▲2014年9月2日現在、カーセンサーnetに掲載されている24台のタイプ993(6MT)のうち6台が「応談」だ ▲2014年9月2日現在、カーセンサーnetに掲載されている24台のタイプ993(6MT)のうち6台が「応談」だ

「価格応談」の車は客の顔色で価格が決まる?

空冷ポルシェ911、特にMT車の相場高騰が止まらない。9月2日現在、タイプ964カレラ2/4(5MT)の中心的な価格はざっくり500万円前後といったところで、2年ほど前と比べて200万円近くは上がっている計算だ。その次に販売されたタイプ993カレラの6MT車は600万から800万円。いやはやなんとも、である。しかし今、本当の「中心的価格」は実はそれら価格帯ではない。もっとも目につくのは「価格応談」というやつなのだ。

具体的には本稿執筆時点で、タイプ964(5MT)のカーセンサーnet掲載台数36台のうち11台が「応談」で、タイプ993(6MT)では24台中6台が「応談」。市場に流通する空冷ポルシェ911の3割近くがプライスを表示せず「価格応談」になっているという未曽有の事態が進行中なのである。

こうなってくると多くの人は「そもそも“価格応談”って何なんだ? いざ買いに行くと、こっちの顔色とかフトコロ具合を見ながら有り金の上限まで吹っかけられるのか?」と不安に思うことだろう。

「応談」という不穏な文字面からそういった不安を覚えることは理解できる。しかし結論から申し上げると、そういった心配はほとんど無用だ。なかには例外もある可能性を否定はできないが、基本的には、たいていの中古車ショップは客の顔色を見て吹っかけるために価格応談とするのではなく、様々な真面目な理由から「価格応談」と表示している。以下、その「様々な理由」をご説明しよう。

▲希少なフルノーマルのカレラ2/4や964型ターボ、同RSも最近は「応談」となっている場合が多い ▲希少なフルノーマルのカレラ2/4や964型ターボ、同RSも最近は「応談」となっている場合が多い

まず多いのが「ひやかし防止」だ。店主の気質や性格にもよるが、世の中には「真剣に検討してるお客にゃとことん対応させてもらうけど、ハンパな冷やかしはゴメンだよ!」と考える中古車店主もそれなりに多い。そういった店主が希少な物件をカーセンサーnetなどに掲載する際、「買う気は全然ないけど興味本位で問い合わせてみた」という客をあらかじめ排除し、買う・買わないは別として真剣な客だけとやりとりするために「価格応談」とするケースは比較的多い。この場合、当然あなたは(もしもあなたが冷やかしムード満点でさえなければ)店主があらかじめ想定している売価を、店内で普通に知ることができるだろう。

もう一つのパターンが「超絶希少車」だ。世の中だいたいの車には「おおむねの相場」といえる価格があるわけだが、なかには「ほとんど流通していないため明確な“相場”がない」というモデルもある。そういった場合に「価格応談」としたがる店主は多い。筆者は、そんな場合でもフツーに車両価格を掲載すればいんじゃないの? と思っているため、正直この理屈はよくわからない。が、とにかくそういったケースは多いのが現実だ。この場合でも、筆者が調査した限りでは「客の顔色を見て売価を決める」ということは基本的にはないようだ。

最後のパターンは…そしてこれが昨今の空冷911の応談多発問題に当てはまるのだが、「イメージの問題&要説明だから」ということ。例えばの話、500万円前後であることが多い昨今のタイプ964のなかに、800万円ぐらいで売るのがふさわしい(と店主が考える)物件があったとする。しかし、それをそのまま「800万円」として掲出すると、それを見たユーザーは「高いな…」のひと言でスルーしてしまうことが多い。実際店頭に行って店主の細かい説明を聞けば、「なるほど! こりゃ800万円でも安いぐらいですね!」となる可能性があるにも関わらず、だ。そういった場合、店主はまずは「価格応談」として、それでも「この物件は何か匂う」と鼻を利かせて本気で店にやってきたお客に対し、本気で説明する。そしてユーザーが納得すれば無事販売する……という流れだ。全部が全部そうとは限らないが、昨今の空冷911で「応談」となっているのはたいていこのパターンと思っていいだろう。

▲非常に希少なタイプ964のスピードスター。もしもこれが流通するときは十中八九「応談」となるだろう ▲非常に希少なタイプ964のスピードスター。もしもこれが流通するときは十中八九「応談」となるだろう
▲さらに希少なタイプ930のスピードスター。これが今の時期、市場に出る場合は99.99%「応談」になる? ▲さらに希少なタイプ930のスピードスター。これが今の時期、市場に出る場合は99.99%「応談」になる?

以上3パターンが「応談」発生のメカニズムだが、すべてに共通しているのは「お客側がその物件に対して(最終的に買う・買わないは別として)本当に興味があるか否か」を店側が見極めるとためのツールとして、「応談」という表示が使われている…ということだ。決してぼったくるための言葉では基本的にはないので、まぁご安心していただきたい。

あとは下記物件リンクにある珠玉の(?)応談空冷911軍団を見て、あなたがどう思うかだ。「いくらかわかんないし、たぶん安くはないんだろうけど、どうしてもこの911が見てみたい! で、もしも状態が良いようなら買いたいかも!」と本気で思うのであれば、特にビビることなくお店に連絡を入れ、現車を見に行ってみることだ。多くの場合、別に取って食われやしないだろう。ということで、今回のわたくしからのオススメは(や、オススメというのともちょっと違うが)、「価格応談」の空冷ポルシェ911だ。

text/伊達軍曹