ロングノーズ、ワイドボディ、そして地を這うような背の低さ・・・、今見ても立派にスポーティで優雅 ▲ロングノーズ、ワイドボディ、そして地を這うような背の低さ・・・、今見ても立派にスポーティで優雅

8シリーズはいつの間にかレアな存在になっていた

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2015年10月16日に発見したのは「BMW 840Ci Mインディビジュアル」です。8シリーズは1989年のフランクフルトモーターショーでデビューし、日本では1990年から販売が開始されました。

8シリーズは1984年に構想が立ち、1986年から市販車の研究開発が開始。構想・研究開発の段階では世界的な好景気に後押しされましたが、市販車の登場直後には世界的な金融危機に見舞われる、という不運なモデルでもありました。

かつて“世界で最も美しいクーペ”と評された初代6シリーズの後継車と思われたものですが、まったく新しい高級GTクーペとして8シリーズは登場しました。豪華装備が満載だったのに加え、Bピラー廃止によるボディ補強などもあって、車両重量は1800kg台と当時としては巨漢に仕上がりました。

とはいえ、決して遅いわけではありません。デビュー当初は5L V12エンジンを搭載したモデルだけでしたが、後に4L V8、4.4L V8、5.6L V12エンジンを搭載したモデルも日本に投入されました。

▲もう見ることがなくなった、リトラクタブルヘッドライトは車好きにはたまりません。しかも、今見ても古臭くありません ▲もう見ることがなくなった、リトラクタブルヘッドライトは車好きにはたまりません。しかも、今見ても古臭くありません
▲「人間工学に基づいたデザイン」という売り文句をよくBMWは使っていますが、本当にスイッチ類がドライバーの方を向いています ▲「人間工学に基づいたデザイン」という売り文句をよくBMWは使っていますが、本当にスイッチ類がドライバーの方を向いています

8シリーズは約10年間生産されましたが、全世界で販売された台数は3万台ちょっと。開発費は10億ドルを超えていたそうですから、BMWからこの手のクーペがしばらく投入されなくなったのも無理ありません……。

ちょっとマニアックかもしれませんが、車両開発は当時としてはまだ斬新だったCAD(コンピューター支援設計)を用いています。もちろん、風洞テストも行い、空力特性を示すCd値は0.29でした。また、車内情報通信には今でこそ一般的になったCAN BUS(機器間のデータ転送に使われる電子制御ユニット)をBMWとして初めて採用したのも8シリーズで、1990年の時点でアクセルバイワイヤを採用していたんです。

8シリーズは、中古車としての人気はさほど高くなく、数年前まで破格で取引されていました。また、以前はカーセンサーには必ず数台掲載されていましたが、今では当該中古車がカーセンサーに掲載されている唯一の8シリーズとなっています。いつの間にかレアな存在になっていたんですね。

当該中古車、当時BMWユーザーの間では人気だったACシュニッツァーのエアロパーツやホイールを装着。写真で見るかぎり、車両の状態も年式を考えれば良好なように見えます。

▲当時、BMWユーザーの間では人気だった、ドイツのBMWチューニングブランド、ACシュニッツァーのエアロとホイール装着済み ▲当時、BMWユーザーの間では人気だった、ドイツのBMWチューニングブランド、ACシュニッツァーのエアロとホイール装着済み

ただ、当該中古車はモデル末期(高年式)ですし、ただでさえ豪華なインテリアにさらなる高級感を与えた“Mインディビジュアル”ゆえにちょっと高めの値付けがされています。もしかしたら、昨今のネオクラシックブームの影響が8シリーズにも及んでいるのかもしれませんね。

■本体価格(税込):350.0万円 ■支払総額(税込):---
■走行距離:5.5万km ■年式:1997(H9)
■車検:2016(H28)年9月 ■整備:無 ■保証:無 
■地域:東京

text/古賀貴司(自動車王国)