▲3列シートと前後ヒンジドアを有する三菱の新興国向け新型MPVには、車体を守るバンパーコーナーがモチーフのダイナミックシールドが織り込まれる。三菱らしいSUVテイストが与えられる可能性も ▲3列シートと前後ヒンジドアを有する三菱の新興国向け新型MPVには、車体を守るバンパーコーナーがモチーフのダイナミックシールドが織り込まれる。三菱らしいSUVテイストが与えられる可能性も

日本以外の生産拠点を、すべて新興国に集約

アメリカ市場の好景気で潤う日系メーカーが相次ぐ中、三菱は独自路線を歩んでいる。7月末には、アウトランダースポーツ(日本名RVR)の生産をアメリカ子会社「MMNA」から日本の岡崎工場に移すと発表。米国販売こそまずまず堅調だが、MMNAから輸出しているロシア向けが同国の景気低迷で思うように上がらず、MMNAの売却先を探そうとしているようだ。

三菱はすでにヨーロッパやオーストラリアの生産からも撤退しており、MMNAでの生産が終了すれば日本を除く先進国に製造拠点を持たない日系自動車メーカーになる。

そんな三菱が生き残りをかけて挑んでいるのが、東南アジア市場だ。主力のタイ工場に加え、2015年1月にはフィリピンの新工場を稼働させた。さらに600億円を投じてインドネシアにも工場を建設中だ。

東南アジアはもともと日系メーカーの知名度やシェアが高く、三菱が得意とするピックアップやSUVのニーズも高い。東南アジアの各拠点で部品や車種の補完関係を築くこともでき、少ない投資で域内の多様なニーズに応えられるというわけだ。

▲インドネシアの新工場では写真のパジェロスポーツや、今回紹介した新型MPV、コルトL300(商用車)などを生産。三菱としては、タイでピックアップ、フィリピンで乗用車、インドネシアでMPVを集中的に生産し、ASEAN域内に供給する考えだ ▲インドネシアの新工場では写真のパジェロスポーツや、今回紹介した新型MPV、コルトL300(商用車)などを生産。三菱としては、タイでピックアップ、フィリピンで乗用車、インドネシアでMPVを集中的に生産し、ASEAN域内に供給する考えだ

そして2017年に稼働するインドネシア工場で生産されるモデルが、今回紹介する新興国向けのMPV(多目的車)だ。3列シート7人乗りで、欧米や日本と違って所得水準の低い東南アジアではエントリーモデルとなる小型SUVだ。日本仕様をアレンジするのではなく、現地ニーズに基づいて開発し、部品調達と生産も域内で完結させている点がひと昔前と違う。

この新興国向けMPVはワイルド感が押し出されている点が特徴だ。フロントマスクには、同社が「ダイナミック・シールド」と名づけたデザインが採用され、新型アウトランダーと同じように、バンパーコーナーがフロントへと回り込む処理が施される。

このクラスは、価格設定も重要なポイントだ。仕向け地や為替によっても異なるが、ライバルであるダイハツ セニアは約150万円~。やや高価格帯のホンダ モビリオ(日本で売られていたものとは別モデル)が約171万円~。スズキ エルティガは約189万円~となる。ブランド力を生かして高価格帯を狙うのか、それとも戦略価格で販売台数を追うのか、三菱の戦略が問われる。

ASEAN市場の年間新車販売台数は約322万台(2014年)。ミャンマーやラオス、カンボジアなどの成長を控え、中長期的に伸びることは間違いないが、高額車の需要はさほど見込めない。当面は厳しい低コスト競争を勝ち抜かなければならない。三菱にとってアジアシフトの成否は生き残りのカギとなるだろう。

※2015年9月29日現在における新型車の発表についての予測記事です。発表を保証するものではありません

【SPECIFICATIONS】
■予想発表時期:2017年以降
■全長×全幅×全高:4275×1675×1650(mm)
■搭載エンジン:1.5L 直4

text/マガジンX編集部 Photo/マガジンX編集部、三菱