▲雄大な相模湾を「借景」として堪能しながら、レアな自然薯とろろをいただいてきました! ▲雄大な相模湾を「借景」として堪能しながら、レアな自然薯とろろをいただいてきました!

まるで風流な粋人の海辺の別荘に招かれたような気分

「天気の良い日、海沿いの道をのんびり走る」というのは、もしかしたらドライブにおける最大の楽しみなのかもしれない。そして、ひたすら海を眺めながら走った先で(※もちろん脇見運転は厳禁ですけど)、ごはんを食べるとなったとき、その店内でも、まるで海沿いドライブの続きのような最高の景色を楽しめるとしたら? ……それはもう最高すぎるイベントとなることは間違いない。

そんな最高すぎる経験ができるのが、住所でいうと静岡県だが実際は神奈川県の湯河原駅にほど近い海沿いのお店、「自然薯処 麦とろ童子」だ。

東京方面から麦とろ童子に行く場合は山側(箱根側)からではなく、ぜひ海側からアプローチしたい。できれば江の島あたりから国道134号線を使って下道をのんびり走り、そして西湘バイパスおよび真鶴道路に乗る。そうすればおおむね1時間の間、あなたの左側にはほぼず~っとエメラルドグリーンの海が見えることになる。

▲国道135号線沿いに現れる「麦とろ童子」入口。夏場は木が生い茂っているので見落とし注意 ▲国道135号線沿いに現れる「麦とろ童子」入口。夏場は木が生い茂っているので見落とし注意

海風を感じながら真鶴道路を降り、国道135号線を山の方にほんの少々向かった左手に、あなたは「麦とろ童子」を見つけるだろう。ただ、夏の間はお店の周囲の木が生い茂っているため、もしかしたら見落としてしまうかも。左手に現れる看板を見落とさないように。

駐車場に車を止め、昭和35年(1960年)に移築されてきた古民家を改装した麦とろ童子の店内に入る。昭和の香り漂う、しかし現代的にリノベーションされた玄関、廊下を抜けて座敷に通されると……そこは「海」だ。

▲ドドーンッと目の前に海が! ▲ドドーンッと目の前に海が!

いや、もちろんそこが海そのものであるはずはないのだが、かなり大きく採られた窓の向こう一面に、相模湾と真鶴半島が広がっているのだ。まさに「絶景」であり、最高の「借景」である。

▲窓側の席から、右を見れば雄大な相模湾 ▲窓側の席から、右を見れば雄大な相模湾
▲左を見れば、東洋のナポリ(?)こと湯河原の海岸線 ▲左を見れば、東洋のナポリ(?)こと湯河原の海岸線

景色に見とれているうちに、「Can I talk to you?」となぜか英語で話しかけてくる人物があなたの傍らにやってくるだろう。店主である。18年前、この古民家に一目ぼれして「最初は別荘のつもりで」購入したが、リフォームを依頼した大工さんに「せっかくだからここで何かお店をやればいいんじゃない?」と言われてその気になり、当時就いていた職を捨てて「自然薯処 麦とろ童子」を開業した。

▲この古民家は昭和35年に、とある方がこの場所に移築してきたもの。温かみが半端じゃない ▲この古民家は昭和35年に、とある方がこの場所に移築してきたもの。温かみが半端じゃない
▲テーブルはすべて大きな1枚板を大胆に使用。このあたりもいちいち風流だ ▲テーブルはすべて大きな1枚板を大胆に使用。このあたりもいちいち風流だ

いずれにせよ、オススメメニューをいくつか教えてくれるので、好きなものを注文しよう。注文は日本語で大丈夫だ。冗談として英語を話しているだけで、バリバリ日本人な店主である。

さて、この日の筆者は一番人気の「釜上げしらすとろろ丼(税込み1890円)」を頼もうと思ったが、よく考えたらそれは前回来たときに食べたので(うまかった!)、今回は二番人気の「ぶっかけ麦めし(税込み1785円)」を注文してみる。連れの女性は限定品の「いくらとろろ丼(税込み2280円)」を奮発した。

注文後1~2分ほどでまず「カニ汁」が出てきて、その後は「口直し」「メイン」「デザート+お茶」というコース的な順番で料理が提供される。店主の軽い口上を聞きながら食すと……うむ、やはり相変わらずうまい! ねばりの強い自然薯のとろろは「野性味」と「洗練」とが見事に同居しており、麦めしとの相性は最強。そしてその上に乗るヅケマグロのシャープでありながらふくよかなうま味が、全体を上手に引き締めている。絶品である。ナイスハーモニー!

▲こちらは「口直し」。自家製の大根漬物はハチミツと唐辛子などに漬け込んだもの。普段は近所のみかん農家から入手するみかんが添えられるが、みかんのシーズンオフは同じ農家さんが作るその他のオレンジが載る ▲こちらは「口直し」。自家製の大根漬物はハチミツと唐辛子などに漬け込んだもの。普段は近所のみかん農家から入手するみかんが添えられるが、みかんのシーズンオフは同じ農家さんが作るその他のオレンジが載る
▲ワタリガニをたっぷり使ったカニ汁。写真だとサイズがわかりにくいが、かなり巨大 ▲ワタリガニをたっぷり使ったカニ汁。写真だとサイズがわかりにくいが、かなり巨大
▲「ぶっかけ麦めし(税込み1785円)」。麦めしと自然薯、そしてヅケマグロのハーモニーが最高! ▲「ぶっかけ麦めし(税込み1785円)」。麦めしと自然薯、そしてヅケマグロのハーモニーが最高!

同行者が注文した北海道産の大粒いくらをふんだんに使った「いくらとろろ丼」もひと口いただいたが、いくらのやさしい甘みと自然薯の自然な甘みが口の中で絶妙なマリアージュを起こし、最終的には「歓び」に昇華する。個人的には「麦めし+自然薯」の豪快な組み合わせの方が好きだが、人によってはこちらの上品なハーモニーを好むだろう。ぜひ複数回来て、両方食べてみていただきたい。

▲こちらは自然薯とろろが別がけとなる限定品の「いくらとろろ丼(税込み2280円)」 ▲こちらは自然薯とろろが別がけとなる限定品の「いくらとろろ丼(税込み2280円)」
▲食後に供されるデザートと日本茶。日本茶が入っている湯飲み茶碗は陶芸家さんの作で、手前のウサギがお客自身を表し、お茶が相模湾、そしてその向こうにある赤い丸が「相模湾に沈む夕日」を表している ▲食後に供されるデザートと日本茶。日本茶が入っている湯飲み茶碗は陶芸家さんの作で、手前のウサギがお客自身を表し、お茶が相模湾、そしてその向こうにある赤い丸が「相模湾に沈む夕日」を表している

食後、大満足して「あ~うまかったああああ!」と、お行儀としては最悪だが床にゴロリと寝転がって天井を見上げてみると、梁と天井の間に和傘と和凧がステキにディスプレイされていることに気づく。なんとも粋じゃないか。

▲おおっ、天井にはカラフルな和傘と和凧が! ▲おおっ、天井にはカラフルな和傘と和凧が!

最後にもう一度、窓の向こうに広がる最高の借景を眺めてから、お勘定場へ。

最高のドライブと最高の借景、そしておいしい自然薯とろろを楽しみたい人には本気でオススメしたい、貴重なお店のひとつだ。

▲海沿いのドライブがてらにぜひどうぞ。天気の良い日がオススメですよ ▲海沿いのドライブがてらにぜひどうぞ。天気の良い日がオススメですよ

■自然薯処 麦とろ童子
住所:静岡県熱海市泉210
営業時間:午前11時30分~午後5時(ラストオーダー午後5時) 土・日曜は午前11時30分~午後8時(ラストオーダー午後7時)
定休日:水曜日
※2015年7月14日時点の情報です。上記は変更される可能性があります。ご了承ください

text/伊達軍曹