ジャガー XKR-S

これから価値が上がっていくだろうネオクラシックカーの魅力に迫るカーセンサーEDGEの企画【名車への道】

クラシックカー予備軍たちの登場背景や歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく!

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。「クルマは50万円以下で買いなさい」など著書も多数。趣味は乗馬。

強大なパワーを備えたエレガントな2ドアモデル

——毎度のことなんですけど、松本さんのお眼鏡にかなう物件が見つかりにくくなってきましたね……。それで2000年代の比較的新しいモデルも候補に入れていきたいのですが、以前紹介したアウディ R8も「名車」に相応しいモデルでしたし。

松本 そうだね、いいと思うよ。その年代は大排気量エンジンの最終タームだから、ビッグトルクなモデルなんかいいんじゃないかなあ。メルセデス・ベンツ C63 AMGとかクライスラー 300C 5.7HEMIとか。あ、ジャガー XKR なんかもいいね、V8スーパーチャージドで下からトルクがモリモリのスポーツモデルなんだ。

——そういえば、以前にクラシックジャガーのXK150を取り上げましたが、松本さんも昔XKを所有されていましたよね?

松本 うん。僕の所有していたのは2代目初期型の2006年モデルで、しばらく乗っていたんだけど故障もなくて快適だったよ。燃費以外はね。エンジンはベースをコスワースが設計したというAJ-8というV8で、長い間生産されてきた名機だね。たしかこの年代だと燃料システムは日本のデンソーが手掛けていたものだったと思うよ。

——好きなんですね(笑)。実は、今回は2代目の特別なモデルを紹介したいんですよ。

松本 それってXKR-Sでしょ? エアロパーツやカーボンをあしらった調度品もいいんだよ。全体的に大人の雰囲気がしてね。あの車は狙い目だよ。

 

ジャガー XKR-S
ジャガー XKR-S

——以前も話していましたけど、ジャガーってエンジンが象徴的なんですよね? それとデザインでしたっけ? XKR-Sもその流れなんですよね。

松本 そうなると、XKR-Sの前にXKの話をしておかないとね。XKというとエンスージアストな人ならEタイプへと続くXK120からXK140、XK150なんだけど、モデル名が“XK”だけというのは1996年に登場したXK8が最初なんだよ。その後、ハイパワーバージョンのXKRが1998年に登場するんだけど、それがXKR-S の源流だろうね。XKR は4Lスーパーチャージドが搭載されていて、最高出力375psを発揮したんだ。メルセデス・ベンツ製の5速ATを組み合わせて、250km/hのリミッターまで余裕で到達しちゃう、当時のスーパーモデルの1台だったんだ。その後4Lから4.2Lになり、406psまで出力を向上させている。4.2Lで406psなんて大したことないじゃんって思うかもしれないけど、トルクは6L級だったからね。当時、試乗させてもらった時はアクセルを踏んだ瞬間からモリモリとパワーがみなぎっていて、逆にシャシー剛性が気になったぐらいだったんだ。でも、その装いはジャガーらしいジェントルでクラシックな雰囲気だった。

——そして2代目が登場するというわけですね。

松本 うん。そんなクラシックなスタイルのXKは、2006年にモデルチェンジして2代目に進化。これはジャガーが新たに開発したアルミ合金製のシャシーを採用しているんだよ。アルミ合金製ボディは2003年から生産されていたX350と呼ばれるフラッグシップサルーンのXJですでに活用されていたから経験値的にはまったく問題なかった。しかも4ドアからクーペだからね、当然剛性は向上する。それと、アルミ合金は溶接すると物性が変わるので強靭なリベット止めでアルミ合金同士を接合していたんだ。アルミ合金の板材は、接着とリベットの併用によって信頼性がグンと高まるんだ。ちなみに、このシャシーはキャッスル・ブロムウィッチ工場で作られていたんだけど、実は第二次世界大戦の名戦闘機「スピットファイア」を作っていた工場なんだよ。

——2代目のデザインは、初代と比べると方向性がやや違う印象ですね。

松本 そうだね。2代目はアストンマーティンのDB9やヴァンキッシュなどで有名なイアン・カラム氏が担当したんだ。X150と呼ばれる2代目のイメージは、ル・マン24時間レースを制覇したジャガー Dタイプをインスパイアした造形なんだそうだけど、個人的にはフロントノーズがちょっと似ているかなあ、というくらいのイメージだね。でも、初代に比べると明らかにボリュームがあってプレミアム感の向上は半端じゃないよ。アストンマーティンほど繊細ではないけれど存在感はある、って感じだね。そういえば、イアン・カラム氏と一緒に食事したことがあるんだけど、存在感あるスノビズムというに相応しい方だった。当時30代後半の僕はタジタジって感じだったね(笑)。イアン・カラム氏の弟さんはフォードのデザイナーだったんだよ。だからフォードとランドローバーは似ているんだと僕は思っているんだ。

 

ジャガー XKR-S

——相変わらずすごい経験してますね……。XKR-Sについてはどうなんでしょうか?

松本 あ、そうだよね。まずはエンジンだね。5Lスーパーチャージドユニットは第3世代のパワーユニットで、アルミ合金製ブロックは全く新しく設計されているんだ。パワーだってXKR-S だけ550ps だよ。“S”がつくとつかないとでは大違いというわけだね。なんといっても最高速度は300km/hだからね! 300km/hを実現させるということは、空力にちゃんと手が入っている証拠。その暴力的なまでの加速をしっかりと受け止めるサスペンションも天下一品だよ。ジャガーのこういうセッティングは伝統のスポーツカーブランドとして一日の長があるよね。もちろんブレーキも特別で、パッド表面積が44%(フロント)も増加されている。そういえば、この個体は本国オプションのカーボンパーツも装着されているね。

——なるほど、ジャガーの大排気量エンジン搭載モデルの集大成というところですね。

松本 現在ではジャガーにエレガントな2ドアモデルはなくなってしまったけれど、ジャガーの本来の魅力はこのXKにあるような優雅なスタイリングだと思うんだよね。それでいて大パワーを受け止める実力を備えている。もはや中古車でしか手に入らない、現在のジャガーでは作れない魅力と実力を兼ね備えたモデル、それがXKR-Sというわけさ。

 

ジャガー XKR-S

「ジャガー史上、最速かつ最も俊敏な量産スポーツGT」として2011年に登場した、ラグジュアリーGTであるXKRの高性能モデル。空力を向上させたエクステリアに最高出力550psを発揮する改良型V8スーパーチャージドエンジンを搭載。足回りも専用セッティングとなり、車高はベースモデルより10mm低められている。本国ではコンバーチブルも用意されていた。

ジャガー XKR-S
ジャガー XKR-S

※カーセンサーEDGE 2025年2月号(2024年12月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています

▼検索条件

ジャガー XKR-S× 全国
文/松本英雄、写真/岡村昌宏

【諸元・スペック表】
●R-S

型式 CBA-J43YB 最小回転半径 5.3m
駆動方式 FR 全長×全幅×全高 4.8m×1.92m×1.31m
ドア数 3 ホイールベース 2.75m
ミッション 6AT 前トレッド/後トレッド 1.56m/1.61m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1810kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 4名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.12m
マニュアルモード
標準色

ポラリスホワイト、アルティメットブラックメタリック、ストラタスグレイメタリック、イタリアンレーシングレッドメタリック、ブリティッシュレーシンググリーン、フレンチレーシングブルー

オプション色

-

掲載コメント

※ブリティッシュレーシンググリーンは2012年1月より生産開始

型式 CBA-J43YB
駆動方式 FR
ドア数 3
ミッション 6AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ポラリスホワイト、アルティメットブラックメタリック、ストラタスグレイメタリック、イタリアンレーシングレッドメタリック、ブリティッシュレーシンググリーン、フレンチレーシングブルー
オプション色 -
シート列数 2
乗車定員 4名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.3m
全長×全幅×
全高
4.8m×1.92m×1.31m
ホイール
ベース
2.75m
前トレッド/
後トレッド
1.56m/1.61m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1810kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 0.12m
掲載用コメント ※ブリティッシュレーシンググリーンは2012年1月より生産開始
エンジン型式 508PS 環境対策エンジン H17年基準 ☆☆☆
種類 V型8気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 スーパーチャージャー 燃料タンク容量 71リットル
可変気筒装置 - 燃費(JC08モード) 6.6km/L
総排気量 4999cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 550ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
680(69.3)/3500
エンジン型式 508PS
種類 V型8気筒DOHC
過給器 スーパーチャージャー
可変気筒装置 -
総排気量 4999cc
最高出力 550ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
680(69.3)/3500
環境対策エンジン H17年基準 ☆☆☆
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 71リットル
燃費(JC08モード) 6.6km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -