▲自動車メーカーが作っただけに、通常の車のシートと同じ衝突実験が行われるなど、高い安全性が追求された。一方で、徹底した軽量化と小型化が図られ、男性を乗せても女性がラクに移動させられる。価格は19万8000円(消費税非課税)。介護保険を使ったレンタルなら月々1100円~で使える 自動車メーカーが作っただけに、通常の車のシートと同じ衝突実験が行われるなど、高い安全性が追求された。一方で、徹底した軽量化と小型化が図られ、男性を乗せても女性がラクに移動させられる。価格は19万8000円(消費税非課税)。介護保険を使ったレンタルなら月々1100円~で使える

車いす、と侮るなかれ。車の乗り心地が激変!?

ぴえいる(以下、ぴ):今日は福祉車両に試乗するんだっけ?

編集部W(以下、W):そうなんですけど、今日は福祉車両、というよりも車いすがメインになるんです。ということでこれに乗ってください(と、車いすを押してくる)

:え、車いすに乗って試乗するのぉー(顔がゆがむ)。以前、同じように試乗して、500mも走らないうちに「止めてくれぇ!」と絶叫したほど、苦痛だったんだけど

W:それがこの車いすなら、快適なんです(キッパリ!)

Wくんの自信満々の根拠はこの時点ではまだわからなかったが、従来、車いすに乗って車いす仕様車で移動するということは多少の苦痛を伴う。なぜなら、いくらベルト類で固定されるとはいえ、溶接されている車のシートよりは体が揺れてしまうため不快に感じるからだ。

W:トヨタ製の車いす「ウェルチェア」です

:た、確かに車に乗るということに一番詳しいのは自動車メーカーだろうから、快適性が考えられているとは思うけれど、でも……(疑心暗鬼)

W:ま、百聞は一見にしかず、虎穴に入らずんば虎子を得ず、案ずるより産むが易し、下手な考え休むに似たり(といいながら、ぴえいるを無理やり車いすに乗せ、さらに車いす仕様車に乗せる)

:え、なになに、ことわざが呪文に聞こえるよぉ?

W:君子危うきに近寄らず(と、自分は運転席に座り)。では、いざ!

:ひぇ……え? あれ? おや? はて? 何だか快適なんですけど

W:でしょー? 実はボクも以前試乗したことがあるんですが、とても快適でビックリしたんですよ

その秘密は、乗車時にお尻が沈み込むようなポジションで座ることにある。通常の車いすは垂直の姿勢になるため体重をお尻で支えるが、ウェルチェアの姿勢は、体重をお尻だけでなく背中や腰でも支えるカタチになる。そのため、お尻だけで支える姿勢と比べて体が揺れにくくなるのだ。

▲普段の介助時は垂直姿勢だが、乗車時はこのようにチルトダウンする。操作は背もたれ後方のレバーを引くことで簡単に行える。ちなみに背もたれの角度は9度から24度に、座面角度は3度から18度に、ダウン量は100mm ▲普段の介助時は垂直姿勢だが、乗車時はこのようにチルトダウンする。操作は背もたれ後方のレバーを引くことで簡単に行える。ちなみに背もたれの角度は9度から24度に、座面角度は3度から18度に、ダウン量は100mm

:通常の車いすがダイニングチェアなら、ウェルチェアのこの姿勢はゆったりとくつろぐラウンジチェアだね

W:体を支える面積が大きくなるし、重心も下がるため、カーブやブレーキによる上半身の揺れが軽減されるというわけですよ。その証拠に……(と、ぴえいるの姿勢を垂直にして、走り出す)

:と、止めてくれぇ!?

W:ね? 同じ車いすなのに、姿勢が変わるだけで乗り心地が劇的に違うでしょ?

▲例えば車輪の大きな車いすだと狭い車内で車輪のスポークの間を通すなど、介助者に負担がかかるが、ウェルチェアは車輪を小さくするなど、シートベルトをしやすく、かつ腰骨を抑える適切な位置になるよう配慮されている ▲例えば車輪の大きな車いすだと狭い車内で車輪のスポークの間を通すなど、介助者に負担がかかるが、ウェルチェアは車輪を小さくするなど、シートベルトをしやすく、かつ腰骨を抑える適切な位置になるよう配慮されている

また、通常の車いすだとお尻だけで体重を支えるため、どうしてもお尻が前に滑りがちになり、腕で体を支えようと体に力が入ってしまう。しかし先述のとおりウェルチェアなら体重が分散されているので、余計な力を入れる必要も減る。

:他にも重心が低いと同乗者と目線が一緒になるから、ドライブ中の疎外感がないし。マジで座り心地がいいから、これならどこへでも行けるよ

W:でしょ!? 安心して年を重ねてくださいwww

text/ぴえいる
photo/尾形和美