▲アウディ・コンセプト・デザインスタジオが外装を手掛け、アウディのノウハウが随所で活用された月面探査機 ▲アウディ・コンセプト・デザインスタジオが外装を手掛け、アウディのノウハウが随所で活用された月面探査機

総額3000万ドルの賞金をめぐり、世界の科学者が挑戦中

2007年に始まった「Google Lunar X Prize(グーグル・ルーナー・エックス・プライズ)」というコンテスト。「Lunar」は月を表す英語の形容詞で、要はGoogleの創業者が立ち上げたXプライズ財団が主催しGoogleがスポンサーを務める、民間による無人月面探査のコンテストです。

「月面に着陸」「着陸後500mの自律走行」「映像を地球へ送信」というのが優勝条件。その他、「アポロ計画で月面に残された機器を撮影して地球へ送信する」「月面で夜を過ごす(月面の夜は14日周期でやってきて、温度は-170度にもなるそう)」「月面で氷や水を見つける」といったミッションも設けられています。そして用意された賞金は、なんと総額で3000万ドル(約32億円)です。

世界各国から参加者が集まり、当初は34チームがコンテストに参加していました。しかし、原稿執筆時点(2015年7月3日時点)で残っているのは22チームだそう。日本チームは当初、日欧混合チームとして参加していましたが、現在は日本単独チームとして活動中です。

そんな中、ドイツチーム「パートタイム・サイエンティスツ」(アルバイト科学者たち、という意味のネーミング)にアウディが協力する、という話題が飛び込んできました。

アウディが車両開発において培ってきたクワトロ技術(4WD)や軽量化技術、電子制御などのノウハウが活用できるはず、と協力を申し出たんです。民間による無人月面探査自体、面白いコンテストですし、月面探査機を本当に走らせることができればアウディにとってはプロモーション活動の一環としてもメリットが見いだせる、と算段したのでしょう。

アウディは上記のノウハウ以外、月面環境を想定した環境下での試験や信頼性の確保に協力。また、今回披露された月面探査機のデザインはドイツ、ミュンヘンにある、アウディ・コンセプト・デザイン・スタジオが手掛け「Audi lunar quattro」と命名されたそうです。「クワトロが走る場所は地球だけにとどまらない」なーんてキャッチコピーの広告も想像に難しくありません(笑)。

▲月面に着陸した後は太陽電池を“日光浴”させて充電し、月面探査に出かけHD画像を地球へ送信するのがミッション ▲月面に着陸した後は太陽電池を“日光浴”させて充電し、月面探査に出かけHD画像を地球へ送信するのがミッション

パートタイム・サイエンティスツはITコンサルタント、ロバート・ボーメ氏が率いるチーム。現在35名のエンジニア(ドイツ、オーストリア、アメリカ出身)で構成されています。特に、アメリカ・フロリダから参加するジャック・クレンショーはNASA出身で、宇宙技術の最先端を知る人物なので注目度が高いです。

また、企業や団体のサポーターはアウディ以外にNVIDIA社、ベルリン工科大学、オーストリア・スペース・フォーラム(OeWF)、そしてドイツ航空宇宙センター(DLR)などが名を連ねています。残された時間はあと約1年半。引き続き、その動向を追いかけてみます。

ちなみに日本チーム、サポーターの顔ぶれが3社(IHI、JIG-SAW、三越)しかない模様……。日本の自動車メーカーの参加にも期待したいところです。読者の皆さん、いかがでしょう?

text/古賀貴司(自動車王国)