Q.禁煙車と聞いていたのに焦げ跡があったんだけど?

禁煙車ということで購入したのですが、しばらくして後部座席に焦げ跡を発見しました。喫煙車と知っていて売りつけたのなら詐欺だし、知らなかったとしても喫煙車を禁煙車と間違えるなんてプロとして失格だと思います。契約の解除はできないのでしょうか?

A.無償での修繕や値引きを求めることができます

このようなケースの場合は程度の問題になってくるでしょう。例えば、前オーナーがこの車を運転している際に友人が禁煙車と知らずに喫煙をしてしまい、すぐにやめさせたけれども、たまたま焦げ跡がついてしまったとき。この場合、この一本の喫煙をもって禁煙車ではないから契約を解除するというのは無理があるでしょう。とはいえ、焦げ跡がついていることは事実です。

程度の問題で難しいのは、このように一本だけだったのか、それとも常習的に吸われていたのかというところです。上記の例のように『たった一回の偶然で焦げ跡がつくわけがない』と思われるかもしれませんが、法律上、それを嘘と証明するのは購入者の義務です。しかし、これは容易なことではありません。さらに喫煙車だったのに徹底的に室内をクリーニングして、オゾンなどを行った上で脱臭をして「禁煙車」として売っているのではないかと疑い始めたら、キリがありませんし、それを証明するのもやはり現実的ではありません。ただし、焦げ跡がついているのですから少なくとも一本は吸った形跡がある、ということはいえます。

そのためこの場合は、契約解除は無理でも無償での修繕や損害賠償として相当分の値引きを要求することはできます。

それではこのようなトラブルに巻き込まれないためにはどうすればよいかというと、広告に禁煙車であることが明記してある車を選ぶことです。これならもしも禁煙車でなかった場合は不当表示にあたるので、販売店側も完全に禁煙車であることが証明できる車を売る可能性が高いでしょう。また、禁煙車であることを契約書に明記してもらうのも一つの手です。禁煙車であることが契約において重要な条件であることを明記しておけば、もしも後日、喫煙車であることがわかったときに「動機の錯誤」があったとして契約の解除ができる可能性があります

第70回:禁煙車を購入したのに車内に焦げ跡を見つけたら!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

不当表示(ふとうひょうじ)
一般消費者に誤認されることによって不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
動機の錯誤(どうきのさくご)
人の主観的な認識と客観的な事実との間に誤解を生じている状態。特定の性能を求めて購入しようという客の意思と表示から推測される商品の性能などの不一致をいう