5L NA仕様はスポーティなれど優雅な大傑作

  • ジャガー XF 走り|ニューモデル試乗
  • ジャガー XF エンジン|ニューモデル試乗
↑外観デザインはアストンマーティンのデザイナーが担当。居住性も悪くない(左) アメ車の迫力とドイツ車の緻密さを足して割ったような回転フィールは爽快(右)
ジャガーが平均年齢60歳以上という顧客の若返りを狙って投入したXFシリーズに、新開発のV8エンジン搭載車が設定されました。従来型の4.2Lを5Lに拡大して直噴化。燃費と出力を向上させ、欧州の環境基準EURO 5をクリアすることを図っています。スーパーチャージャー装着のトップグレードの名はSV8から「XFR」に変更されました。

顧客の若返りを狙うとはいえ「想定ユーザーの年収は2000万円以上」と掲げられるXF。そんな年収にはまったくもって達していない自分が試乗する不毛さに立ちすくんでしまうも、「高野さんぐらいの年齢(36歳)の人に一番訴求したい車なんです!」と、真顔で語る広報氏の姿に背中を押されます。

中古車市場に登場する日が楽しみなポートフォリオ

  • ジャガー XF インパネ|ニューモデル試乗
  • ジャガー XF  フロントシート|ニューモデル試乗
↑日本の山道を軽快に駆け抜けるような状況下でドンピシャなハンドリング。Jゲートは廃止されたが、新世代らしさにあふれたデザインは好印象(左) 着座フィールや視界、臭覚からも乗員の快適度が高まる快適至極な室内空間(右)
まず乗り込んだのは5LNA搭載の豪華グレード「PORTFOLIO」。
アルミ調パネルの質感が若干安っぽいなど、重厚な英国調インテリアを好む守旧派のジャガーオーナーからは苦言を呈されそうな部分も目につきますが、室内のリラクゼーション性能の高さに感動しました。

見たいものだけが見え、見たくないものはすべて遮断されるような視界と、広すぎず、狭すぎない足元や頭上の空間がとにかく心地良いのです。革の匂いと、自分の加齢臭をも吸収してくれそうな空調機能がもたらす車内の空気は「美味しい」のひと言。5分も走れば、まるで羊水の中に浮かんでいるかのような安心感に包まれます。

245/40R19という扁平タイヤを履いていますが、バネ下のドタバタ感は掛け値なしに皆無。この、アタリの柔らかい乗り心地のキモはダンパーにあります。スーパーチャージャー装着車のXFRには、ジャガーが得意とする「1秒に100回も解析する」賢い電子制御の減衰力可変ダンパーが採用されておりますが、ビルシュタインと共同で開発を進めたこの電子制御ダンパーのノウハウは、XFR以外のグレードにも生かされました。

Rほどの運動性能を狙う必要がない分、むしろNA車のほうが味を決めやすかったとのこと。車体が多少ヘタっても、ダンパーを新しくすれば乗り味を維持することができるというので、この陶酔の世界は数年後の中古車でも十分以上に味わえそう。

アクティブデフやアダプティブダイナミクスといった電子デバイスで武装したXFRは「ニュルも攻められます」的な戦闘モードにあふれていますが、総合的にはPORTFOLIOのほうが好バランス。中古車市場に登場する日が楽しみです!

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード XF PORTFOLIO XFR
駆動方式 FR
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4970×1875×1460
ホイールベース(mm) 2910
車両重量(kg) 1860 1960
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V8DOHC V8DOHC+スーパーチャージャー
総排気量(cc) 4999
最高出力[ps/rpm] 385ps/6500rpm 510ps/6000~6500rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 52.5kg-m/3500rpm 63.7kg-m/2500~5500rpm
10・15モード燃費(km/L) 7 6.6
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/69
車両本体価格 975.0万円 1200.0万円
(Tester/高野博善 Photo/向後一宏)