コロナ禍で高級車の認定中古車が富裕層に大人気【INDUSTRY EDGE】
2021/10/12
感性を震わす多くのスーパーカーを作る会社も、もちろん山あり谷ありのドラマチックな道を歩んできた。買収、経営者交代、資金不足、リコール問題。そして、現在も絶え間なく状況は変わり続けている。まさに、波乱万丈なスーパーカーメーカーを自動車ライター古賀貴司が分析。
今回は、コロナ禍や半導体不足など、様々なトラブルに見舞われた超高級車市場で人気の高まっている、中古車について解説していきたいと思う。
欲しいときにすぐ手に入れられるのが中古車
コロナウイルスは世界を翻弄したし、国によっては「ロックダウン」と厳しい措置も取られた。そんなコロナ禍もワクチン接種が進んでいる国では、ようやくトンネルの出口が見え始めている。その代表格がアメリカで、今“リベンジ・ショッピング”と呼ばれる消費の活発化が目覚ましいという。自粛生活を強いられた反動として、買い物に走るというわけだ。
特に顕著なのが高級車の購入で、どこもかしこも売れに売れまくって供給が追い付かない、という状況のようだ。ちなみに現在、北米ではロールスロイス車の納期が半年以上先。待てる人は新車をオーダーするようだが反面、メーカー系認定中古車が飛ぶように売れているという。
北米では従前、ロールスロイスのメーカー系認定中古車の登録(販売)はロールスロイス車の33%だったが、今ではなんと75%に達している。お金持ちとは面白いもので、“欲しい”と思ったらその場で手にいれたがるのは万国共通な模様。また、コロナ禍を経験して「人生一度きり」ということを強く認識した車好きな富裕層が購入を後押ししている、ともいわれている。
また、ベントレーの5月の認定中古車販売台数は1月と比較すると150%増だという。さらに、マクラーレンの認定中古車は最高記録を樹立した2020年と比較して2%増に過ぎないが、供給が追い付いていないゆえのプレミアム価格が散見される。実際、マクラーレン765LTに至っては、メーカー希望価格よりも約40%も高く流通しているそうだ。
新車オーダーの利点は自分好みに仕上げることができる、ということ。しかし、高級車の“値落ち”が激しいのはアメリカも日本も同じだ。例えばロールスロイス レイスは、アメリカでは登録しただけで2割値落ちし、5年で4割値落ちする、といわれている。
だが、メーカー系認定中古車であれば自動車メーカーが独自に設定する品質基準を満たす中古車のみが並び、新車とさほど遜色ない保証が付帯される。それでいて、新車よりも安く買えるため値落ち率も少なくなるのは日本と同じ。
唯一の弱点は、自分好みの仕様をオーダーすることはできない、ということ。裏を返せば、そこまで“こだわり”をもたなければ、手っ取り早く乗りたい車に乗れる、ということでもある。しかも新車よりも安価で。
まぁ、昔からメーカー系認定中古車の魅力は手厚い保証内容と値落ち率の低さだったのだが、コロナ禍を経てその人気に火がついたようだ。
なお、日本では某スーパーカーを新車で購入すると、納車されるまで2年弱かかる。そこで、同ブランドの営業マンは新車が納車されるまで、認定中古車を乗ることを顧客に勧めている。要は認定中古車でとりあえず某車の魅力を味わい、自分仕様の新車が到着するのを待たせる、というのだ。しかも2年弱であれば、さほど値下がりしないのでまさにWin Win。
実はこのリベンジ・ショッピング、何もアメリカだけの話ではなく、世界中で同様の兆しを見せている。地域特性や国籍にとらわれることなく、富裕層の消費活動が似通っていることはちょっと面白い。ワクチン接種が進んでいくにつれ、日本でも富裕層による今まで以上のリベンジ・ショッピングが期待されよう。