▲デビュー当時、多くの車好きが「なんだこれは!!」と驚いたオーテックザガート ステルビオが目の前に!▲デビュー当時、多くの車好きが「なんだこれは!!」と驚いたオーテックザガート ステルビオが目の前に!

バブルが生んだ究極(!?)のラグジュアリークーペ

1990年のデビュー以来、日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMCであり、中古車マニアでもあるBoseが『カーセンサーnet』を見て触手が動いたDEEPでUNDERGROUNDな中古車を実際にお店まで見に行く不定期連載! 今回はバブル絶頂期にごくわずか生産されたオーテックザガート ステルビオをチェック!!

「何年か前に自分の車の整備をお願いしていたショップで初めて見たんだけど、第一印象は『何これ??』だったからね」

▲高級国産車はもちろん、輸入車よりも高い値段で販売された▲高級国産車はもちろん、輸入車よりも高い値段で販売された

「だって『車とはこういうもの』という既成概念が少しでもあれば、理解できない部分がけっこうあるでしょう?」と、Boseさんは笑う。

その車の正式名称はオーテックザガート ステルビオ。まずはこの車がどういう存在なのか、解説しよう。

オーテックは正式名称をオーテックジャパンといい、日産自動車の特装車などを手掛ける子会社。現在でもエルグランドやセレナなどに設定されるライダーシリーズなどを製造している。

ザガートはイタリアのカロッツェリアで、アルファロメオやフェラーリなどとともに独創的なモデルを発表した。

1989年に登場したオーテックザガート ステルビオは、オーテックジャパンとザガートが共同開発した2ドアクーペだ。開発をオーテックが行い、デザインはザガートが担当した。

ベースとなったのは「あぶない刑事」で有名になった日産のF31型 レパード後期型。オーテックが大幅なエンジンチューニングとフレーム補強などを行った車体をイタリアへ運び、アルミ合金製のボディと内装をザガードの職人が手作業で組みあげたもの。生産された台数は200台と少ない。

▲レパードのエンジンをオーテックがチューニングし、最高出力は280ps、最大トルクは41.0kg-mに▲レパードのエンジンをオーテックがチューニングし、最高出力は280ps、最大トルクは41.0kg-mに

発売時の新車価格はなんと約1800万円! 同じ1989年に発売された高級車といえばトヨタ セルシオの最上級グレードが620万円、日産 スカイラインGT-R(R32)が445万円、メルセデス・ベンツのSクラスでさえ1500万円以下だったのだから、この価格がどれほどのものだったかわかるだろう。

しかも製造工程を考えるとこの価格でも黒字になったかギモンが残る。まさにバブル時代でなければ絶対に実現できなかった車だ。

まわりを何度も歩き、その形をしげしげと見つめるBoseさん。

「やっぱ一番印象的なのはこのミラーだよね。外国車といえば昔からドアミラーが一般的だったのだから、なんでこの位置に、しかもボディ内に隠すように配置するのか、ザガートの人はわけがわからなかっただろうな」

▲ステルビオの最大の特徴であるミラー。前フェンダーの中に隠れるように配置されている▲ステルビオの最大の特徴であるミラー。前フェンダーの中に隠れるように配置されている

かつて、トヨタ スープラ(70系)を取材したときに、「隣のクラスの遊び人のような存在」と評したBoseさん。では、このステルビオはどのような存在だろう。

「これを例えるなら『風の噂』だね。隣町にすげえやつがいるらしいよ。うそだろ? そんなヤツいるわけないじゃんってクラスで話してたら、噂のヤツが突然目の前に現れて『本当にいた!!』って。まさに今、そんな気分だよ(笑)」

▲ヘッドライトはS13シルビアのものが使われている▲ヘッドライトはS13シルビアのものが使われている

この未来感、SF&特撮マニアにはたまらない!

▲このまま戦隊モノに出てきそうなルックス。特撮マニアにはたまらないはず!▲このまま戦隊モノに出てきそうなルックス。特撮マニアにはたまらないはず!

オーテックジャパンは毎年オーテック車のオーナーを対象にした「AOG湘南里帰りミーティング」を開催している。歴代のオーテック車が集結するこのイベントでも、オーテックザガート ステルビオが現れると参加者がどよめき、人だかりになるという。

「これはあくまで僕の想像だけれどね。1980年代にデザイナーが思い描いた未来の車のカタチが、ステルビオだったんじゃないかな。シトロエンでもこれに近いカタチ、あったよね(1980年に発表されたコンセプトカー『カリン』)」

▲ホイールも80年代に想像した未来的な雰囲気に満ち溢れている▲ホイールも80年代に想像した未来的な雰囲気に満ち溢れている

では、オーテックザガート ステルビオは今、どんな人に勧める? と聞いたところ、しばらく考え、「SFが好きな人にピッタリだよ」と一言。

「例えば映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンは今でも熱狂的なファンがいるじゃない? SFではないけれど、三菱 スタリオンにもジャッキー・チェンの映画『キャノンボール』のファンがついている。ステルビオは何かの映画に出ていたわけじゃないけれど、この未来感は80年代までのSF好きにはたまらないと思う」

こんな話をしていたら、お邪魔した高輪自動車の小林社長がおもしろいことを教えてくれた。

「すでにカーセンサーnetを見てこのステルビオに問い合わせをいただいています。電話で話す中で『今は何に乗っているのですか?』と聞いてみたら、『ナイト2000です』と話していました」

「ナイト2000」はアメリカのSFドラマ『ナイトライダー』に登場する電子頭脳を搭載した車だ。ベースはポンテアック ファイアーバード。

「ほらね! きっとその人はファイアーバードをナイト2000仕様にカスタムしているわけでしょう。そのあたりが好きな人には間違いなく刺さるんだよ!」

▲ドアはボタンを押すと出てくるレバーを引っ張って開ける▲ドアはボタンを押すと出てくるレバーを引っ張って開ける

もうひとつ。Boseさんがこの車を勧めたい人たちがいる。それは特撮マニア。

「『宇宙船』という特撮雑誌があるんだけど、その読者には刺さると思うな。普通の人にとっては特撮って小学生が見るものっていう感じだろうけど、大人にも好きな人はたくさんいるから。特撮ドラマに出てきそうなスタイルの車にリアルに乗れるなんて、これほど幸せなことはないよ」

今回取材したオーテックザガート ステルビオは価格応談になっているが、他の物件を見ると価格帯は約200万~320万円。高年式のミニバンやSUVを選ぶことを考えれば、決して現実離れした価格ではない。

「80年代の車を買うとき、心配なのはもし壊れたときに部品があるかってこと。ステルビオは生産台数自体が少ないけれど、ベースがレパードってことは機関系の基本的なパーツはなんとかなりそうだね」

▲このZのエンブレムに憧れた人もいるはず。今ならそこまで無理しなくても手が届く価格帯にあるぞ!▲このZのエンブレムに憧れた人もいるはず。今ならそこまで無理しなくても手が届く価格帯にあるぞ!

気になる人は購入時にパーツなどのこともお店に確認してみよう。

text/高橋 満(BRIDGEMAN)
photo/山本佳代子

――Information――

日比谷野外大音楽堂公演『スチャダラパー・シングス』の開催が決定!

毎年恒例となっている野音でのライヴが今年も開催。ぜひみんなも参加を!
出演:スチャダラパー
会場:日比谷野外大音楽堂
公演日時:2018 年4 月8 日(日)
開場時間:15:30 /開演時間:16:30
料金:前売¥6,500(税込) 全席指定
チケット発売日:1月27日(土)
INFO:HOT STUFF 03-5720-9999 www.red-hot.ne.jp
*4歳以上チケット必要、3歳以下膝上鑑賞可。ただし、座席が必要な場合はチケット必要。
*雨天決行・荒天中止