Q.「たった今売れました」って、もしかしておとり広告?
   だとしたら、交通費を請求したいのですが。

カーセンサーnetに掲載されていた車。気に入ったので販売店に見に行ったところ、「たった今売れてしまった」と言われました。しかし、どうにも信用ができません。おとり広告の可能性も否定できません。交通費などを請求したいのですが、可能でしょうか?

A.事前に販売店に連絡をしていない場合
   広告の商品が売れていても、交通費の請求はできません。

このケースで交通費を請求するのはかなり難しいでしょう。そもそも、事前に確認もせずに、広告の商品が売れてしまっているからと文句を言うのは筋違いです。カーセンサーnetでは基本的に、他者がその物件の商談をすることができなくなった時点で掲載を終了しています。しかし、実際に物件が成約してから掲載を落とすまでには、多少の時間差が生じてしまいます。この時間差が原因で今回のようなことが起こる場合があります。

また、例えば平日にカーセンサーnetでお気に入りの物件を見つけて、週末まで販売店にいくことができなかったとします。こうなると、その目当ての物件が売れてしまっている可能性は当然あるといえるでしょう。

それでも、もし、交通費を請求するのならば、客側に本当におとり広告であることの立証責任が発生します。その場合、「掲載された時点では車が売れていた」または「そもそも店舗に車がない」ことを証明しなくてはなりませんが、一般的に考えてかなり難しいでしょう。また、契約前の出来事なので、販売店と客の間にはなんの契約関係もありません。

反対に請求できるケースを考えてみましょう。車を見に行く日時を指定していた場合、それまでに売れれば、社会通念上は販売店から売れたことを伝える連絡があってしかるべきです。もし客側から「売れたら連絡ください」と念押しをしておいた場合、口約束とはいえ、契約が成立するので、交通費やガソリン代などの実費を請求できることもあります。

大事なのは車を見に行く直前には販売店に連絡をして、実車があるかどうかを確認することです。車が売れていないかの確認もできますし、これから見に行くから、チェックができる状態にしておいてよといった意思表示もできますよ。

第59回:気に入った物件に問い合わせたら実はおとり広告だった!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

立証責任(りっしょうせきにん)
民事訴訟法上は、原則として権利関係の発生、変更、消滅等の法律効果を主張する当事者が証明責任を負い、裁判において事実の真偽がわからない場合、その当事者が不利益を被る。買い主が販売店に対して損害賠償を請求する場合は、買い主が立証責任を負担することになる。