外観こそさりげないが中味は一新!
走りの世界標準がまた塗り変わる

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コンセプト

まさに「世界を変える」ハート・オブ・メルセデス

Eクラスはハート・オブ・メルセデスと自らが形容する、メルセデスの基幹車種。つまり「これぞメルセデス」と謳われており、実際のところ開発に48カ月、投資総額で20億ユーロ(約2400億円)を費やすという、ともに常識外れな長い時間と巨額を投入し完成させた渾身のモデルである。

今回のモデルチェンジでは「スポーティ&エレガンス」という先代モデルから継承されているコンセプトが用いられた。メルセデスによると「それをさらに発展させ、洗練されたフォルムに最新のテクノロジーを集め、走行安定性、機能性、快適性、そして安全性までをも大幅に強化した」と謳う。こんな具合でその言葉自体は他の新型車同様月並みなものなのだが、実は進化の幅は圧倒的。

アルミ材を採用し軽量化に取り組むほか、ボディはさらに高い安全性を確保する構造に。また装備もIT対応となり、高レベル制御のエアコンも採用。さらにエアマチックDCサス(DCはデュアルコントロールの略。コンピュータ制御でダンパーとバネの両方をコントロールする)や電子制御ブレーキSBCなど最新技術も多く採用するなど大幅な刷新で、まさに「世界を変える」内容をもつ。
室内&荷室空間

メルセデスにおけるデザインの起点を担う

最近のメルセデスにおけるデザインの流れは“エレガントかつダイナミック”の追究にある。これは初めて丸目4灯ライトを採用した先代Eクラスに象徴され、その後に続いた新型車で徐々に洗練されていった。

そして今回流れの発端となったEクラスが再び新たなモデルへ移行したわけだが、新型を見ると先代から現在までのデザインがすべて集約されたもののように見える。先代Eクラスから新型Eクラスまでの間に登場したモデルはSLK、A、S、CL、C、SL、CLKとほぼフルラインとなり、それらで築いてきたエレガント&ダイナミックが、ここで完全に昇華された感すら漂う。

エクステリアは一見すると大きく変わったように思えないが、実はディテールまでしっかり時間をかけて煮詰められたからこその新しさが隅々にあふれている。だから先代と比べるとやはり明確に“エレガントかつダイナミック”な造形をもち、洗練性における先代との差はあまりに大きく、メルセデス特有の「先代が急に古く見える」効果を遺憾なく発揮している。

インテリアはS、SL、CLKあたりとの共通性を感じさせるもので、それをさらに熟成。ダッシュボードからドアパネルまで一体感のあるデザインでダイナミックを、クロームメッキのリングを与えたメーターなどでエレガンスを感じさせるものに。これまでの集約とこれからの新たな展開を思わせる仕上がりだ。

同時に重要なのが品質感の復活。「量産」となった先代Eクラスで言われた品質の低下は、その後のモデルで徐々に見直され、さらにこの新型Eでは新世代デザインとの融合を果たしたうえで改善された。

こうしてみると、メルセデス・デザインは常にEクラスが起点となっている。その意味でもまさにハート・オブ・メルセデスである。
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ドライブフィール

「完璧」という言葉が頭をよぎる超絶の走り

まさに「盤石」の一言に尽きる。それが数十m走っただけで即座にわかるものであることも凄い。

重厚ながらも滑らかな感じは、速度を問わず変わらない。街中でも高速でもワインディングでも、常に高い信頼を寄せられる圧倒的な安定性と操縦性の高さがあり、しかもそのすべてをドライバーに優れた感触で伝える。スポーツカーとは違う種類だが、まさに「意のまま」の走りがあり、素直に気持ちよいといえる世界がある。

そのレベルは先代がほぼ同じ言葉で表現できるものであるにもかかわらず、新型は確実に1ランク上だとわかるほどなのだ。一瞬、完璧…という言葉が頭をよぎる。

もちろん完璧な機械などない。例えばE500のエアサスは、高速で一体感を削ぐ動きを見せることもあるし、SBCは感度の高い人にはまだ制動感とペダルストロークの関係に違和感を抱かせるはず。もっともそれらも全体で見れば、ほんの些細なことにしか過ぎず、その走りが完璧に近いことに代わりはないのだが…。

ドライバーに気を使わせない一方で、どこまでも走りたくなる気持ちを呼び起こすという超ハイレベルなその走りにひたすら感心。まさにこのクラスで今、世界一だ。
オススメグレード

E500は十分魅力的だが総合力ではE320に軍配

E320とE500の2台を試乗した現状では、E320がオススメといえるだろう。E500は最新技術をすべて備え、5LのV8による鉄壁の速さと余裕をもつわけだが、エアマチックDCと呼ばれるエアサスは作動に独特の感がある。メルセデスの良さである「目に見えぬ細やかな制御」を考えるとまだ熟成の余地が多く残されており、本当に完成されるのはもう少し先に思える。その意味で、従来通り金属バネを採用するE320のほうが、車の動きも自然だし性能的にも十分。

高価なので買い得感という言葉はふさわしくないが、あえて言わせてもらえば最新のSL500と同じエンジンにもかかわらず870万円というE500もかなり魅力ではある…。
SPECIFICATIONS
グレード E240 E320アバンギャルド E500アバンギャルド
駆動方式 FR
トランスミッション 電子制御5速AT
全長×全幅×全高(mm) 4820×1820×1450 4820×1820×1435 4820×1820×1430
ホイールベース(mm) 2855
車両重量(kg) 1650 1680 1780
乗車定員 5人
エンジン種類 V型6気筒SOHC V型8気筒SOHC
総排気量(cc) 2597 3199 4965
最高出力 130kW(177ps)/ 5700rpm 165kW(224ps)/ 5600rpm 225kW(306ps)/ 5600rpm
最大トルク 240N・m(24.5kg-m)/4500rpm 315N・m(32.1kg-m)/3000~4800rpm 460N・m(46.9kg-m)/2700~4250rpm
車両本体価格 605.0万円 710.0万円 870.0万円
写真:芳賀元昌 文:河口まなぶ