小山町. ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:オリバー・ブルーメ)の911RSRで世界耐久選手権(WEC)のGTE-Proクラスに参戦するポルシェ チーム・マンタイは、第6戦富士6時間レースを2位と4位でフィニッシュし、タイトル獲得へ向けて重要なポイントを獲得しました。
ニュルブルクリンクとオースティンの2レースで連続してワン・ツーフィニッシュを飾った同チームの911RSRは、470PSの出力を誇るスポーツカーの象徴であるポルシェ911をベースとした最も強力なレースバージョンであり、52,000人の観衆を集めた富士スピードウェイの6時間レースにおいて、フランス人ドライバーのフレデリック・マコヴィッキ/パトリック・ピレ組が2位を獲得しました。チームメイトであるリヒャルト・リーツ(オーストリア)/ミヒャエル・クリステンセン(デンマーク)組は4位でした。フォーミュラ・ワンと並んで最も重要なモータースポーツイベントのひとつであり、全8戦で争われるWECの第6戦終了時点でリヒャルト・リーツはGTドライバー選手権のポイントリーダーの座を維持しています。
GTE‐Amクラスではハリウッドスターでありレーシングドライバーであるパトリック・デンプシー(アメリカのテレビドラマ グレイズ・アナトミー 恋の解剖学など)は、彼にとって初のWEC優勝を飾りました。厳しい天候の中、プライベートチームであるデンプシー・プロトン・レーシングとしてパトリック・ロング(アメリカ)/マルコ・ジーフリード(オーストリア)と組んで911RSRを走らせる彼はすでに今シーズン、伝統あるルマン24時間で2位を獲得しています。

31台の強力なマシーンがフォーメーションラップを開始した時、富士山は暗く厚い雲に隠れていました。日本の聖なる山の麓に位置する一周4.563kmのサーキットは前夜から続いた雨で深い水に覆われていたためスタートから17Lapにわたってイエローフラッグが提示されていました。ついにグリーンフラッグに変わった時、パトリック・ピレはすべてのポルシェドライバーの中でも最良のスタートを切ることができました。一週間前のユナイテッド・スポーツカー・チャンピオンシップで豪雨のレースを制してUSCCのタイトルを獲得したフランス人ドライバーは、3台のライバルをかわしてカーNo.92の911RSRを2番手まで浮上させていました。スリップストリームを利したNo.91の911RSRを駆るミヒャエル・クリステンセンも健闘し、9番手グリッドから3台のライバルを抜き、レース開始から9ラップ目にはチームメイトを抜き去りクラストップに踊り出ました。

激しい降雨によりフルコースイエローが提示されたこの時点で、まだレースは1時間が経過しただけでした。フルウェットの路面に対してリアエンジンレイアウトを持つ911RSRは、その卓越したトラクション性能を利してGTクラスのトップを走っていました。43周目にミヒャエル・クリステンセンがリヒャルト・リーツに911RSRのステアリングを渡した直後も、2012年の富士でGTクラスを制しているオーストリア人ドライバーがトップの座に返り咲くまで6ラップしか必要としませんでした。レーススタートから2時間が経過し、雨の勢いが少しずつ弱まり、観客が傘をしまい始めた頃でもコースコンディションはトリッキーでした。気まぐれな天気は一見収まったようでもコース上の争いはますます激しさを増していきます。レースが折り返しを迎えた時点でパトリック・ピレがトップのフェラーリ追撃を開始しました。ピレは少しずつギャップを詰めていき、長いストレートエンドでフェラーリをしとめたのは105周目のことでした。
路面が徐々に乾き始めて911RSRがスリックタイヤへ交換したのはフィニッシュまで2時間を残した段階でした。この時2台のRSRはトップの座を失いましたが、ふたたび目を見張る追い上げを開始し、パトリック・ピレはポルシェ マンタイチームを2番手まで復帰した時チェッカードフラッグを迎えました。

WECのGTドライバー選手権でリヒャルト・リーツは今もリードを保っています。またポルシェチームマンタイもGTE-Proのチームポイントでトップにいます。マニュファクチュアラーポイントでは、あと中国の上海とバーレーンのサクヒルの2レースを残してポルシェは2位に位置しています。
GTE-Amクラスではルマンで総合優勝を遂げたアール・バンバー(ニュージーランド)が見事な追い上げを見せて観客を魅了しました。フィニッシュまで数ラップを残した段階までクラスの下位にいたプライベートチーム、アブダビ・プロトンレーシングの911RSRを走らせた彼は3位まで順位を上げましたが、追い越しをかけてきたLMP1スポーツプロトタイプと接触し、傷ついたホイール交換のためのピットストップにより彼とクリスチャン・リード、クハレド・アルクバイシの3人は5位でフィニッシュすることになりました。

レース後のコメント
マルコ・ウジャーシ GTモータースポーツ総合プロジェクトリーダー:「マニュファクチャラーとチームごとに異なる戦略が入り乱れた、混乱したレースになりました。この中で私たちは成しえる最良の結果を得ることができたと思います。しかし分析すべき要素は数多くあり、次のレースでより強くなるためには充分な分析が必要です。カスタマーチームであるデンプシー・プロトン・レーシングのWEC初優勝には心から賛辞を送りたいと思います。彼らの努力は驚くべきものでした。淀みのないピットストップ作業やコース上でのパフォーマンス、そして完璧なドライバーチェンジのタイミングの結果です。おめでとうの言葉を贈りたいと思います。

リヒャルト・リーツ(911 RSR No. 91): 「今回のレースは観客が望みえる最良の内容だったと思います。私たちもこの状況を楽しむことができました。今日の私たちは色々な正しい選択をしてきました。不運なことにレースマーシャルがコーション時のオペレーションについて当初行っていた説明と異なる結論を出したことによって我々は苦労しました。その混乱の結果が表彰台の場所に表れています。こういう形で決定が下されたのは残念なことです。私たちのマシーンは今日もすばらしかったのですが、こうした状況のせいで本来可能であった結果を獲得できませんでした」。

ミヒャエル・クリステンセン(911 RSR No. 91): 「悪天候とイエローコーションの連続、そしてクラッシュなどにより、正しい戦略を導くのが難しいレースになりました。もっとも様々な出来事は私たちに有利な影響を与えることはなく、元の状況へ戻されるだけのことでした」。

パトリック・ピレ(911 RSR No. 92): 「とにかく混乱したレースでした。すべてのことが完璧に行われなかったことで、正直なところ満足とは言い難い面があります。タイヤチョイスは不運でしたが、それは私の判断ミスでもあります。路面が乾いていく状況に合わせて正しいタイミングでスリックへ変えることができませんでした。私はまだタイヤ交換するには早く、あと数ラップしたいと考えました。このせいで後々、また短いうちに再ピットインの必要が生じ、そこでずいぶんとタイムを失いました。終盤、少しでも多くのポイントを稼げるよう最大限の努力をしました。色々なトラブルがありましたが、それでも私たちは自分達の持つポテンシャルを見せることができたと思います。個人的には次の上海のレースで勝つことに気持ちを切り替えています」。

フレデリック・マコヴィッキ(911 RSR No.92): 「間違いなくこれはいい結果だと思います。今日のレースはすべてのチームにとって非常に難しいコンディションで、スタートからフィニッシュまで最前を尽くしました。不幸にもスリックへ変えるタイミングを誤りましたが、パトリックはそんな状況の下で最大限のことをしてくれました」。

パトリック・デンプシー(911 RSR No.77): 「最高の気分です。私たちにとってWECで最初の優勝なのですから。私たちはシーズンを通してこの日のために努力を重ねてきました。私自身は雨が降る最初の長いスティントを担当して、それからは長時間待つことになりました。そしてまたマシーンに戻ったのはチェッカーが出る直前でした。私はとにかくミスを犯さないことだけを考えて走りました。とにかく今日は色々な出来事がありました。パトリックは無線で逐次アドバイスをくれ、マルコは素晴らしいスティントを演じてくれ、そしてチームの戦略は完璧でした。ポルシェが今シーズン私たちに寄せてくれたサポートには本当に感謝しています。私がドライバーとして成長できたのはそのおかげです。今日は最高の一日でした、そして今後富士スピードウェイは最も好きなサーキットになるはずです」。

パトリック・ロング(911 RSR No.77): 「ルマンを2位でフィニッシュしてからモチベーションを保つのに苦労しました。ですが今回の優勝がすべてを塗り替えてくれました。チーム全員がひとつのミスを犯すこともなく、マルコはレース中盤を申し分のないドライビングでリードしてくれました。今日の成功はこのおかげです」。

マルコ・ゼーフリード (911 RSR No.77): 「私が担当していたスティントの間、そんなにいいポジションにいるということは、あまり理解していませんでした。仕事に立ち向かっている間はレースがどういう展開になっているかわかりにくいものです。私は120%の力を発揮していたわけではなく、速くそして安定したラップタイムを刻むようにしました。今日の私たちのマシーンは素晴らしい状態でした。このトリッキーなサーキットで911RSRを走らせるのはとても楽しい時間でした」。

WEC第7戦(全8戦)は11月1日、中国・上海で行われます。

レース結果
GTE-Pro クラス
1.ブルーニ/ヴィランダー(イタリア/フィンランド), フェラーリF458 イタリア 193 周
2.ピレ/ マコヴィッキ(フランス/フランス), ポルシェ911 RSR 192周
3. リゴン/カラド(イタリア/イギリス), フェラーリ F458 イタリア 192周
4. リーツ/クリステンセン(オーストリア/デンマーク), ポルシェ 911 RSR  192周
5. ソーレンセン/二ゴール(デンマーク/デンマーク), アストンマーチン 191周
6. ターナー/アダム(イギリス/イギリス), アストンマーチン 190周
7. マクドォール/リース/ミュッケ (イギリス/ブラジル/ドイツ), アストンマーチン190周


GTE-Am クラス
1. デンプシー/ロング/ぜーフリード(アメリカ/アメリカ/ドイツ), ポルシェ911RSR 187周
2. ダラ・ラナ/ラミー/ラウダ(カナダ/ポルトガル/オーストリア), アストンマーチン187周
3. ペロード/コラール/アグアス(フランス/フランス/ポルトガル), フェラーリF458イタリア186周
4. ロダ/ルベルティ/シルベスト(イタリア/イタリア/デンマーク), コルベット 185周
5. リード/バンバー/アルクバイシ(デンマーク/ニュージーランド/UAE), ポルシェ911 RSR  185周
6. ベルトリーニ/シェイタル/バソフ (イタリア/ロシア/ロシア), フェラーリF458イタリア 185周
7. カステラッチ/グリフィン/ホール(イタリア/イギリス/イギリス), アストンマーチン 184周

ポイント状況 GTE-Pro  第6戦時点(全8戦)
世界耐久カップ GTマニュファクチュアラー 
1. フェラーリ, 228 ポイント
2. ポルシェ, 215ポイント
3. アストンマーチン, 147ポイント

世界耐久カップ  GTドライバー 
1. リヒャルト・リーツ, ポルシェ, 110 ポイント
2. ダビデ・リゴン, ジェームス・カラド, フェラーリ, 103ポイント
3. ジャンマリア・ブルーニ, トニ・ヴァイランダー, フェラーリ, 93.5ポイント
4. ミヒャエル・クリステンセン, ポルシェ, 92ポイント
5. フレデリック・マコヴィッキ, ポルシェ, 78ポイント
10. パトリック・ピレ, ポルシェ, 60ポイント

FIA 耐久トロフィー GTE-Pro チーム
1. ポルシェ チーム・マンタイ, No.91 ポルシェ, 119 ポイント
2. AF コルセ, No.71 フェラーリ, 117ポイント
3. AF コルセ, No.51 フェラーリ, 111ポイント