スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

映画史上に残るド派手なカーチェイスシーンは必見!

前回の『ミニミニ大作戦』つながりでリメイクモノのクライムアクションムービーを紹介しよう。ジャネット・ジャクソンなど多くのアーティストのミュージックビデオを手がけてきたドミニク・セナ。彼が1974年公開の『バニシングIN60』を下敷きにして伝説の車泥棒の大活躍を描いた作品が、この『60セカンズ』だ。

かつては腕利きの車泥棒だったメンフィス(ニコラス・ケイジ)だが、今ではすっかり足を洗って子供たちにカートを教えて暮らしていた。だが、平穏な毎日は続かない。メンフィスに憧れて車泥棒の世界に足を踏み入れた実弟のキップ(ジョバンニ・リビシ)が、巨大組織からの仕事でドジを踏み、命を狙われていることを知ったのだ。弟の命を救うための条件は4日以内に指定された超高級車50台を盗み出すこと。メンフィスは昔の仲間に声をかけ、無謀とも思えるプロジェクトをスタートさせる。

車泥棒が活躍する映画なんて、車を愛する諸兄ならば「誰が見るか!」と吐き捨てるに違いないと思うが、ちょっとお待ちいただきたい。結論から言うと本作は車泥棒そのものにクローズアップした映画ではないのだ。タイトルは「60秒で車を盗み出す神業テクニック」を指しているのだが、劇中では特に60秒にこだわっているわけではなく、盗みのテクニックそのものも、自主規制がかかっているせいなのか詳細は明かされていない。そのため盗みの場面は非常に大味で、ヒロインのアンジェリーナ・ジョリーを筆頭に、主人公のメンフィスをサポートする精鋭たちのキャラも立っているとは言い難い。

では何が面白いのか? フェラーリ、ポルシェ、シボレー、ジャガーetc...一瞬ではあるが次々に登場する名車たちの美麗なシルエット(50台にそれぞれコードネーム=女性の名前がつけられている)がまず一つ。車ジャンキーたちが交わす小粋でマニアックな会話の数々も、車好きの心をくすぐってくれる。そして、なんといっても目玉はニコラス・ケイジが最後の一台、つまり50台目の名車シェルビーマスタング GT 500=エレノアを駆って繰り広げる怒涛のカーアクションだ。

超低空で追いかけてくる警察のヘリコプターをニトロで振り切るシーンの爽快感も抜群だが、最大の見せ場は橋の上での渋滞で立ち往生した際に決める一世一代のハイジャンプ!
南カリフォルニア最大の橋であるヴィンセント・トーマス橋を3日間も封鎖して撮影されたこのシーンは、映画史上に残るカーアクションとなった(周辺住民の怒りをだいぶ買ったそうだが…)。このハイジャンプを見るためだけでも、本作を見る価値はアリ。アクションシーン一つのために湯水のように金を使うハリウッド映画のエンタメ魂をご堪能あれ!

60セカンズ|映画の名車
(C)Touchstone Pictures.
DVD『60セカンズ:ディレクターズ・カット版』発売中 00年・米 監督=ドミニク・セナ 出演=ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ロバート・デュバル、ジョバンニ・リビシ、デルロイ・リンドーほか 販売元:ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント 1,500円(税込)

+++映画に登場する車たち+++

フォード シェルビーマスタング GT 500

マスタングをベースにキャロル・シェルビー(1950年代後半に活躍した元レーシングドライバー)が手がけたレース仕様のチューニングカー。1965年から1968年にかけて製造され、2005年に復活した。劇中に登場するのは1967年モデルのGT500(レプリカ)。ニコラス演じるメンフィスが盗み出そうとするたびにトラブルが起きて失敗に終わる因縁の車という設定だ。この旧車で200km/h近いスピードで爆走し、ドギモを抜くようなカーチェイスを繰り広げるのだからたまらない。ちなみにハンドルを握るニコラス自身の運転技術もプロ顔負けなのだとか。

ジャガー XJ220

フェラーリ 550マラネロ(コードネームはアンジェリーナ)を筆頭に名だたるスーパーカーが現れては消える本作。中でも、ひときわ目を引くのがジャガー XJ220(コードネームはバーナデン)だ。ジャガーのエンスー技術者らによる趣味的サークルが発端となり、バブル絶頂期に登場した超高級スポーツカー。220という数字は時速220マイル=約352km/hを目標としていたことによる。実際には220マイルまでには到達できなかったが、それでも347km/hをマークして世界最速(当時)を誇った。

ハマー H1

米軍用車ハンヴィーの民生用車種で、大型のSUV。ポルシェやフェラーリだけでなく、こんな車も“盗み出す50台の高級車リスト”に載っているのが面白い(コードネームはトレーシー)。終盤、ヴィニー・ジョーンズ演じるスフィンクスがSNAKEと書かれたプレートのH1を盗み出したら、中には本物のヘビがいた!というベタな展開には苦笑するしかないが、前方からやってきたポリスカーをものともせずにそのまま押し退けてしまうH1のパワーにはシビれる。
Text/伊熊恒介