▲過日の試乗会で筆者が試乗した新型ホンダ ステップワゴン。箱根にて ▲過日の試乗会で筆者が試乗した新型ホンダ ステップワゴン。箱根にて

ビカビカの新車でさえなければ最高の釣りミニバンなのだが

過日、ホンダの新型ステップワゴンに試乗した。大変素晴らしいミニバンであり、ミニバンを必要とするタイプの釣り人にとってはかなりステキな釣り車になるのではないかと思われた。車の詳細については、おそらくはカーセンサーnetに近日アップされるマジメな自動車ジャーナリスト氏の原稿に譲るが、筆者が新型ステップワゴンについて「ステキな釣り車になるだろう」と感じたポイントは以下のとおりだ。

1. 相変わらず適度なサイズ
旧型と比べ全高は10mm高くなっている(グレードによって異なる)が、全長と全幅は変わらない5ナンバーサイズ(※スパーダを除く)。軽の箱バンほどではないが、釣り場へ続く狭い道へも突撃できるいいサイズ感だ。

2. わくわくゲートの良好な使い勝手
新型ステップワゴンの売りのひとつである「わくわくゲート」は、テールゲートを横開きにも縦開きにも使えるというもの。左側の半分強が開くことになる横開きを選択すれば、狭い駐車場所でのタックル(釣り道具)の出し入れが容易となり、通常の縦開きを選択すれば、上に開いたゲートが小雨の際のちょうどよい「傘」になる。筆者が所有する旧型ルノーカングーのテールゲートは左右に開く観音開き方式で大変おしゃれではあるが、小雨が降っている際には通常のゲートが恋しくなる。そういった意味で縦横に開くわくわくゲートは、道具車のリアゲートとして大変好ましいものだ。

3. 素晴らしい走り
1.5Lのダウンサイジング・ターボエンジンは力強さ十分で、足回りの安定感や素直な挙動のようなものも、筆者には「ミニバン離れしている! 素晴らしい!」と感じられた。ボディ形状の関係でさすがに横風には若干弱いが、これなら長距離遠征でも疲れを感じることなく行き帰りの移動ができるはず。その分釣り場での集中力が増し、そして道中に事故を起こしてしまう危険性も減るだろう。

▲ちょっとした荷物の出し入れをする際は、わくわくゲートをこのように横方向に開くと便利。小雨が降っている日は縦方向にゲートを開ければ、開いたゲートを傘代わりにして細かな作業ができる ▲ちょっとした荷物の出し入れをする際は、わくわくゲートをこのように横方向に開くと便利。小雨が降っている日は縦方向にゲートを開ければ、開いたゲートを傘代わりにして細かな作業ができる

以上のように「大変素晴らしい!」と感じられた新型ステップワゴンだが、筆者に言わせればひとつだけ欠点がある。それは「新車である」ということだ。

再三申し上げているとおり、釣り車/道具車にとって重要な要素の一つは「適度にボロい」ことだ。適度にボロいことで初めて、人は躊躇なくその釣り車/道具車をボコボコの狭い道に突入させることができる。砂や泥、塩などをかぶった道具類を荷室に放り込むことができる。しかし新車や、それに準ずるようなコンディションの車だと、人にもよるのだろうが、なかなかそういった使い方はできないものだ。それゆえ筆者は、釣り車/道具車においては「適度にボロいもの=中古車」を推奨しているのである。

ということで新型ステップワゴンについては、個人的には「1~2年後に登場する中古車に大いに期待したい!」という結論になった。やはり、狙うべき釣り車/道具車は中古車だ。

釣り車に向いた、適度な中古ミニバンは――

さて、筆者の場合はひとりかせいぜい2人で近距離~中距離の釣行に励むタイプゆえ、基本的にミニバンは必要としない。しかし釣り人によってはミニバンであることが望ましいのだろう。その場合は、どんなミニバンを選ぶべきなのだろうか?

最高なのは適度にヤレた新型ステップワゴンだと思うが、それが登場するまでには最低でもあと1年はかかるはず。今すぐ買える適度な中古ミニバンとなると、筆者が考える最適解はマツダの現行プレマシーと、そのOEM生産版である日産ラフェスタ ハイウェイスターだ。

▲2010年7月に登場した現行マツダ プレマシー。アイドリングストップ機構の「i-stop」も採用 ▲2010年7月に登場した現行マツダ プレマシー。アイドリングストップ機構の「i-stop」も採用
▲こちらが現行プレマシーの日産バージョンであるラフェスタ ハイウェイスター ▲こちらが現行プレマシーの日産バージョンであるラフェスタ ハイウェイスターー

新型ステップワゴンと同じようなサイズ感、つまり「おおむね5ナンバーサイズぐらいで、2Lぐらいのエンジンで」となると、他にもトヨタ ノア/ヴォクシーや日産 セレナ、あるいは旧型ステップワゴンがある。その中でも現行プレマシー(およびラフェスタ ハイウェイスター)が良いのではないかと考える理由は「やはり走りが断然良いから」ということに尽きる。

最近とみに注目されている「マツダ車の走りの良さ」だが、それは最近始まったことではなく、しばらく前からずっと良かったのだ。少なくとも現行プレマシーが登場した2010年には、今に続く「あ、マツダの車ってなんかいいね!」と誰もが感じるはずの走りの良さを実現していたと、筆者は考えている。

そんな現行プレマシー/ラフェスタ ハイウェイスターだけあって、その走りは完全にミニバン離れしている。同門の旧型アテンザワゴンとほぼ同等! と言ったらホメすぎだろうが、しかしそれに近いニュアンスの走りは披露してくれると思って間違いない。

それゆえ、運転していてとにかく疲れにくいのだ。またライバル車と比べて全高が低いという点は、積載性能の面ではややマイナスに働くが、ミニバンの大敵である「横風」に対しては圧倒的なアドバンテージとなる。

▲2WDのプレマシーは全高1615mm。ノア/ヴォクシーなどと比べると20数cm低い ▲2WDのプレマシーは全高1615mm。ノア/ヴォクシーなどと比べると20数cm低い
▲リアサスペンションはマルチリンク式。いわゆる「脚がよく動く」感じで、安定性も乗り心地も抜群だ ▲リアサスペンションはマルチリンク式。いわゆる「脚がよく動く」感じで、安定性も乗り心地も抜群だ

また単純に中古車の車両価格も圧倒的に安い。具体的には、旧型ノア/ヴォクシーのボリュームゾーンは約110万~180万円で、現行セレナのそれはおおむね170万~240万円、そしてホンダの旧型ステップワゴンだと140万~200万円といったあたり(2015年5月26日現在)。しかし現行プレマシー/ラフェスタ ハイウェイスターであれば、約100万~150万円で十分に狙うことができるのだ。使い倒したい釣り車/道具車にとって、この手頃な価格帯は心強い要素のひとつとなるだろう。

「背が低め」「買う時は安いけど、その分売る時も(多分)安い」「ちょっと幅が広い(全幅1750mm)」という点を気にする人もいるだろう。それはそれでひとつの見解であるゆえ、全ての人に勧めるわけではない。しかし、もしもそこが問題にならないのであれば、そして釣り車にミニバンというボディ形状を求めるのであれば、現行マツダ プレマシー/日産ラフェスタ ハイウェイスターの中古車は大変素晴らしい選択のひとつだと思うのだが、どうだろうか。

text/伊達軍曹