▲訳あって最近、各大学の体育会自動車部を取材している筆者。写真は東京大学自動車部の競技用車両。学生さんたちが自分でバラして組み立てて、柔道部とかと同じように練習と試合に取り組んでいます ▲訳あって最近、各大学の体育会自動車部を取材している筆者。写真は東京大学自動車部の競技用車両。学生さんたちが自分でバラして組み立てて、柔道部とかと同じように練習と試合に取り組んでいます

ヤングな車に乗ってもヤングには戻れません

最近、縁あって都内各大学の「体育会自動車部」に取材者としてお邪魔している。これまで東大、早稲田、慶應、明治、法政、上智、日大、中大の各大学に行き、今後も(書き手としてクビにならなければ)その他大学にも順次伺う予定なので、もしかしたらあなたの出身校に行く機会もあるのかもしれない。

それはさておき、大学生諸君と話していて痛切に感じるのは「若さというものの素晴らしさ」である。

若人はとにかく純粋で、とにかくアツい。もちろん人間も20歳前後ともなれば「幼稚園児のように純粋」というわけでは決してなく、様々なドロドロもあるのだろう。しかし大学生諸君のドロドロなど、四十路となった筆者のドロドロと比べれば清流のごとしである。ギャラが出るわけでもない大会に向けて血みどろの努力を重ね、喧嘩し、和解し、恋に落ち、そして取材班が持ち込んだトヨタ86の広報車を「い、いいんですか!?」と目をキッラキラに輝かせて試乗しまくる。それらはすべて、筆者のようなおっさんはとうの昔に失ってしまった美しきモロモロである。率直に言って、彼らのことが眩しくて仕方ない。

ということで今回のわたくしからのオススメは、乗るだけで若き日の感覚を丸ごと取り戻せるような、みずみずしさあふれるヤングな輸入車である……などと言うと思ったら大間違いだ。そんなものを、わたくしは決して勧めたりはしない。だいたい「ヤングな輸入車」って何だ? 自分で言っておきながら意味不明である。

まぁ「ヤングな輸入車」というのを仮に「価格もサイズも若者に似合いそうな、小気味良い走りの輸入車」ということにしておこう。昔で言うプジョー205GTiのような車だ。で、そんな「ヤングな輸入車」に中年になった筆者が今さら乗ってどうしようというのだ?

▲80年代から90年代初頭にかけて一世を風靡したプジョー205。もちろんステキな車ではありますが…… ▲80年代から90年代初頭にかけて一世を風靡したプジョー205。もちろんステキな車ではありますが……

205GTi的な車に乗ったところで、ルームミラーに映るのは紅顔の美少年だったあなたではなく、目尻のシワや白髪が急速に増え、頬のあたりもたるみ始めたあなただ。失われた時というのは、何をしたところで返ってはこないのだ。たまには追憶に浸るのも悪いことではないだろうし、「若さを取り戻すウンヌンじゃなくて、単純にヤングな輸入車が好きなんだよね」ということで“GTiな車”に40代のおっさんが乗るのもステキだ。しかし「あの頃的な車に乗れば、あの頃的な自分になれる」と思ったら大間違いですよ……という話である。

では、おっさんは何に乗るべきなのか?

ここから先は各人の嗜好や人生観などにより様々であるため、一概には何とも言えない。ただ筆者が個人として強く確信しているのが「若作りをするのではなく、逆におっさん道を極めた方がいい」ということだ。「若作り」は、「若い」には絶対にかなわない。だから、そこを無理やり何とかしようとするのではなく、おっさんならではの持ち味を極めるのだ。突き詰めるのだ。

そう考えたとき、おっさんが乗る車は車両価格がなるべく高めで、いわゆる車格もなるたけアッパーで、イメージ的にも極力油ぎったモノであることが望ましいだろう。若人が買おうにも絶対に手が出ない類の車をあえて買うことで、若者と自らの差異をより明確にするのだ。もちろん、とはいえこちらもフツーの勤め人だったり小規模自営業者だったりするので、新車のそれを狙うのはなかなか厳しい。ということで、買うのは必然的に中古車になる。まぁ、車に詳しくない方々には新車も高年式中古車も(たぶん、おそらく)見分けはそうそうつかないので心配は無用だ。

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そしてそういった車を手に入れたら、偽善者ならぬ偽悪者的に「ふん、お前ら若造はコレ買えないだろう? 乗れないだろう? ざまあ見やがれバカヤロー!」とでもうそぶきつつ、心の中で「……諸君らの貴重な若き日々、大切にしろよ。二度と戻って来ない日々なんだからな……」と、そっと祈る。我々おっさんにできることといえば、それぐらいしかないではないか。

ということで今回のわたくしからの(本当の)オススメは、「中年力が炸裂するギラギラ系輸入車」だ。

text/伊達軍曹