第55回:『パルプ・フィクション』 【映画の名車】
カテゴリー: トレンド
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2009/02/24
スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!
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■低俗雑誌をパラパラめくるように進む、タランティーノの大出世作!
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『パルプ・フィクション』1994年・米 監督:クエンティン・タランティーノ 出演:ブルース・ウィリス/ジョン・トラボルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ヴィング・レイムス/ハーベイ・カイテル/ティム・ロス/アマンダ・プラマー/エリック・ストルツ/ロザンナ・アークエットほか
さて、今や押しも押されもせぬ超人気監督に上り詰めたタラティーノ(以下タラちゃん)の出世作といえば、1994年公開の『パルプ・フィクション』。弱冠29歳で完成させた『レザボア・ドッグス』(監督・脚本・出演)がカルト的な人気を博し、その余勢を駆って作られた2作目の長編映画だ。グランドホテル形式+時系列を入れ替えるという斬新な手法、音楽やファッションのスタイリッシュさ、大胆なキャスティング、オタク心を刺激する小物類の数々(例えばエリック・ストルツ演じる薬の売人が着ているTシャツは「Speed Racer」=「マッハGoGoGo」)、過去の名作へのオマージュ…そのすべてが見事に融和されているとてつもない作品であり、映画人のみならず、世界中の表現にかかわる人間に絶大な影響を与えている。
物語はLAのコーヒ・ショップから始まる。30代のやさぐれカップル、パンプキン(ティム・ロス)とハニー・バニー(アマンダ・プラマー)が何やら話し込んでいる。彼らの正体はケチな強盗。これからどこを襲うのかを相談していたのだ。果たして「今すぐにこのコーヒ・ショップを襲って客の財布を全部頂戴しよう」という結論に…。2人の怒声が店内に鳴り響いたところで、ディック・デイルの「ミザルー」が鳴り響く!!
とてつもなくカッコイイこのプロローグから2つの物語が並行して進み始める。アムステルダム帰りのヴィンセント(ジョン・トラボルタ)と黒人中年ジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)の2人組ギャングが、騙し取られたブツを奪い返しに行くエピソード。もう一方は、引退寸前のロートルボクサー、ブッチ(ブルース・ウィリス)が5ラウンドで倒れるという八百長を引き受けたにもかかわらず裏切って勝利し、自分への賭け金をせしめて恋人のファビアン(マリア・デ・メディロス)と逃避行を図るエピソード。この2つの物語をつなぐキーマンがマーセルス(ヴィング・レイムス)。ギャングコンビの上司であり、ブッチに八百長を命令した張本人だ。
ここから壮絶なスペクタクルが展開するかと思えばそうでもなく、物語自体は案外あっさりとしている。まぁ、普通に撮れば90分もあれば十分な映画だ。では何故に長い(上映時間154分)のか!? それは延々と繰り返される登場人物たちのヨタ話のせいである。「そんなものを聞かされたら、たまったもんじゃない!! 」と未見の方なら思うだろう。そりゃあ、つまんないヨタ話なら苦痛以外のなにものでもないが、これがとんでもなく面白いのだからたまらない。というか、この映画の魅力はこのヨタ話に集約されているといっても過言ではないのだ。
中盤からは先読み不能のトンデモ展開も待ち受ける。八百長試合をぶち壊して逃亡していたブッチが、たまたま鉢合わせになったマーセルスから隠れるために逃げ込んだセコハンショップが、実は変態たちの集会所だったという驚愕の展開だ。ここから先を文字にするのはヤメておくが、全身ラバー男が登場するくだりで開いた口がふさがらなくなること請け合い。
本作は制作費800万ドルにもかかわらず、興行収入1億ドル超のメガヒット作となった。うらぶれていたジョン・トラボルタは見事に復活を遂げ、弱冠23歳だったユマ・サーマンや、40代半ばを迎えてもパッとしなかったサムエル・L・ジャクソンをイッキにスターダムに押し上げた。もちろんタラちゃん自身も富と名声を得て、よりいっそう趣味道に邁進する環境を構築。レンタルビデオ屋で働く映画狂青年の“成りあがり”は世界中のオタクたちに夢と勇気を与えてくれた。脂の乗り切った40代後半を迎えたタラちゃんが満を持して放つ夏の長編新作を前に、観れば観るほど味が出るスルメのような大傑作『パルプ・フィクション』を何度となく堪能しよう。
映画に登場する車たち
ホンダ シビック(2代目)
ホンダ NSX
ヴィンセントとジュールスが若いギャングたちからブツを取り返し、アジトに引き返す途中、暴発事故が発生。ヴィンセントが連行中の少年ギャングの頭を銃で撃ち抜いてしまったのだ。おかげでジュールスの運転する1974年型シボレー・ノヴァの車内は鮮血に染まる。頭を抱えた2人はジュールスの友人ジミー(クエンティン・タランティーノ)の家にとりあえず車を隠す。事情を知ったボスのマーセルスはベテランの掃除屋ウルフ(ハーヴェイ・カイテル)を手配。そのウルフがジミーの家に乗りつけたのがNSXだ。裏の商売人である熟年男がM・ベンツやBMWではなく、日本のスーパーカーを愛車にしているというギャップが、なんとも面白い。NSXは相当大切に乗っているようで、運転を任せたヴィンセントに「俺の車にキズをつけたら君も仏にするぞ」と脅しをかけていた。ちなみにファビアンがシビックを「my Honda」と呼んでいたのに対し、ウルフは「my Acura」と呼んでいる。これはNSXがホンダの海外向け高級車ブランド「アキュラ」から販売されていたことに起因する。日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
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