丸っこいデザインがカワイイ、初代マーチベースのレトロカー

1982年から1992年まで、実に10年という長きにわたって発売された初代日産マーチ。初代のモデル末期には、この車をベースに「パイクカー」と呼ばれる個性的なデザインの3車種が発売されました。今回は、その中で第1弾として発売された日産Be-1をご紹介します。

Be-1は1985年10月の東京モーターショーで一般公開され、1987年1月に限定1万台で発売されました。丸っこいちょっとレトロな味わいのセミノッチバックモデルで、限定台数はわずか2カ月で予約完了しています。発売時の新車価格は129.3万~144.8万円。ボディカラーは黄色、白、赤の3色が設定されています。

機関的にはベースである初代マーチそのもの。ノンターボの1Lの直4DOHCエンジンに、5MTまたは3ATが組み合わされます。最高出力は52psと動力性能にはこれといって見るべき点はありません。オプションとして電動キャンバストップの設定がありました。乗車定員は5人ですが、後部座席はちょっと窮屈というところもマーチ同様です。
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  • 日産 Be-1  リア|見つけたら即買い!?
一方で、ボディは実に斬新でした。角型のヘッドライト全盛の時代に、丸みを帯びたランプを使用。フォルムを含めて、全体的に女性の視線を意識したデザインは、auの携帯電話デザインなどを手がけるプロダクトデザイナー坂井直樹氏の手によるもの。当時、日産が社外のデザイナーを起用するのは非常に珍しいことでした。

発売時の人気は非常に高く、早々に予約完了して納車待ちとなったため、当初400台だった月産体制を急遽600台に変更したほど。予約も殺到したため、購入予定者を抽選で決定するという措置も取られました。GT-R発売時のように、発売当時は中古車の価格が新車価格を上回ることもありました。

ムーブメントはさらに続き、オリジナルグッズを販売する専門ショップが東京・青山通り沿いに作られたり、オープンカーに改造された特別車が横浜スタジアムのリリーフカーとして使用されたりしました。横浜ベイスターズの抑えのエースだった、「大魔神」こと佐々木主浩投手がBe-1とともに登場する姿が記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。

ボディ製造は日産の特殊車やコンパーチブル車への改造を多く手がける、高田工業によって行われました。軽量化を図るとともに、コストをかけずに凝った加工が行えるように、世界初となるフレックス樹脂パネルをボディに採用しています。半面、実質的に製造工程は手作業に近くなり、限定少量生産にせざるを得ない側面もありました。
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20年以上前の車にしては、流通台数は豊富なほうと言えるかもしれません。原稿執筆時点でカーセンサーnetに掲載されている日産Be-1の数は29台。もっとも、相場はさすがに20年前の車といった価格帯で、最安値は9.8万円。最高値でも60万円にとどまっています。

しかしキャンバストップを希望するとなると、わずか4台と選択肢がグッと狭まります。コンディション重視の場合も厳しく、走行距離が5万km以下の物件は7台だけ。3万km以下となると、わずか2台となってしまいます。状態の良い個体を手に入れようとするならば、現在がラストチャンスと言えそうです。

輸入車には個性的なデザインの小型オールドモデルは少なくありませんが、オシャレでレトロな国産車は非常にレアな存在。街中で目を引くBe-1はちょっと変わった車が好きな方には面白い選択肢だと思います。

予算はあまりないけどオシャレな車に乗りたい人、人と違った車に乗りたい人、さらには全盛期のベイスターズが懐かしい人は、ぜひ下の検索窓に「Be-1」と入力して検討してみてください。


Text/渡瀬基樹