▲釣り車にとってラゲージルームとは道具を置くためだけの場所ではなく、人によってはゴロリと横になって数時間、仮眠をとるための場所でもある ▲釣り車にとってラゲージルームとは道具を置くためだけの場所ではなく、人によってはゴロリと横になって数時間、仮眠をとるための場所でもある

あなたの釣果は愛車が持つ「仮眠性能」にも左右されている!?

釣り車の「走行性能」と「釣果」の間には多少の相関関係があると以前申し上げた。近場で釣りをする場合はさておき、遠征する場合は走行性能がイマイチだと道中の運転だけで疲れてしまい、現場での集中力が持続しないからだ。しかし最近、もうひとつ重要な性能が釣り車には求められることがわかった。

「仮眠性能」である。

釣りのスタイルや時間割は人それぞれだが、一般的には以下のニュアンスで釣行に出るアングラーが多いとは思う。特にサーフアングラー(砂浜で釣りをする人)はこれに近いはずだ。

1. 超絶早朝(ほとんど夜中)に自宅を出発。
2. 暗いうちに現場へ到着し、日の出前から実釣スタート。
3. 朝のチャンスタイムが終わればとりあえず納竿し、朝食をとる。
4. 安全な場所に車を移動させた後、しばし車内で仮眠する。
5. そうこうしているうちに夕方~夜のチャンスタイムが近づき、当日の「第二部」を開始する。

問題となるのは4の「しばし車内で仮眠する」だ。

▲釣りというのは基本的に夜討ち朝駆けが当たり前なので、どうしても途中、仮眠をとる必要がある ▲釣りというのは基本的に夜討ち朝駆けが当たり前なので、どうしても途中、仮眠をとる必要がある

ここでの仮眠の量と質が十分でないと、夕まずめ(日没前後の薄明るい時間帯)のビッグチャンスに際しても頭と身体がぼーっとしてしまい、釣りにならなくなってしまう。ということで、釣り人にとって「車内での仮眠の質」は非常に重要なポイントなのだ(※ちなみに言うまでもないこととは思いますが、釣行先の車内で仮眠する場合は、安全かつ法的・道義的に問題ない場所へ車を移動し、防犯対策をしっかりとったうえで、自己責任で行ってくださいね)。

さて、となると「究極の釣り車の条件」とは、これまで筆者が再三言っている「適度にボロくて」「キャラ、サイズともに中庸で」「比較的安価で」「走行性能と燃費がまずまず良好で」「横風に強く」、そして「仮眠がとりやすい車」ということになる。

筆者が釣り車として使用している旧型ルノー カングーは上記6条件のうち前半の4つは十分満たしていると思うが、「対横風性能」と、今回提唱している「仮眠性能」については正直やや弱い。

▲明らかに寝づらいわけではないが、「抜群の仮眠性能」とは言い難い筆者の旧型ルノー カングー ▲明らかに寝づらいわけではないが、「抜群の仮眠性能」とは言い難い筆者の旧型ルノー カングー

フロントシートをフルに下げたうえでダッシュボード上に足を載せて仮眠しようにも、フロントシートの前後スライド量がさほど多くはないため、足を完全には伸ばすことができない(※身長175cmの筆者の場合)。フラットにした荷室にマットを敷いて横になろうにも、小ぶりな車であるため(それは旧型カングーの美点でもあるのだが)、荷室の前後長がやや足りない。荷室に対して斜めのポジションをとれば筆者の背丈でもギリギリ何とかなるが、荷室には釣りに必要な道具類がそこそこ積まれているのでそうもいかない……というのが旧型カングーの仮眠性能の実態だ。

では、どんなモデルであれば車内で快適な仮眠をとることができるのか? 有力候補のひとつは、伝説の車中泊車「モビリオスパイク」の後継車である「ホンダ フリードスパイク」だ。

▲7人乗りハイト系コンパクトミニバンであるホンダ フリードの3列目シートを排除し、広大な荷室空間を実現したフリードスパイク。自転車を積んだり車中泊をする人にも人気が高い ▲7人乗りハイト系コンパクトミニバンであるホンダ フリードの3列目シートを排除し、広大な荷室空間を実現したフリードスパイク。自転車を積んだり車中泊をする人にも人気が高い
▲「反転フロアボード」とシートアレンジで超フラットな仮眠空間に。荷室の最大前後長は2015mm ▲「反転フロアボード」とシートアレンジで超フラットな仮眠空間に。荷室の最大前後長は2015mm

後席を倒してフルフラットモードにすれば、最大2015mmの前後長となる大空間が出現。ロッドやウェーダーバッグなどを左右どちらかに寄せたうえでゴロリと横になれば、かなり大柄な人でも完全に身体を伸ばして爆睡できる。これで夕まずめからの集中力も完璧である。しかし、コンパクトタイプとはいえ背の高いミニバンであることには変わりないため、横風には正直あまり強くない。また中古車の平均車両価格も5月6日現在で約139万円と、決してバカ高くはないが「安い!」とも言えない水準。このあたりをどう評価するかは人それぞれだろう。

その他、筆者が提唱する釣り車の条件に合致する車の中で仮眠性能が高いモデルといえば、ホンダのフィットシャトル/フィットシャトルハイブリッドと、現行トヨタ カローラフィールダーか。

▲旧型フィットの前後オーバーハングを延長したホンダ フィットシャトル ▲旧型フィットの前後オーバーハングを延長したホンダ フィットシャトル
▲こちらはトヨタ カローラフィールダーの現行型(の前期モデル) ▲こちらはトヨタ カローラフィールダーの現行型(の前期モデル)

フィットシャトル/フィットシャトルハイブリッドは荷室の最大前後長が1810mmとなかなかで、フラットにした際の段差も最小レベル。良好な仮眠性能を誇るが、筆者が試乗したところによれば横風にはあまり強くなく、また中古車平均価格も5月6日現在、ガソリンエンジンの方が約126万円で、ハイブリッドが約140万円。これまたフリードスパイク同様、使い倒す釣り車としてはもうひと声安いとありがたいのだが。

▲フィットシャトルの荷室長は1810mm。このクラスとしては驚異的な長さといえる ▲フィットシャトルの荷室長は1810mm。このクラスとしては驚異的な長さといえる

現行カローラフィールダーは荷室の最大前後長2025mmとかなりのものだが、フルフラットにした際の傾斜がややキツく、また平均価格もまだ約158万円。……好ましい車ではあるが、何かと微妙でもある。

▲こちらは現行カローラフィールダー。荷室長は2025mmとかなりのものだが、傾斜がやや気になる ▲こちらは現行カローラフィールダー。荷室長は2025mmとかなりのものだが、傾斜がやや気になる

こう考えていくと、究極の釣り車選びというのは本当に難しい。どうしても「あちらを立てればこちらが立たず」といった状態になってしまうのだ。筆者個人は旧型カングーにおおむね満足しているが、もしもあなたが「仮眠性能こそが最重要課題だ!」と考えるのであれば、オススメは順当にホンダ フリードスパイクということになるだろう。貴殿の、フリードスパイクの荷室で爆睡したうえでの「爆釣」を祈念しております。

text/伊達軍曹