矛盾だらけの課題を克服したフィットに未来のスタンダードを感じた

時として一見何気ない普通の中に、新しい未来への方向性が潜んでいることがある。そしてそれが人づてに広がり、スタンダードになって行く。そんな未来のスタンダードになる車が生まれたと思った。
2代目「フィット」だ。

すでにスモールカーのカテゴリーの中で、先代フィットはそのボジションを確立していた。かわいらしく知的なフォルムの先代は、20代から60代までの幅広いユーザーに等しく愛されていた。

11月1日、2代目フィットの試乗会が横浜で行われた。そこで開発の袴田仁(はかまだひとし)という男と出会った。「自社・他社を含めスモールカーのカテゴリーのフラッグシップとなり、すべてのスモールカーが追い越す指針になる車を目指した」と袴田氏は語ってくれた。スモールカーは何よりも環境に配慮してなくてはならない。それは販売台数が多く、中途半端な環境対策では数で環境を壊してしまうためだ。彼は開発を進める中、理想の「フィット」を創るため、ボディのサイズアップを決めた。

しかし、車の剛性を向上させた上で、骨格であるホワイトボディの重量は増やさないという矛盾した目標も定めた。そして矛盾したこの目標にこだわり、鋼材の材質・形状などを見直し、見事達成させた。

新開発のi-VTECエンジンは、もともと効率の良いエンジンだった。その完成されたエンジンを、「フィット」用に、もっと効率の良いパワーのあるエンジンにするという、至難の技に近いチューンを施した。そして完成したのが2代目「フィット」である。厳しい状況に自らを置いた袴田氏は、「開発ドMだ!」と笑っていた。

ホンダらしい走りを研ぎ澄まし、価格は抑える。矛盾だらけのこの目標を達成した袴田氏の顔は明るかった。

「今だから…」と笑ってこう言った。「試作車の段階では、もっとやるべきことはなかったのか、まだやるべきことがあるのではないかと最後まで問い続けていた」。しかし、量産ラインから生まれた最初のフィットに試乗したとき、間違っていなかったことを確信したそうだ。パワーアップしたエンジンに軽いボディは、現時点でクラス最高の燃費、24km/Lをたたき出している。

2代目「フィット」は間違いなくホンダの車である。

合掌。
<奈落院煩悩寺和尚>