BMW 7シリーズ▲2019年6月にマイナーチェンジを果たした新型BMW 7シリーズ。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏による公道試乗の模様をレポート

V12気筒エンジンであることの意味

今の世の中は高級モデルでも、マルチシリンダー化が減退しているのは事実である。半分のシリンダー数にしたとしても、パフォーマンス的には変わらないとはいうが、ドライブしたフィーリングに違いがあるのは確かである。

多気筒化するほど燃焼におけるエンジン回転のスムーズさは増し、小細工を使わずにして静粛性は増すのである。昨今では特別なショーファードリブンのモデルや、弩級のスーパーカーに用いられる限りとなっている。

ところが、フラッグシップサルーンモデルをスポーツサルーンに本気で見立てるブランドがある。それがBMWだ。

今回はそんな最上位セダンの「BMW 7シリーズ M760Li xドライブ」に試乗したので、その模様をお伝えしたい。
 

BMW 7シリーズ ▲7シリーズの中でも上位グレードにあたる「M760Li xドライブ」
BMW 7シリーズ ▲609psを発揮するV12気筒ターボエンジン

隅々まで洗練された車内空間

長いボディは優雅さを知らしめ、ブラックアウトされたモールディングは精悍さを表す。

12気筒ツインターボのパワーはxドライブを介して、確実に四輪に伝えられる。「L」という表記で理解されている人も多いが、ロングホイールベースのショーファードリブン仕様だ。
 

BMW 7シリーズ ▲他を圧倒する圧巻の重厚感

現行型の7シリーズには、4年前に登場して間もない時期に試乗させてもらっていた。今回 LCI(マイナーチェンジ)されたモデルは、主にフロント部の大きな変更であるというが、はたしていかがだろうか。

試乗コースはこれまで幾度となく新型車の走行性能を試した箱根ターンパイク(神奈川県)だが、3200mmを超えるホイールベースのモデルでの走行は初めてである。
 

BMW 7シリーズ ▲キドニーグリルが大型化され迫力を増したフロントマスク
BMW 7シリーズ ▲どこに触れても一級の上質さを感じられるインテリア

車内は吟味されたマテリアルで構成されている。ラグジュアリーなマグノリアのインテリアは、特別な部屋に招かれたような落ち着きがある。

ヘッドレストを含めたシートの出来栄えは、体を優しく確実にホールドする安心感と一体感をもたらす。

BMW 7シリーズ ▲乗員を柔らかく受け止めるヘッドレスト
BMW 7シリーズ ▲後席には空調などを制御できるタブレットを備える

スロットルに足を乗せれば、荒々しい部分はなく静寂の中に小気味良いステップアップを重ねて速度を上げる。LCI以前と変わりはないが、サスペンションの動きはスムーズだ。この静けさが底知れないパワーの序章にすぎないことを、この後に知ることになる。

サスペンションも路面と対話して不安の要因が皆無だ。ターンパイクのコーナーを、全長5200mm超のボディが実に優雅に右に左とヒラヒラとコーナーをさばく。長いボディであるが、軽快感は軽量化した5シリーズという印象である。12気筒がフロントに搭載されている雰囲気は全く感じない。

速度領域を広げるためにアクセルを踏み込む。一気にエンジン内の圧力が上昇してハーモニックであるが乾いた音を奏でる。山々にサルーンとは思えない最高のサウンドがこだました。巨体なのかとわからなくなるほど軽やかだ。

専用にチューニングされた独自の四輪駆動システム、xドライブのセッティングは負荷をかければターンインを軽々とこなす動力配分で、路面にぴたりと吸いついたように走る。

ダイレクトとコンフォート取り混ぜた異次元の心地だ。ファーストクラスに乗りながら、滑走路を飛び立つような加速感はこの車以外には考えにくい。

そして、ステアリングを握って、幸せを感じるモデルであるということに疑う余地はないのだ。
 

BMW 7シリーズ ▲どの席に乗車しようとも、極上のホスピタリティーを発揮するフラッグシップサルーンであった
文/松本英雄、写真/尾形和美
 

【試乗車 諸元・スペック表】
●7シリーズ M760Li xドライブ 4WD

型式 3BA-7U66 最小回転半径 6.1m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 5.27m×1.9m×1.49m
ドア数 4 ホイールベース 3.21m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.62m/1.62m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS 車両重量 2320kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 2595kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.14m
マニュアルモード    
標準色

アルピン・ホワイトIII、ブラック・サファイアメタリック、グレイシャー・シルバーメタリック、インペリアルブルーブリリアントエフェクト、ソフィストグレーブリリアントエフェクト、ミネラル・ホワイトメタリック、ベルニーナ・グレー・アンバーエフェクトM、ドニントン・グレーメタリック

オプション色

アルマンディン・ブラウンメタリック、アズライト・ブラックメタリック、ブリリアント・ホワイトメタリック、ピュア・メタル・シルバーメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、フローズン・ダーク・ブラウンメタリック、タンザナイト・ブルーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズン・アークティック・グレーM、フローズン・ダーク・シルバーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、フローズン・カシミヤ・シルバーメタリック

掲載コメント

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型式 3BA-7U66
駆動方式 4WD
ドア数 4
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS
標準色 アルピン・ホワイトIII、ブラック・サファイアメタリック、グレイシャー・シルバーメタリック、インペリアルブルーブリリアントエフェクト、ソフィストグレーブリリアントエフェクト、ミネラル・ホワイトメタリック、ベルニーナ・グレー・アンバーエフェクトM、ドニントン・グレーメタリック
オプション色 アルマンディン・ブラウンメタリック、アズライト・ブラックメタリック、ブリリアント・ホワイトメタリック、ピュア・メタル・シルバーメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、フローズン・ダーク・ブラウンメタリック、タンザナイト・ブルーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズン・アークティック・グレーM、フローズン・ダーク・シルバーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、フローズン・カシミヤ・シルバーメタリック
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 6.1m
全長×全幅×
全高
5.27m×1.9m×1.49m
ホイール
ベース
3.21m
前トレッド/
後トレッド
1.62m/1.62m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 2320kg
最大積載量 -kg
車両総重量 2595kg
最低地上高 0.14m
掲載用コメント -
エンジン型式 N74B66C 環境対策エンジン -
種類 V型12気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 78リットル
可変気筒装置 - 燃費(JC08モード) 6.9km/L
総排気量 6591cc 燃費(WLTCモード) 6.7km/L
└市街地:4km/L
└郊外:7km/L
└高速:8.9km/L
燃費基準達成 -
最高出力 609ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
850(86.7)/5000
エンジン型式 N74B66C
種類 V型12気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 6591cc
最高出力 609ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
850(86.7)/5000
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 78リットル
燃費(JC08モード) 6.9km/L
燃費(WLTCモード) 6.7km/L
└市街地:4km/L
└郊外: 7km/L
└高速: 8.9km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。