インディをはじめ、数々のレースで活躍するプロレーシングドライバー・ロジャー安川氏が、北米でしか販売されていない魅力的な車を日本のみなさんに紹介します。

ホンダのレーシングスピリットを盛り込んだS2000CRがデビュー

ホンダ S2000CR フロントスタイル|ロジャー安川の米国自動車浪漫 ホンダ S2000CR リアスタイル|ロジャー安川の米国自動車浪漫
↑S2000CRは日本のTypeSモデルに少し似ていますが、中身は大いに異なります。Bridgestone RE 070タイヤのグリップ感は高く、サーキットに持ち込んでも十分に走ってくれます
S2000がデビューしたのはその名のとおり2000年で、初めて乗ったのは、ロードアトランタのサーキット。今でも覚えていますが、S2000の運動能力や性能には驚きました。エンジンはピーキーで、ハンドリングはニュートラル。公道でもサーキットでも、運転の楽しさを改めて実感させてくれる車であったことを思い出します。しかし、2004年にAP2型としてマイナーチェンジが施され、エンジンのトルクが増えたものの、ピーキーさが減り、ハンドリングもオーバーステア気味な部分がなくなり少しがっかりしていました。
そんな中、去年ホンダのレーシングスピリットを盛り込んだS2000CRがデビュー。CRは“クラブマンレーサー”の略で、このS2000CRは運転を楽しむ人のために作られた車です。

ホンダ S2000CR インパネ|ロジャー安川の米国自動車浪漫 ホンダ S2000CR 運転席|ロジャー安川の米国自動車浪漫
↑エアコンやラジオはオプション装備。ボディ剛性を保ちながら、アルミ製のハードトップを使用し41kgも軽量化
日本のS2000にはType Sがありますから、CRは北米版のType Sと勘違いされやすいのですが、実は中身は全く別物です。Type Sは公道やワインディングを中心にセッティングされていていますが、CRはその名のとおりサーキット走行を重視されています。そのため、CRには手動でしか取り外しできないアルミ製のハードトップが装備され、エアコンやラジオはオプション装備となっています。ノーマルのS2000よりもトップを外すと40kg以上もの軽量に成功しています。
サーキット走行でのグリップ感を高めるために、Bridgestone RE 070タイヤを標準装備し、スプリングやダンパーも硬めにチューニングされて、コーナリングでのグリップ感はメチャメチャ高いです。CR用に開発されたボディキットには、リデザインされたフロントクリップやリアバンパー、そして大型のリアスポイラーも搭載されていて、ハイスピードでのバランスも安定しています。初代S2000はサーキット走行する際には、それなりの運転技術を要しましたが、CRは比較的アマチュアドライバーにも乗りやすいセッティングに仕上がっているという印象をうけます。

ホンダ S2000CR エンジン|ロジャー安川の米国自動車浪漫 ホンダ S2000CR 走り|ロジャー安川の米国自動車浪漫
↑エンジンには2005年からS2000に使用している、2.2L VTECのF22C型エンジンを使用。2.2Lエンジンに変更された時は不満だったものの、0.2Lのパフォーマンスはサーキットで真価を発揮します
S2000CRの唯一の欠点と言えば、街中走行には向いていないという点です。ハードトップの取り外しも一人では不可能で、ラジオもないので運転に集中するしかない車だからです。アメリカのクラブレーサーにマツダ MX-5(日本名:ロードスター)や、日産 フェアレディZが高い人気を誇る中、このS2000CRはサンデーレーサーにとって非常に扱いやすい車に仕上がっていると思います。ノーマルのS2000との値段差もほとんどなく、購入した状態でサーキットに行って走れることを考えると、いろんな手間が省けるので一石二鳥です。サーキット以外での実用性は低いものの、ホンダスピリットを感じる内容になっていて、ドライビングプレジャーを改めて実感することができました。

主要諸元のグレード:S2000 CR 駆動方式:FR トランスミッション:6MT 全長×全幅×全高:4120mmX1750mmX1270mm ホイールベース:2400mm 車両重量:1276(ハードトップ付き)kg 乗車定員:2名 エンジン種類:DOHC 直列4気筒 VTEC 総排気量:2.2L 最高出力:237ps/7800rpm 最大トルク:22.4kg-m/6800rpm 10・15モード燃費(km/L):- ガソリン種類/容量:無鉛プレミアム/50L 車両本体価格:$36,795(約370万円)
(Tester/ロジャー安川 Photo/竹内英士)