カーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2012年9月11日に発見したのがアウディ RS2アバントです。なんとこの車、アウディとポルシェの合作です。

90年代前半、ポルシェは経営難に見舞われおり、地元州政府がM・ベンツとのコラボを後押し、91年に500Eが誕生しました。世界的に人気を博し気を良くしたポルシェは次にアウディとのコラボも画策。その結果、94年に生まれた車なのです。

この話には裏があり、ポルシェがM・ベンツへ事前の相談なくこの話を進めたため両者の関係は悪化。ベンツは93年にポルシェの工場から500Eの生産を引き揚げたとか。単なる生産の効率化が狙いだったのかもしれませんが…。とにかく、その結果、それまで500Eを生産していたラインでアウディ RS2アバントは生産されることになりました。

最近でこそスポーツカー並みの走行性能をもつステーションワゴンは珍しくありませんが、アウディ RS2アバントはそんなカテゴリーをポルシェとともに切り拓いた1台と言ってイイでしょう。

エンジンは2.2L直5ターボで最高出力315馬力、6速MTを組み合わせ、アウディのクワトロシステムが路面をガッシリつかみ、0→100km/hまでの加速は4.8秒と現代の水準でも立派に“スポーツカー”しています。

いやっ、ぶっちゃけデビュー当時は最速、最強、バケモノと呼んでも差し支えないようなステーションワゴンでした。さらに0→30mph(48km/h)までの加速が当時のF1マシンよりも速かった、という逸話が残っています。なお、最高速度は262km/hだそうです。

エンジンルームを覗きこむと「Powered by PORSCHE」のロゴがエンジン上部に刻まれています。たとえ経営難に陥っていても、ポルシェブランドの強さはあったんですね(笑)。

余談ですがエンジンルームのレイアウトは、あのアウディ・クワトロに似ています。アウディ80アバントをベースにあからさまにスポーティなルックスに仕上げるのではなく、なんとなく引き締まった印象を与えているところが、まさに当時のドイツ特有の「羊の皮をかぶった狼」。

フロントバンパーに採用された993ウィンカーとフォグランプ、964のサイドミラーにカップホイールなどが功を奏しているのでしょう。ブレーキだってポルシェのロゴ入りのブレンボを装着しています。

歴代のアウディRSモデルを語る上で欠かせない一台ですし、ポルシェとの直接的なコラボも最初で最後だと思います。自動車史の1ページに残る名車を手にできるだけでなく、差別化を図るにもぴったり。20年近く前のネオクラシックカーでありながら現代のスポーツカーと同等に走れるだけの底力も持っています。こういうモデルは“一生モノ”として付き合っていけるものです。

Text/古賀貴司(自動車王国)

アウディ RS2アバント
本体価格(税込)298.0万円
支払総額(税込) 317.6万円
走行距離3.6万km
年式1995(H7)年式
車検 車検整備別
整備法定整備別
保証保証付
地域大阪