Q.私有地に駐車して10万円! これって払う必要あるの?

販売店に車を見に行ったところ駐車場が満車。仕方がないので帰ろうとしたら、店員さんから「そこの空き地に止めても大丈夫ですよ」と言われたので駐車させてもらいました。ところが、その空き地は私有地で地主さんから「無断駐車だ。看板にも書いてある。10万円払え」とクレームが。これって10万円を払う必要はあるのでしょうか? また、ある場合は「止めていいよ」と言った店員が払うべきだと思うのですが…。

A.払う必要はありませんが
     店員に責任転嫁することはできません

結論から言いますと、10万円は払う必要はありません。もし、看板に10万円支払い義務が明記してあったとしても、常識的に、車を置いた側の人間が「10万円を払うことを了承した上で止めた」とは考えにくく、そこに契約が成立しているとは思えません。

特別な事情がない限り、地主側の請求金額は、地代相当損害分(土地を不法に占拠したことによって被った損害分)が目安になります。これは、その場所を駐車場として貸すと月いくらになるのか? 1日だといくらか? 近隣の時間貸しの相場はどの程度か? などから算出されます。もし、相談者が1時間止めていたら、1時間分の金額しか請求できません

それでは、店員の責任についてですが、責任の追及は難しいでしょう。駐車してもよい場所かどうかの判断は、最終的には運転者が自身で確認をする義務があります。看板があるということは違法であることの確認はできるはずです。それを店員の判断だけに基づくのは確認義務を怠ったととられても仕方がないでしょう。

ただし、コインパーキングに止めようとしているのを無理矢理やめさせた。違法な場所を合法と偽って止めさせたなどのケースでは、違法行為を教唆したことになるので、責任を追及することは可能だと思われます。

今回のケースを曲解すると、法外な金額は請求されても払う必要がないのだから、私有地ならどこに止めてもOKなどと考えてしまうかもしれませんが、それは大きな間違いです。私有地に車を止めるということは、悪質な場合、民事上の責任とは別に「建造物侵入」として刑法上の罪に問われる可能性があります。

安易に私有地に車を止める行為は厳禁です。

第35回 法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

教唆(きょうさ)
他人に犯罪を起こそうと決意させて実行させること。実際に犯罪を実行した正犯に準ずる重い刑を科せられる
建造物侵入罪(けんぞうぶつしんにゅうざい)
正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守(管理)する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入した、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合に適用される。建造物には、門、塀などによって囲われた建物の付属する場所が含まれる