▲今後の自動車のエネルギー動向を示したグラフ。2025年になってもガソリン車が圧倒的なシェアを占める点は変わらない。一方、ハイブリッドは2015年と比べて約7倍の1800万台に増える見込みだ ▲今後の自動車のエネルギー動向を示したグラフ。2025年になってもガソリン車が圧倒的なシェアを占める点は変わらない。一方、ハイブリッドは2015年と比べて約7倍の1800万台に増える見込みだ

今後の各メーカーのパワートレイン戦略はいかに

世界的に有名な調査会社2社と、某大手自動車メーカーの未来予測を用いながら、近未来の車の動向を見ていく。テーマは「車のエネルギーはどう変わっていくか」だ。

まずは、上に掲載したグラフをご覧いただきたい。全世界におけるエネルギー別の車の販売台数と、今後の推移を予測したものだ。2015年の実績(推計値)は、ガソリン車(オットーサイクル=ガソリン以外の燃料を含む)が約6860万台、ディーゼル車(ディーゼルサイクル=軽油以外の燃料を含む)が約1870万台、電気モーターだけで走るピュアEVが約51万台だった。

ハイブリッド車は、トヨタ プリウスのようなフル(ストロング)ハイブリッドとマイルドハイブリッド、それから日系ブランドに先んじて海外メーカーが力を入れ始めている、外部充電可能なプラグインハイブリッド(以下PHV)を合わせて約252万台にあがった。

では今後、これらの推移はどうなるだろうか。2020年を見ていくとピュアEVは約2倍の130万台、ハイブリッドも2.5倍以上に増えて710万台に達すると予想されている。なお、ピュアEVには、燃料電池で動くFCVも含まれている。

一方、通常の内燃機関だけに頼るガソリン車は、2020年に向かって増えるものの、その後、2025年にはやや減少するとの予測が出ている。

▲出力の小さいモーターと、容量の少ないバッテリーを加えて、必要なときだけアシストする、マイルドハイブリッドは、大幅な重量増や高額化を避けながら燃費アップが実現できる。画像のスズキ イグニスはもちろん、軽自動車にも搭載されている ▲出力の小さいモーターと、容量の少ないバッテリーを加えて、必要なときだけアシストする、マイルドハイブリッドは、大幅な重量増や高額化を避けながら燃費アップが実現できる。画像のスズキ イグニスはもちろん、軽自動車にも搭載されている
▲ある程度の距離を電気モーターだけで走れるよう、大容量バッテリーと外部充電ソケットが設けられたPHVは、今後の自動車業界で普及していくだろう。国内では、BMWが4車種に用意しており、トヨタは、先代プリウスが市販化されている ▲ある程度の距離を電気モーターだけで走れるよう、大容量バッテリーと外部充電ソケットが設けられたPHVは、今後の自動車業界で普及していくだろう。国内では、BMWが4車種に用意しており、トヨタは、先代プリウスが市販化されている

欧州で普及するハイブリッド

ハイブリッド系は欧州で急増しそうだ。ただし、フルハイブリッド信仰が強い日本と違い、マイルドハイブリッドとPHVが中心となる。

マイルドハイブリッドとは、一般的にエンジン主体で走り、必要なときだけモーターがアシストする、いわばライトなハイブリッドだ。モーター単独では走れないものの、コンポーネントが軽量&安価で済むことが特徴。スズキがソリオから実用化しているユニットがこれにあたる。

一方のPHVは、海外勢が積極的に取り組んでいる。日本国内で早くも4つのモデルを設定しているBMWを筆頭に、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェなどのドイツブランドが売り出している。他にもボルボやヒュンダイも実用化済みだ。

これにはカラクリがある。EUの規定では、ピュアEVとともにPHVも「CO2排出ゼロ」にカウントされるからだ。各社ともPHVのさらなる開発を進めていて、佳境に入っており、今後も2、3年で上級モデルのPHVは一気に増えるだろう。

▲CAFE(メーカー別燃費規制)を満たすべく、米国ではCO2の排出量ゼロのピュアEVも販売されているが、国別の販売台数で中国に追い越された。画像は日本では馴染みのない、韓国 キアのソウルEV ▲CAFE(メーカー別燃費規制)を満たすべく、米国ではCO2の排出量ゼロのピュアEVも販売されているが、国別の販売台数で中国に追い越された。画像は日本では馴染みのない、韓国 キアのソウルEV

EVは、中国で年間22万台売れるも将来性は懐疑的

PHVに対し、ピュアEVの先行きは微妙だ。2015年は中国で約22万台が販売され、米国を抜いて世界最大のEV市場となったが、米国では車が1家に1台というケースにおいてEVが選択されるケースは非常に少ない。

また、中国では、電力のおよそ75%を石炭火力発電に頼っており、「むしろガソリン車に乗った方がCO2排出は少ない」としてEVの環境に対する優しさを懐疑的に見る声もある。このように世界最大と第2位のEV市場はかなり特殊といえよう。

それでも北米で各社が少量ながらEVを販売しているのは、CAFE(メーカー別燃費規制)でCO2排出量の平均値を下げなければいけないからだ。

大きな車を売り続けるからには、その分のCO2排出量を相殺するEVやハイブリッドが必要。北米で好調ながら自前のEV技術を持っていないスバルなど、今後、対応を迫られるブランドもありそうだ。

※2016年3月29日現在における予測記事です

text/マガジンX編集部
photo/マガジンX編集部