雨の日が嫌いな「ケロヨン」と一緒に過ごす41年目の秋
2018/09/09
車は単なる移動の道具ではなく、大切な人たちとの時間や自分の可能性を広げ、人生をより豊かにしてくれるもの。車の数だけ、車を囲むオーナーのドラマも存在する。この連載では、そんなオーナーたちが過ごす愛車との時間をご紹介。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
![▲1978年に購入した愛車のジェミニ。ちなみにこの年はピンク・レディーのUFOが155万枚のレコードを売り年間1位に、東京・原宿には竹の子族が登場して、新東京国際空港(成田空港)が開港した。流行語はキャンディーズの解散宣言から生まれた「普通の女の子に戻りたい」](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/1a.jpg)
一目ぼれの車に乗り続け41年
低くて控えめなエンジン音で、ゆっくりと街中を走る鮮やかな緑色の小型セダン。
色もフォルムも現代では見られなくなった車に、行き交う人は目を奪われる。
オーナーの牧 一彦さんも41年前、同じようにこのいすゞ ジェミニに目を奪われた。
「大学生の頃にキャンパスの近くに止まっていたんです。もうひと目ぼれで、どうしても欲しくて一生懸命コンビニでバイトをして。それでも足りず、半分は祖母に出してもらって手に入れました」
当時は三菱 ギャランラムダなどが流行っていて、ジェミニはカエルに例え『ケロヨン』の愛称で呼ばれ「だれもが憧れるような車ではなかった」という。
しかし牧さんが最初に見たときの思いは本物だった。その証拠に、これまで一度も手放すことを考えたことがないという。
![▲ベースとなった当時のオペル車には車体の中央にセンターラインが引かれており、その名残りでジェミニにもそのラインが引かれている。こういった微細なデザインにも牧さんは心を奪われた](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/2_2.jpg)
![▲これまで北海道から鹿児島まで全国を走って回った。写真は学生の頃に訪れた福井で仲間と撮った一枚](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/3.jpg)
人間でも40歳を超えれば、関節が痛くなったり目が悪くなったり多少のガタはくる。
ジェミニもメンテナンスは欠かさず丁寧に乗り続けてはいるが、それでも経年劣化は訪れている。
ゴム製のパッキンが割れてきたり、ボディのさびも少しずつ広がってきてしまっているそうだ。
ビビッドなグリーンのボディは、メーカーからカラーコードを取り寄せ同じ色に調合してもらい2回塗り直した。
今は雨の日に走ると雨漏りがしてくる部分があるので、晴れの日限定で使っているのだとか。
![▲乗用車にしては長めのシフトレバーは、純正のものが劣化したため当時いすゞのディーラーにあったトラック用のものに交換してもらった](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/4.jpg)
音や雰囲気で調子が分かる関係に
以前はこのジェミニで北海道を2周したり、鹿児島の南端まで旅行をしたという。
「パーキングエリアなんかで仮眠しているときに、窓をノックされて『カッコいい車ですね』って起こされたりもしました」
ずっと乗っていることで様々な出会いがあったり、道具としての素晴らしさに気づかされることがあるそうだ。
「長い付き合いだから、エンジンが元気ないなとか、微妙な違和感に気がつくようになるんです。会話っていうと大げさだけど、車の調子みたいないものは分かるかな」
時折、レンタカーなどで最新の車種も乗ることがあるというが、機械制御が優秀なため「道具としてどうなっているのか分からず、愛着が湧くまでには至らない」のだそうだ。
「この車は好きだけど、コレクションとかそういうのではないんです。ただ愛着が湧いていて、道具としても素晴らしい。そういった車に出合えた自分はラッキーだと思います」
![▲今となっては珍しくなったフェンダーミラーだが、目の動きだけで左右を確認できき機能的だという。新しいものだけが良いものでない事を教えてくれる](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/5.jpg)
![▲運転席以外のシートは当時のまま。黒のレザーにはまだ張りがあり、座り心地はふわりとして優しい](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/6.jpg)
どんな車と、どんな時間を?
ジェミニは、いろんな出会いや思い出を引き寄せてくれる
初代ジェミニは、1974年に登場したベレットの後継モデルである。ボディタイプは4ドアと2ドアの2タイプが用意されていた。登場するモデルは初代でも前期モデルで、フロントノーズが内側に入り込んでいる“逆ノーズ型”のデザインが特徴的。対して後期モデルはエクステリアが大きく変更され、一般的な車に見られるノーズ前端が鈍角な“スラントノーズ”になった。
搭載されるエンジンは、1.6L、1.8Lガソリンエンジンと1.8Lディーゼルエンジン。後期型には1.8L DOHCエンジンを搭載した『ZZ』が追加され、スポーティな走りを楽しむキャラクターも追加された。
![▲バブル前夜の70年代から80年代のアナログ感のある車が好みだという牧さん。「運転していて身体の一部のように感じられる車が好き」だと言う](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/7.jpg)
![▲いすゞといえば今ではトラックのメーカーという印象が強いだろう。乗用車も作っていた時代があったが、1993年に乗用車製造から撤退した。しかし牧さんのようにいまだいすゞの乗用車ファンは多く、専門に扱うショップもあるくらいだ。長年乗り続ける愛好家がいすゞ車を手放す事はほとんどないため、年式の古い車種は流通台数が極めて少ない](http://wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_63515/8.jpg)
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