エコドライブ

雑誌『カーセンサー』2023年5月号では、「ハイパワーエンジンの魅力」を特集している。



しかし、エンジンはダウンサイジングが主流の今日この頃。多気筒・大排気量エンジン搭載車に手を出すのはちょっとドキドキするだろう。

そこで、購入のときの選び方を教えてもらうべく、長年大排気量車を扱ってきた神奈川県高座郡寒川町の国産VIPセダン専門店「BU-BUコレクション」に伺ってきた。

BU-BUコレクションでは、大排気量の国産セダン、中でもセンチュリー、日産 プレジデント、加えてレクサス LSを中心に取り揃えている。

主に10~15年落ちあたりの年式で、総額100万円程度で手が届く物件を集めているという。新車はびっくりするほど高価格なフラッグシップモデルに手が届くというのは、まさに中古車のロマンだ。

「新車の値段考えたらコスパはすごくいいですよね。メーカーのフラッグシップの車なので、装備も技術も最上級のものが詰まってる。センチュリーなんか特に最初で最後のV12エンジンでしょう。それはハンドル握ってみる価値はあると思うんですよ」

そう魅力を語りながらも、いくつか気をつけてほしいこともあるという川原さんに、BU-BUコレクションで主に取り扱っている、トヨタ センチュリー、日産 プレジデント、レクサス LSにフォーカスして、車種ごとに購入時に確認したいポイントを聞いてきた。
 

エコドライブ▲お話を伺ったBU-BUコレクション、川原弘幸さん。免許を取った頃から大排気量のVIPセダンが大好きで、34歳で初めて手にして以来、これまでにプライベートで5台のセンチュリーを乗り継いできた。そんな川原さんが、好きな車を売りたいと設立した「BU-BUコレクション」は、今年でちょうど創業10年。今となっては知る人ぞ知る国産VIPセダン専門店だ。
 

トヨタ センチュリー(2代目)のチェックポイント

国産車で唯一の5L V12エンジンを搭載する、いわば国産大排気量の最高峰が、先代モデルに当たる2代目センチュリー。

型式名GZG50は、1997~2017年までとモデルライフが長く、2005年のビッグマイナーチェンジを境に前期型と後期型に分かれる。
 

エコドライブ

チェックポイント①:エンジンオイル

前後期かかわらず、ヘッドカバーガスケットからのオイル漏れは多く見られるそうだ。必ずボンネットを開けて、マニホールドのカバーにオイルが焼けた跡がないか確認すべし。ヘッドカバーの脇からのぞけば見える場所なので、ぜひチェックを。
 

エコドライブ▲エンジンカバーの横から下をのぞいてチェックしたい

チェックポイント②:エアサスペンション

交換するとパーツだけで1本10万円×4本、これに工賃がかかるというエアサスもチェックしたいポイントだ。

走らせることができない場合でも、エンジンをかけてまずハイトコントロールをハイに、それをオフにしたときにちゃんと上がり下がりするかをチェックするといいそうだ。

ただし、エアがひどく抜けていなくても、ショックがへたって走行中にガタガタ異音がすることもあるという。

「それは走ってみないとわからないから、ナンバー付いてない個体で見極めるのは難しいですよね。お店の中ちょっと動かしたくらいじゃわからないので」

やはり経験のあるお店での購入が安心になってくるようだ。

チェックポイント③:トランスミッション

特に前期型に搭載される4ATは、ミッションが滑る、シフトショックが大きい、といった症状が見られることが多いそうだ。

「僕の経験でいうと、後期の6ATではトラブったことがないので、予算が許せば後期ものをオススメします」

走行距離17万~18万km以降で出てくる個体があるそうで、「10万kmくらいじゃ全然大丈夫。そこはさすがのジャパンクオリティ、世界のトヨタのフラッグシップですよ」とのことだ。

チェックポイント④:ブレーキ

これは故障ではなく、センチュリー独特のブレーキの利き具合を知っておいてほしいということ。じわーっと利き始めて、奥の方で利くタイプだそうで、「へたな運転手でも、カックンブレーキで後ろに乗る人に不快な思いをさせない配慮なのかもしれないね」とのこと。

慣れないうちは、十分な車間距離をとり、早めにブレーキをかけるようにしたい。
 

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トヨタ センチュリー(2代目)×全国
 

日産 プレジデント(G50)(F50)のチェックポイント

いずれも4.5LV8エンジンを搭載する3代目プレジデント(G50)と4代目プレジデント(F50)。

ロングホイールベースでVIPカー然としたG50をオススメしたいが、2003年に生産終了している約20年前のモデルのため部品が乏しいそうだ。

一方、F50は「シーマみたいになっちゃったのは残念だけど、シーマの部品が流用できる」ため、対応できるトラブルの範囲が広く安心だという。

ただし、いずれにしても「トヨタ車よりはメンテナンスが必要な印象」。とにかく好きで一度は乗ってみたいと思う人は早めにチェックしておきたいところだ。
 

エコドライブ

チェックポイント①:アクティブサス

G50に採用されている油圧式のアクティブサスペンションは、「高確率で壊れます(笑)」。

バネサス仕様も存在するので、見つけられればバネサスがオススメだが、VIPカーという性格上、より上級のアクティブサス仕様の流通が中心だという。

アクティブサスをチェックするには、「エンジンかけて油圧が回ると、車高がグーッと下がるんですよ。それでエンジン切ると少し上がるんですけど、その切ったときに跳ねるようにボコンと上がる車はもうそろそろリーチですね。ゆっくりシュッと上がるのはいいんですけど」。

ただし、「G50で油圧のサスが付いてる車は、ほぼほぼ壊れてるっていう認識です。それをバネに替えることもできるんですけど、構造変更にあたるので車検が通らなくなっちゃうんですよね」とのことだ。

油圧のシステムは、パワステのポンプからラジエターから全部からんでいるのも厄介なため、やはり玉は少ないものの、バネサス仕様を選んだ方がいいというのが川原さんの見解だ。
 

エコドライブ

チェックポイント②:電装系

特にGはエアコン、オーディオ、パワーウインドウといった電気まわりが弱いという。センチュリーに比べると修理頻度が高く、しかも部品がほとんど供給されないので、なんとか程度のいい中古部品を探して対応しているそうだ。

「ここは割り切って乗る方がいいかもしれませんね。店がなんとか直して納めてくれても、すぐ壊れる可能性があるので、それを許容できる心が必要かもです!」

一方、F50のプレジデントはシーマの流用ができる。しかもシーマの初期型は流通量が多いため、中古部品の入手がしやすいそうだ。
 

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レクサス LS(初代)のチェックポイント

4.6L V8エンジンを搭載する初代LSは、セルシオの直系でありながら、その性格は世界戦略車だけあって日本車離れした欧州車的なところがあるという。

「日本の高級車っていうのはとにかく静かで柔らかくて乗り心地がいいものでしたけど、LSは同じV8でも踏むと音がするし足は固い。その代わり高速でコーナリングしても踏ん張るんですよ」

センチュリー、プレジデントがショーファードリブンなのに対し、LSはドライバーズカーということなのだろう。8ATのおかげで燃費も良く、7~8km/Lは走るそうだ。ただ「ハンドルが切れないっていうのは、よくお客さんには言われますね。」
 

教習所

チェックポイント①:内装

内装のパネルやダッシュボードの樹脂にべたつきが出たり、ひびが入ったりしている個体があるという。

「同じ症状はISにもあることが多いです。たぶん使っている素材の特性なんでしょう。屋内保管されていた個体ならいいんでしょうけどね」

最終型でも10年以上たった車になるので、見て、触って確認して選ぼう。
 

教習所

チェックポイント②:コーディング

LSはしょっちゅう壊れるなんてことは少ないが、壊れたときにはコンピューター制御になっている部分が多く、ディーラーでのコーディングが必要になることがあるとのこと。

「以前ミッションが滑った車があったんですけど、普通だったら中古品を持って来て組み替えて調整して、パワステもギアボックスを替えて調整できるんですけど、LSの場合は替えるとコンピューターつないでコーディングしないと正常に動かないんですよ」

ディーラーでは、部品は新品あるいは認定リビルト品に限られるので、低価格に収めるのは難しいという。

「付き合いのあるディーラーに頼み込んでコーディングをお願いすることもあるんですけど、リユース部品だとやってもダメな場合もあるし、そうするとお金だけかかっちゃうことになる。それからちょっとエアサスコントローラー入ってると受け入れてもらえないとかね、やっぱりそのあたりはディーラーは細かいっていうかちゃんとしてるっていうかね (笑)」

購入時は念入りな動作確認をし、いざという時は予算に余裕を持つ覚悟も必要だ。
 

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レクサス LS(初代)×全国
文/竹井あきら、写真/尾形和美
竹井あきら

ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。