アルピナ C2 2.5|伊達セレクション
写真上は86年登場のアルピナ C2 2.5。初期型であるC1 1/1のエンジンを2.5Lに拡大した日本市場専用モデルだ。写真下は87年登場のB6 2.7。後期325iをベースに、アルピナがチューンした2.7Lの直列6気筒を搭載。どちらもウルトラシルキーな回転感覚を誇るエンジンであり、また、しなやかだが軽快な足回りのセッティングもアルピナの魅力と言える。
アルピナ B6 3.5|伊達セレクション
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“サイクル理論”により今、2代目3シリーズに再びスポットライトが

お若い方はご存じないだろうが、80年代末期に「六本木のカローラ」という言葉があった。当時の超好景気を背景に、雨後のタケノコのごとく大量に街に現れた2代目BMW3シリーズ(E30型)に対する俗称である。

その軽い語感からわかるとおり、当時、E30型BMW3シリーズは少々馬鹿にされがちな車であった。車の出来ウンヌンではなく、あまりにも多くの若衆が軽いノリでそれを乗り回したことで、「バカな若いのが乗る車」的なイメージが付いてしまったのだ。繰り返し言うが、車の出来ウンヌンの問題ではなく。

しかし今、中古車サイクル理論(=時代がひと回りすると、中途半端に古かったものが古くなりきって、逆に味わいが出てくること)に基づき、たまに街で見かけるE30型BMW3シリーズから得も言われぬ魅力が発せられていることに、一部の自動車愛好家はすでに気づいているだろう。

現役当時はバカにされがちなE30ではあったが、フツーに考えてかなり良い車である。それを知っている一部の業者は、不遇の時代にあっても継続してE30を仕入れ、整備し、なかにはATを5MTに換装する業者さんも結構いたりして、地味に盛り上がっていた。そして現在も地味に盛り上がっている。ということで、サイクル理論を背景に今、E30を買うのはなかなかのオススメである。

しかし筆者は、さらに一歩進んだ“アドバンストコース”を推奨したい。「いっそアルピナはどうですか?」ということだ。

「究極の3シリーズ」も今や100万円台です

ご承知のとおりアルピナとは、BMW車をベースとした独自モデルを製造しているドイツの自動車メーカーだ。多くの部分を手作業によっているため、年間生産台数はわずか800台前後。職人が磨き込んだピストンの重量公差(許容される最大寸法と最小寸法との差)はわずか1/1000g。ちなみに一般的な車のピスト
ン重量公差は5~10gほどにはなるのが普通だ。それゆえ、普通のBMWのエンジンが「普通のシルクのように回る」のだとしたら、アルピナのそれは「王室御用達シルクのように回る」とでも言えばいいだろうか。とにかく、そういった車だ。

で、E30型BMW3シリーズをベースとするアルピナ車は今、モノにもよるがおおむね100万円台で入手可能なのだ。

筆者は個人的に所有していたE46型アルピナB3SのほかにE36型アルピナ各種、そしてE30型アルピナ各種に試乗した経験を持つが、「王室御用達シルク感と獰猛さの共存」という点では、E30型アルピナこそがベストであったと思う。以降のアルピナ3シリーズも素晴らしいが、どちらかというと王室御用達感のほうが勝っていると個人的には感じた。そしてもちろん、「中途半端ではない、クラシカルになりきった感」においてもE30がベストであることは言うまでもない。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
E30型アルピナ、今こそどうでしょう!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE