Q.中販連、公取協に加盟していないといった理由で、修復歴の有無を教えてもらえなかったのですが?

購入した車に修復歴が発覚。返品を求めると「うちは中販連にも公取協にも加盟していない。加盟店ではないから両者が定めた修復歴は当てはまらない。うちにはうちの規定がある」と言われました。修復歴の規定は中販連や公取協の加盟店でしか通用しないものなのでしょうか?

A.たとえ業界団体に加盟していなくても、ガイドラインに沿う必要があるでしょう

まず、中販連と公取協がなにかを説明しておきましょう。中販連とは「社団法人 日本中古自動車販売協会連合会」。中古自動車販売業の健全な発展のため、消費者利益の保護、環境の保全、安全の確保等、国の行政施策に協力することなどを目的とした団体です。

公取協とは「社団法人 自動車公正取引協議会」。公正取引委員会から認定された「公正競争規約」の運用を通じて、消費者と販売者を結ぶ団体です。

質問の回答ですが、たとえ中販連に加盟していなくても、修復歴の規定を勝手に決めるのはいささか無理があるでしょう。中販連が定めた修復歴の規定は、自動車公正競争規約にも記されている、一般的に認知されているものです。自動車公正競争規約は業界が自主的に設定したルールですが、公正取引委員会は加盟していない業者に対しても、規約の内容を参考にして違反行為かどうかを判断します。実際上は、加盟していない業者に対しても規約の効果が及ぶことになります

よって、同じ業界に身を置きながら、それとまったく違う要件を設定して、「うちの修復歴規定はこれだ」と言い切るのはおかしな話で、これは「自動車公正競争規約違反」となり、「不当表示」と判断されるでしょう。

ちなみに公正取引規約によって、修復歴車に関しては以下のように規定されています。

『交通事故やその他の災害により、次に掲げる車体の骨格にあたる部位を修正及び交換を行った自動車については、販売時に修復歴がある旨及び特定の車両状態を表示した書面によりその部位を表示する』。

1)ボンネットタイプ
    1.フレーム(サイドメンバー)
    2.クロスメンバー
    3.フロントインサイドパネル
    4.ピラー(フロント、センター及びリア)
    5.ダッシュパネル
    6.ルーフパネル
    7.フロアパネル
    8.トランクフロアパネル

もし今回のケースで裁判になったとしたら、上記の基準に沿って、「中古車販売に携わるのであれば、加盟店でなくてもこの規約は守らなくてはいけない」と判断されるでしょう。もちろん損害賠償や契約解除の対象になる可能性が高いはずです。業界が定めたガイドラインは、かなり法的な拘束力に準じた拘束力があると考えていいと思われます。

とはいえ、基本的にトラブルで余計な労力を使わないためにも、中販連や公取協の加盟店で購入するほうが安心でしょう。もしもトラブルがおきても、公取協に加盟している販売店ならば、同協会に電話をすれば、トラブルを解決するためのアドバイスを受けることができます。社団法人 日本中古自動車販売協会連合会でも加盟店と消費者のトラブル相談に乗ってもらえます。こちらに相談窓口の連絡先が記載されているので参考にしてください。

第66回:業界団体に加盟していないという理由で修復歴の有無を教えてもらえなかった!!|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

自動車公正競争規約(じどうしゃこうせいきょうそうきやく)
業界が自主的に設定した自動車を販売する際の表示と景品提供に関するルール。不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第12条に基づき公正取引委員会から認定を受け社会的に認められている
不当表示(ふとうひょうじ)
一般消費者に誤認されることによって不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示