原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2013年5月21日に発見したのは「スズキ フロンテ」です。スズキ アルトの前身で、コンパクトなハッチバックのような形(リアのハッチは開きません)をしていますが、当時は「2ドアセダン」と呼ばれていました。昔の軽自動車規格ですから、今見るとオモチャみたいで愛くるしいです。街中で見かける機会は少ないので差別化にはうってつけな車です。

360ccの2サイクル3気筒エンジンを搭載しており最高出力は34ps。しかし、車重は500kgに満たない超軽量な車なので、都心部での移動手段には十分でしょう。

当該中古車は3代目にあたるフロンテで、空冷と水冷エンジンの2種類を用意。廉価モデルには空冷エンジンが、高級モデル(今回取り上げる車両)には水冷エンジンが搭載されていたんです。ちなみに、フロンテはFF車として登場しましたが、2代目から4代目まではRR(リアエンジン後輪駆動)だったんです。

一般的に新車時登録から相当期間がたっても流通する車は、有名どころの輸入車や新車時価格の高いものが多いんです。車は新車時から“価値”が下がっていきますし、車検を何回も通していくうちに「下取りに出しても値段がつかないし廃車かなぁ」なんて思いがよぎるからです。このフロンテのように国産軽自動車が新車時から41年間も様々なオーナーのもとを渡り歩いて、中古車市場に流通するのはまれなことです。

クラシックカー遊びはおいそれと手を出せる道楽ではありませんが、総額65万円で41年前の車と向き合う生活って意外とお手頃。携帯電話を肌身離さず持ち歩いている昨今でも、機械式のアンティーク腕時計を愛用するようなファッション感覚で付き合うと楽しいと思いますよ。

エアコンがなかったり、パワーステアリングがなかったり、不便なことはたくさんあるでしょう。でも「運転する」という行為に真摯に向き合え、現代の車の快適性をあらためて認識できるはずです。お金を払ってサウナに行く人たちがいるなか、普通に運転するだけで汗もかけますし(笑)。

最近の「出来の良い」移動車に飽きてきたなら、フロンテは刺激的なパートナーになりえます。速さを求めたら上には上がいますが、フロンテならのんびり、ゆっくり……。私なら、あえて毎日の移動に使ってみたいです。

Text/古賀貴司(自動車王国)

スズキ フロンテ

スズキ フロンテ

本体価格(税込)65.0万円
支払総額(税込)67.0万円
走行距離8.2万km
年式1972(S47)年式
車検2014(H26)年9月
整備
保証
地域福岡