スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

残り少ない人生、どれだけやりたいことができるか!

最高の人生の見つけ方|映画の名車
(C) 2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『最高の人生の見つけ方』(DVD・発売中)2007年・米 監督:ロブ・ライナー 出演:ジャック・ニコルソン/モーガン・フリーマン/ショーン・ヘイズ/ロブ・モロー/ビバリー・トッドほか 販売:ワーナー・ホーム・ビデオ ¥3,980(税込)
人生の残り時間を知りたいと思う人は、まず少数派だろう。そりゃそうだよな。たとえ今すぐでなくとも、「あなたは5年後に死ぬ」と言われたら、気分は最悪だ。漠然とした焦燥感に駆り立てられながら、1年、また1年と時が流れるたびに心が重く沈んでいくはずだ。本作の主人公は、余命数カ月と宣告された2人の老人。そんな彼らが最後の時間を使って“やりたいことリスト”の項目を次々に塗りつぶしていくロードムービーだ。

ベテラン自動車整備工のカーター(モーガン・フリーマン)は病的な物知り。テレビのクイズ番組を見ながら答えをポンポンと当てていくのが趣味だ。一方、いくつもの病院を経営する老実業家のエドワード(ジャック・ニコルソン)は、有り余る金を持て余し、日々贅沢の限りを尽くしている。接点など皆無だった2人が出会ったのは病院の一室。お互い末期ガンに侵され、余命わずかの宣告を受けてしまった。貧乏な黒人と大金持ちの白人。クリスチャンと無神論者。奥さん一筋の一穴主義男と結婚生活を4度も破綻させた豪快男。性格も立場も正反対の2人だったが、相部屋のよしみでいつの間にか何でも話せる仲になった。

そんなある日、カーターがつけていたメモに目を留めたエドワード。「棺おけリスト」と称されたそのメモには、死ぬ前にやっておきたいことが羅列されていた。他人に親切にする、涙が出るほど大笑いする、荘厳な景色を観る…。エドワードは漠然としたカーターの望みを「女々しい」と一蹴し、スカイダイビング、ライオン狩り、タトゥーを入れる、世界一の美女にキスをする、と次々に項目を加え、「俺たちのリストが完成した!! 」と言い放つ。果たして2人は“棺おけに後悔を持ち込まないために”生涯最大の旅に出る!!

前提条件として“死”がつきまとうだけに、ともすれば暗くなりがちなテーマではあるが、モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソンの70歳タッグが、子供のようにガハハハとハシャギながら本当に楽しそうに数々のイベントを消化していくので、全体的にはカラッとした仕上がり。スカイダイビングで絶叫し、憧れの名車でドッグファイトを繰り広げ、ピラミッドの上から絶景を眺める。そして、何気なく書いたリストがさまざまな意味をもち、最後の最後には予想外のサプライズ!! 筆者はこのシーンで思わずヤニ下がり、かつ涙腺が決壊するという珍しい経験をした。

メガホンをとったのは1986年に『スタンド・バイ・ミー』で世界中の映画ファンから喝采を浴びたロブ・ライナー。ここ10年ほど低空飛行を続けていた印象だが、見事に復活を遂げてくれたのは嬉しい限り。ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンはアドリブで憎まれ口や冗談を絡めていたそうだが、それが演技の邪魔をしないのも名優たるゆえんだ。

残り少ない時間を最愛の家族と過ごさないでいいのか…というカーターの葛藤も、大きなテーマの一つ。実際にこんなことがあったら、カーターの妻と同様、「苦楽を共にしてきた家族を置き去りにして、赤の他人と豪遊なんて何事!! 」と罵る知人や親族も大勢いることだろう。だが、家族同様に “友達”だって、人生において何物にも替え難い存在なのだ。血縁関係も肉体関係も利害関係もない友達とバカを言い合って大笑いすることが、どれだけ素晴らしいことなのか―それを、この映画は教えてくれる。人生賛歌の傑作に拍手!!

映画に登場する車たち

シェルビー マスタングGT350

シェルビー マスタングGT350|映画の名車
※写真は1966年式のフォード マスタングです
モーガン・フリーマン演じる修理工のカーターが長年憧れていた車はシェルビー マスタングGT350。入院中に可愛い孫からセンターストライプの入った赤いGT350のキーホルダーをお見舞いに贈られ、寂しく笑うカーター。果たして“棺おけリスト”の一角を占めることになったのが「Drive a Shelby(シェルビーをドライブすること)」だ。ほどなくしてエドワードの財力によって夢は叶えられ、誰もいない貸し切りのサーキットでダッジ チャレンジャーと壮絶なドッグファイトを繰り広げることになる。GT350はマスタングをベースにしてキャロル・シェルビー(1950年代後半に活躍した元レーシングドライバー)が手がけたチューニングカー。1965年から1968年にかけて製造されたが、カーターが乗ったのはバリバリのレース仕様だった1966年式と思われる。

ダッジ チャレンジャー

ダッジ チャレンジャー|映画の名車
ジャック・ニコルソン扮するエドワードが、カーターのシェルビー マスタング GT350と張り合うために用意したのが黄色いダッジ チャレンジャー(1970年式の初代モデル)。2人がまだ若かった1960年代後半から1970年代初頭に、この2台はアメリカを代表するポニーカー(手頃な値段でスポーツ走行が楽しめるスタイリッシュな車)だった。余命幾ばくもない老人2人が名車をガッツンガッツンぶつけながらレースをする様は、映画の大きな見所の一つとなっている。チャレンジャーはマスタングより後発で市場に参入したが、庶民にしっかりと受け入れられて、デビュー年だけで8万台のセールスを記録した。2008年春、クライスラーがこのチャレンジャーを35年ぶりに復活させたのはご存じのとおり。初代を彷彿とさせるデザインに、往年のファンは狂喜している。


Text/伊熊恒介