▲まるで運転上級者かのような走りを体感できた自動運転。合流もスムーズそのものだ ▲まるで運転上級者かのような走りを体感できた自動運転。合流もスムーズそのものだ

2020年もうひとつの目玉となりうるか

2020年の目玉は東京オリンピックであるが、トヨタ自動車も2020年までに自動運転の実用化を目指し、着々と準備を進めている。2013年には、すでに前方の車と通信を行う協調型の自動運転技術のひとつを我々メディアに披露してくれた。

そして今回は自律型の自動運転だ。複数のセンサーとカメラを駆使して立体的に情報をくみ取りながら最も安全な走行を選ぶという。まず緻密な3Dマップを生成。道路の傾斜なども考慮したうえ、最適な速度や操舵角を算出し、また様々な情報と組み合わせて走らせる。

残念ながら今回も運転席には座ることはできないため、助手席から見守ることとなった。ルートは首都高速、有明から福住の区間だ。

ETCゲートを通過しドライバーが自動運転のスイッチを押す。いきなり本線への合流となるが、周りの車やバイクを確認しながら速度を合わせて本線へスムーズに流れ込む。とてもうまい運転だ。かなり慣れたドライバーが運転しているようだ。

本線へ入り、流れを乱さず走行車線の速度に合わせ加速する。ぎこちない動きは皆無だ。首都高速湾岸線から辰巳ジャンクションで9号深川線へ。ここはパーキングエリアからと本線からの車両の合流なのでかなり難しいといえるが、我々が同乗した際にはトレーラーが合流地点で並走をしていた。どのようなタイミングで入るのか必見のポイントだ。

不慣れなドライバーがおっかなびっくり運転しながら合流するようなぎこちなさは全くなく、トレーラーが通り過ぎる速度と後続車の車間を読み取り、実にスムーズに合流する。ブレーキのかけ方などは絶妙であった。ここから福住までの区間はカーブが入り組みバンクも付いている。周りの車と乗員に怖さを感じさせないライン取りをして速やかに曲がっていく。この完成度の高さに「すごい!」の一言である。

しかし、このシステムを最初からすべて作動させた状態で自動運転車として登場させるというのはいかがなものかと思う。基本は運転支援システムであるということだ。2020年に登場する前に合流支援システムや路面によっての最適な運動制御をモデルによって装着し、段階を踏んで決められた場所での自動運転という方向性が現在の社会的な状況からみても良いのではないか。

さらに協調型の安全技術としたITS(高度道路交通システム)の専用周波数(760MHz)を使った世界初の運転支援システムも体験した。これは段階的な支援システムのひとつであるが、なんといっても地域限定で情報量が少ない。情報を伝えるモニターの視認性にも戸惑いがある。

前方の車との通信を使った追従走行は、反応の速さは理解できるがブレーキと加速がスムーズとはいえない。しかし専用周波数を使った初めの一歩としては評価できる。いずれにしても様々な情報の共有性や発信するシステムを普及させるために国の後ろ盾が必要なのは間違いはない。

これらの技術は自動車メーカーを超えた情報の統一によって飛躍的な安全性が向上するはずである。今後に期待したい。
 

▲テスト車両のベースはレクサス GS450h。外見に大きな差異はないように思えるが、様々なセンサーを格納している ▲テスト車両のベースはレクサス GS450h。外見に大きな差異はないように思えるが、様々なセンサーを格納している
▲自動運転の体験において注目ポイントのひとつである合流。テスト車両は実にスムーズな合流をみせてくれた ▲自動運転の体験において注目ポイントのひとつである合流。テスト車両は実にスムーズな合流をみせてくれた
▲BR高度知能化運転支援開発室室長の鯉渕健氏とCSTO補佐の葛巻清吾氏との座談会。トヨタ自動車の自動運転を担っていく方々だ ▲BR高度知能化運転支援開発室長の鯉渕健氏(左)とCSTO補佐の葛巻清吾氏(右)との座談会の模様。トヨタ自動車の自動運転を担っていく方々だ
text/松本英雄
photo/阿部昌也