車と歩行者が衝突した際に、ボンネットの後方を瞬時に持ち上げてボンネットフード下の空間を広げ、歩行者の頭部への衝撃を緩和させる安全技術「ポップアップフード」。この衝突検知用センサーの新型をデンソーが開発した。今までのものより高精度な検知が可能で、昨年販売されたトヨタ クラウンのハイブリッドモデルに搭載されている。

国内では、ホンダが2008年にレジェンドで初めて採用し、トヨタでは今回の新型クラウンで初めて採用することになった。ボンネットフードの下に空間が取りにくいエンジンの大きい車で力を発揮する技術で、トヨタは2011年時点から「歩行者の頭部への衝撃を約半分にまで減らすことができるかもしれない」として取り組んでいた。

これまでのポップアップフードは、バンパー内部に付けた数個の加速度センサーで歩行者との衝突を検知していたが、ぶつかる場所によって計測値が変わってしまい動作の精度に問題があった。今回開発されたセンサーは、その点を改善。ポップアップフードをより安全なものにした。

新型センサーの特徴は、「中空構造体」と「圧力センサー」を用いていること。中空構造とは内部が空洞になっている構造のことで、風船のようなイメージだ。その樹脂できた「中空構造体」をバンパーの内部に沿うように装着し、車が歩行者に衝突した際の変形を2つの圧力センサーで検知することで、計測値のブレを抑えることに成功したという。

自動ブレーキで衝突回避を支援する「プリクラッシュセーフティシステム」などの“予防”安全技術が注目を集めているが、一方でポップアップフードや衝撃を吸収する「歩行者傷害軽減ボディ」などの“衝突”安全技術も日進月歩。デンソーは「まだまだ定着していない安全技術だが、今後は様々なメーカーに提供していきたい」と意欲的で、万一の事故からドライバーと歩行者の命を守る技術の普及を進めている。

新型の歩行者衝突検知センサー。デンソーがポップアップフード用のセンサーを開発するのは今回が初めて

新型の歩行者衝突検知センサー。デンソーがポップアップフード用のセンサーを開発するのは今回が初めて

2012年12月FMCのハイブリッド 2.5 ロイヤルサルーンG。クラウン アスリートのハイブリッドモデルにもポップアップフードが採用される

2012年12月FMC時のハイブリッド 2.5 ロイヤルサルーンG。クラウン アスリートのハイブリッドモデルにもポップアップフードが採用される