいでしょう。

▲シンプルなレイアウトながらスイッチ類のアナログぶりが今の時代には新鮮で、カッコよく見えます ▲シンプルなレイアウトながらスイッチ類のアナログぶりが今の時代には新鮮で、カッコよく見えます

ただ、同じエンジンを搭載するフェアレディより3割ほど高い価格設定であったため、シルビアの売れ行きは芳しくありませんでした。1968年6月に生産終了となるまでの3年余りの間に、生産された台数はわずか554台です。まぁ、裏を返せば「それほどレアな存在である」とも言えます。なお、シルビアは初代の“失敗”を受け、1975年まで絶版となりました。

新車時登録から半世紀が経過していますが、写真を見るかぎり、当該中古車の状態は現役バリバリ感が漂っています。しかも、フルオリジナルで維持され続けてきたようで、まるでタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。ただ1250万円という車両価格はもはやスーパービンテージカーの域ですし、買える人にしか買えない車となっています。

最近のビンテージカー相場の異常高騰は、海外の旺盛な需要に牽引されているものです。まだシルビアの取引事例(高級ビンテージカーを専門としたオークションにおいて)はほとんどないようなので、もっと高額に跳ね上がる可能性も初代シルビアは秘めています。

しっかし、今見ても大胆なスタイリングで惚れ惚れしてしまいます……。

■本体価格(税込):1250.0万円 ■支払総額(税込):---
■走行距離:5.2万km ■年式:1965(S40)
■車検:2017(H29)年7月 ■整備:付(12ヵ月) ■保証:無 
■地域:京都

text/古賀貴司(自動車王国)