▲巣鴨地蔵通り商店街にて。手前を横切る若い女性は鮮やかなイエローのハーフコート姿だが、巣鴨に集まるシニアなマダムは微妙な中間色を好むようで、巣鴨は街中がおおむねこの種の色で埋めつくされている ▲巣鴨地蔵通り商店街にて。手前を横切る若い女性は鮮やかなイエローのハーフコート姿だが、巣鴨に集まるシニアなマダムは微妙な中間色を好むようで、巣鴨は街中がおおむねこの種の色で埋めつくされている

本当はシニアこそ「原色」を身につけたいところだが……

「おばあちゃんの原宿」ともいわれる巣鴨の商店街を通りかかるたびに不思議に思うことがあった。「シニアなマダムたちはなぜ、皆そろいもそろって“あの赤”が大好きなのだろうか?」ということだ。

“あの赤”とは、この赤である

▲写真ではちょっと紫がかってしまっているが、まぁこんな感じの微妙な赤のこと ▲写真ではちょっと紫がかってしまっているが、まぁこんな感じの微妙な赤のこと

写真および画面でどれだけ伝わるかは微妙だが、赤のような紫のような何とも言えない、日本の伝統色で言うところの「中紅(なかべに)」に似た、あの色である。あなたの周りにも、中紅色の上着や帽子などを身につけたシニアなマダムがたくさんいらっしゃるのではないだろうか。

もちろん中紅はステキな色である。しかし失礼ながらお年を召したマダムは、こういった中間色を身につけるとどうにも沈んだ印象になってしまうことも多い。シニアなマダムだからこそ、もっとヴィヴィッドな赤をワンポイントでも入れればもっとステキなのに……と常々思っていたのだ。

しかし、筆者は完全に無知だった。マダムたちには“あの色”を身に着けなければいけない切実な理由があるのだ。そのことを教えてくれたのは84歳になる筆者の義母だった。

あるとき、義母がダウンジャケットが欲しいというので、「ではわたくしが買ってあげよう。色は、いっそ赤が良いのではないか。年配の人ほど鮮やかな色を取り入れるべきだと、たしかテレビでドン小西も言ってたし」とわたしは言った。しかし老義母は「そんなのは恥ずかしくて着れない」という。似合うと思うのだが、まぁ本人が嫌というなら仕方ない。それでは逆にぐっとシックなブラウン系などはどうか? と勧めても、首を横に振るばかり。で、最終的に彼女が選んだのが“あの赤”、すなわち中紅のダウンジャケットだった。そしてひと言つぶやいた。「……やっぱり赤はカワイイ」と。

このときわたしはすべてを理解した。シニアなマダムとなっても、それこそ84歳になっても、女心というか乙女心のようなものは一切変わらない。かわいらしい赤やピンクなどのモノを身に着けたいのだ。しかし、それはもう自分には似合わないことも知っている(筆者はそうは思わないが)。でも、やはり赤いモノは身につけたい……となったときに俄然光るのが、“あの赤”なのである。「自分にも着ることができる赤」ということだ。

繰り返しになるが、筆者自身は前述の理由でシニアなマダムは“あの赤”を着るべきではなく、むしろヴィヴィッドな赤や青、黄などを積極的に取り入れるべきだと考えている。……しかし、それもある種の理想論でしかないのだろう。話を自分自身に置き換えてみれば、そのことはすぐにわかる。

筆者も当年取って47歳の大年寄であるため、若い頃のような原色系の衣服や持ち物はほとんど身につけず、気がついてみれば微妙な中間色に囲まれている。鮮やかな色はもはや似合わないという自覚があるのだ。もしも筆者に20歳ぐらいの息子がいたとして、「オヤジ、そんな地味な色の服着てないでもっと鮮やかな赤とか青とか着ろよ。こないだテレビでドン小西もそう言ってたぜ」などと言われても、聞く耳すらもたないだろう。義母の気持ちはよくわかる。ドン小西が何と言おうと恥ずかしいものは恥ずかしいし、実際、中高年が原色を上手に取り入れるのは、ファッションの達人でもない限り難しい部分も多いだろう。

しかしだからこそ、車の色についてだけはちょっと頑張りたいところだ。

▲いっそ鮮やかすぎるレーベルブルーのボルボを買う、とか ▲いっそ鮮やかすぎるレーベルブルーのボルボを買う、とか

中高年こそ、それこそドン小西ではないが、シルバーやグレーなどの地味な色じゃなくて「ヴィヴィッドなボディカラーの車」に乗るべきなのではないだろうか。その方が何かと元気も出て、そしてストレートすぎる言い方ではあるが“カッコいい”のではないだろうか。

でも赤とか真っ青なやつとか黄色の車なんて、いい年こいて恥ずかしい? ……同じくいい年こいた人間として、その気持ちはよくわかる。しかし車と洋服とでは何かとずいぶん違うものだ。

洋服というのは基本的に朝から晩までずっと着ていて、その姿にて天下の往来を行き来するものである。そこでいきなりシニアが赤とか鮮やかな青を着る……というのもなかなか恥ずかしいものはあるだろう。しかし車は(基本的には)ずっとではなくちょっと乗るものであり、なおかつ、幌を開けた状態のオープンカーを除けば自分自身がモロ出しとなって天下の往来を行き来するものでもない。それゆえ、過剰な照れを感じる必要はないのだ。だからこそ、全国の中高年のみなさまに自信をもって勧めることができるのである。……乗ってみればわかりますよ。ミドルやシニアが原色系の車に乗ってるのってかなりカッコいいし、そして自分自身、なぜか知らないけどパワーも出ますから!

▲シニアとヴィヴィッドな色の組み合わせというのは本当にステキな光景。写真の人物は1964年のラリー・モンテカルロでミニ クーパーSを駆り優勝したパディ・ホプカークさん ▲シニアとヴィヴィッドな色の組み合わせというのは本当にステキな光景。写真の人物は1964年のラリー・モンテカルロでミニ クーパーSを駆り優勝したパディ・ホプカークさん

なるたけ鮮やかな色味を選びさえすれば車種は不問でも良いかと思うが、まぁ年齢相応の貫禄のようなものを自然と感じさせる車種、すなわちCセグメント以上のモデルを選んだ方がご自身とのマッチングは良いだろう。ということで今回のわたくしからミドル&シニアな皆さまへのオススメは、「鮮やかなボディカラーを持つCセグメント以上の輸入車」だ。

text/伊達軍曹