ランドローバー ディフェンダー▲悪路走破自慢のSUVは、どれくらいの水深まで走行可能かを示すスペックを公表していることが多い。写真のランドローバー ディフェンダーの場合、水深900mmまで対応できる

「渡河深度」を見れば、オフローダーとしての本当の性能が見えてくる!?

世界的なSUVブームを受けて、コンパクトSUVが増えている。おかげで、2WDでも「SUV」を名乗るモデルが増加中だ。まあコンパクトSUVがルンルンと走っている街中であれば、砂地や泥に足をすくわれることも、岩場で片輪が浮くなんてこともないだろうから、2WDでもいいんだけれど。

しかし、「そんなカッコばかりのSUVなんて!」と嘆く人も多いはず。そんな硬派な人に注目してもらいたいのが、「漢のSUV」と呼びたくなるような本格オフローダーだ。道なき道をガンガン走り、「洗車? ホースでちゃちゃっと水かけとけばいいじゃん」が猛烈に似合う、タフギア。タフさ加減の定義は人それぞれあるが、今回はあるスペックから線引きをしてみた。

それが「渡河深度」だ。文字のとおり「どれくらいの水深まで走行可能か」を示すスペックで、ほとんどの“SUV"は公表していない(気にしていない)。しかし、“道なき道"に川などの水路突破はつきもの。そのため、悪路走破自慢のオフローダーは、どれだけの水深まで走ることができるかを公表しているケースが多い。

当然それに見合うだけの4WD機能も備えているモデルだ。例えば、川底のドロや小石を、渡った先の河原の岩や砂地をしっかりつかんで進んで行ける悪路走破性に自信があるからこそ、渡河深度を公表しているわけで、それはイコール「屈強なSUV」という証しとも言えるのだ。

それに渡河深度が高ければ、昨今の日本でもたびたび災難をもたらしているゲリラ豪雨などによって破壊された道でも、一般車と比べて断然有利だ。悪路で遊べるだけでなく、万が一の際でも安心安全ということだ。

そんな渡河深度の高い本格派SUVの輸入モデルベスト3を紹介しよう。
 

最大渡河深度700mm。セレブライフもジャングル探検もお任せあれ!
メルセデス・ベンツ Gクラス(現行型)

メルセデス・ベンツGクラス▲新設計されたラダーフレームを採用した現行型Gクラス。最大3.4mm厚のスチール鋼板を「ロ」の字にした鋼材を使用することで強度や剛性を高めている。足回りにはメルセデスAMG社と協業して開発したサスペンションを採用している
メルセデス・ベンツGクラス▲先代のGクラスのイメージを踏襲したエクステリアとは一転、12.3インチワイドディスプレイ×2枚が1枚に見えるワイドスクリーンコックピットなど、インテリアは一新したデザインに。もちろん渋滞時対応のアダプティブクルーズコントロールなど最新の安全運転支援システムが備わる

Gクラスはセレブ御用達SUVというイメージが強いが、初代はNATO軍にも採用されたほどオフロード性能に長けていた。2018年6月にフルモデルチェンジしたGクラスは、洗練されたインテリアを備えつつも、当然のように悪路をガシガシ走れる走行性能が与えられた。最大渡河深度は、世界の砂漠やジャングルで愛用されるトヨタ ランドクルーザーと同じ700mmだ。

他に悪路走破性を示すスペックとしては、登坂能力が斜度100%(角度45度)、最低地上高は241mm確保されている。つまり、それだけ尋常でない急坂もガンガンいけて、大きな石などの障害物もまたいで走れるってこと。当初用意されたエンジンは4Lツインターボで、9速ATが組み合わされた。2019年4月には3Lディーゼルターボモデルも追加されている。他にAMGが手を加えた4Lツインターボと専用の足回りなどを備える「G63」もラインナップしている。

4WDシステムには、フロント/センター/リアにそれぞれ電子制御式ディランレシャルロック機能を備えたフルタイム4WDが採用されている。これによりオフロードやオンロード、凍結路、急勾配や一輪しか接地しないような地形での走行を可能にしている。また、走行状況に応じてエンジンやトランスミッション、ステアリングなどの特性を任意で変えられる「ダイナミックセレクト」には「コンフォート」「エコ」「スポーツ」に加え、砂地での最適なトラクションを確保する「デザート」モードを備えている。

新車時価格は、3LディーゼルターボのG350dが1170万円、4LツインターボのG550が1562万円、G63が2035万円。

中古車は、原稿執筆時点でG350dが47台、G550が17台、日本未導入の400d(350dよりハイパワー)が3台見つかった。走行距離が2万km未満の物件が多く、最安値はG350dの車両本体価格で約1400万円、G550は約1600万円。一方、G63は83台で、最安値は走行距離6万kmの物件で車両本体価格は約1860万円。こちらも2万km未満の物件が多い。2万km未満の物件の最安値は車両本体価格約2000万円。人気車だけにGクラスはリセールバリューも高いことがうかがえる。
 

▼検索条件

メルセデス・ベンツ Gクラス(現行型)×全国

最大渡河深度762mm。今にも戦地を爆走できそうな屈強オフローダー
ジープ ラングラー

ジープ ラングラー▲ラダーフレームや前後リジッドアクスル、パートタイム式4WDといった、初代から続く悪路走破性のキーアイテムは現行型でも採用されている。さらに丸目+7スリットという外観の約束事も堅持。先代からは4ドアの「アンリミテッド」も設定されるように
ジープ ラングラー▲伝統的な水平基調のダッシュボードを採用したシンプルなデザインであるものの、Apple carplay/Android Autoに対応するタッチパネル式ディスプレイや、USBポートなど最新のカーライフに対応している

第二次世界大戦中に開発された軍用車を祖にもつ、アメリカの伝統的なオフローダー、ジープ・ラングラー。ちょっとやそっとの地形の変化に動じるようじゃ、ご先祖様に面目が立たないとばかりに、2018年10月に日本デビューした現行型の4代目も、最大渡河深度762mm(30インチ)をはじめ、抜群の悪路走破スペックを誇る。

要となる4WDシステムには、伝統のパートタイム式に、ラングラー史上初となるフルタイムオンデマンド機能が加わった「セレクトラックフルタイム 4×4システム」が採用された。これにより8速ATシフトレバーの隣に備わるトランスファーレバーで、「2H(2WD)」「4L(4WD低速)」と、前後輪の駆動力を50:50に固定する「4H PART TIME(4WD高速)」、 路面や天候状況に応じて駆動力を自動的に前後へ分配し、あらゆる路面を安全かつ快適に走れる「4H AUTO」モードから任意に選ぶことが可能となった。

さらに、2019年4月に追加されたラングラーの中で最もオフロード性能が高いグレード、アンリミテッドルビコンには「ロックトラックフルタイム4×4システム」システムが備えられた。上記「セレクトラックフルタイム 4×4システム」の機能に加え、変速比が低レンジ化されているので、路面状況を確かめながらゆっくり、じわじわと地面を踏みしめるように進むことができるうえ、前後輪ディファレンシャルをロックすることも可能だ。他に起伏の激しい悪路に対応できるように、フロントのスタビライザーを任意に解除して、フロントをより柔軟にストロークさせることもできる。

搭載されるエンジンは2Lターボと3.6LのNAの2種類。ボディは全長4870mmの4ドア5人乗りモデルと、全長4320mmの2ドア4人乗りモデルの2タイプがある。2018年のデビュー時の新車車両本体価格は459万~530万円、2019年登場のルビコンは588万6000円。

中古車は原稿執筆時点で150台。うち120台が走行距離1万km未満だ。人気車のうえ、低走行物件が多いため、最安値でも約450万円と新車時とあまり変わらず。100台限定販売の2ドアのルビコンは新車時価格の589万円を超える約620万円のプライスがついている。
 

▼検索条件

ジープ ラングラー(現行型)×全国

最大渡河深度、なんと900mm! 最先端デバイスでオン/オフも最強かつ快適
ランドローバー ディフェンダー(現行型)

ランドローバー ディフェンダー▲乗り心地の向上に有利なモノコック構造を採用しながらも、従来モデルのラダーフレーム構造より3倍のねじり剛性を確保している。その強靱さは今年公開予定の映画007の『NO TIME TO DIE』でガンガン空を飛んで転がりまくった挙句に走り続けていくカーチェースの実演でもわかる
ランドローバー ディフェンダー▲室内の床材はラバー素材のため、汚れても掃除がしやすい。最新インフォテイメントシステム「Pivi Pro」は、ドライバー好みのルートを学習して提案したり、システムを自動アップデートするなど、最新技術が備わる

ランドローバー社の礎となるのが、1948年に開発されたランドローバー・シリーズIだ。その後シリーズII、シリーズIIIへと発展していく中、このランドローバーに乗用車のような快適性を加えようと開発されたのがレンジローバーで、レンジローバーが高価になっていく中、ランドローバーとの間を埋めるために誕生したのがディスカバリーだ。一方、本格クロカン色が最も濃いランドローバーは1990年にシリーズIIIから「ディフェンダー」へと名称が変更された。

なぜこんな前置きをしたかというと、実は現行型のディフェンダーとレンジローバー、ランドローバーはいずれも渡河深度が現行SUV最強クラスの900mmなのだ(ディフェンダーはコイルサスペンション装着車の場合850mm)。また、エンジンや四輪の駆動などを制御して悪路走破性を高める同社独自の技術「テレインレスポンス2」を備えるも同じ。このように3車種とも同じようなオフロード性能を有しているのだが、ここではいわば本家にあたるディフェンダーで説明を続けることにする。

2020年から納車が開始された現行型ディフェンダー。「テレインレスポンス2」は、ディフェンダーの場合「オンロード」「草/砂利/雪」「泥/轍」「砂地」「岩場」の他に「渡河走行」モードが用意されている。この「渡河走行」モードを選択すると、電子制御サスペンションがボディを上昇させ、最大渡河水深に近づくとセンサーが検知し警告表示および警告音でドライバーに知らせてくれるのだ。

さらに、ボンネット下の路面状況を、カメラを使ったバーチャル映像でリアルタイムにモニターへ映し出す「ClearSightグラウンドビュー」は、本来なら見えない足元の様子を映し出してくれるので自車の状況を把握しやすく、安心して進むことができる優れものだ。

ボディはロングホイールベースで全長が4945mmの「110」と、ショートホイールベースで全長4510mmの「90」の2タイプ。2020年モデルは2Lガソリンターボに8速ATの組み合わせのみだったが、2021年モデルから3Lディーゼルターボにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドモデルも選べるようになった。

新車時の車両本体価格は「110」が589万円~820万円、「90」が499万円~739万円。中古車は、原稿執筆時点ではまだ1台しか見つからなかった。その1台は、登場時の特別仕様車として135台が限定販売されたモデルで、車両本体価格は約1000万円と新車時の車両本体価格を超えるプレミアプライスになっている。
 

▼検索条件

ランドローバー ディフェンダー(現行型)×全国
文/ぴえいる、写真/尾形和美、メルセデス・ベンツ、ジープ、ランドローバー

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。