スバル SVX(1989年)→アルシオーネSVX (1991年)

1989年の東京モーターショーで、スバルのコンセプトカー「SVX」がお披露目された。「風に研磨されたオニキス」をモチーフとして造形されたというキャノピーをはじめ、徹底的に「走り」にこだわったというデザインは、当時ブースで見ていた多くの人を魅了した。そして1991年、コンセプトカーとほとんど変わらぬ姿で、「アルシオーネ SVX」として発売が開始されたのであった。

スバル SVXコンセプト | 日刊カーセンサー → | 日刊カーセンサースバル SVX| 日刊カーセンサー

市販モデルとほとんど変わらない状態のコンセプトモデル。いまでいう「GTスポイラー」のようなリアスポイラーも、当時は大流行りであった

グランド・スポーティ・スペシャリティSVX

SVXコンセプト インテリア | 日刊カーセンサー開発期間はバブル経済真っただ中、ライバル各社が大排気量の大型スポーティクーペをラインナップしており、SVXも時流にのる形で、全長4625×全幅1770×全高1300mmというサイズだった。塔載エンジンも3.3Lの水平対向6気筒エンジン。エクステリアデザインはジョルジェット・ジウジアーロの手によるものだ。

しかし時すでにバブル経済が終焉を迎え、大型スポーティクーペ市場はみるみるうちに冷え込み、ライバル車のような「おいしい思い」はできなかった。

走りに徹していた2代目アルシオーネSVX

初代アルシオーネ | 日刊カーセンサー 右の写真は、SVXの原型となった、1985年の初代「アルシオーネ」だ。スバル初のスポーツクーペとなる「アルシオーネ」には、スバル自慢の1.8Lの水平対向4気筒エンジンに4WDシステムを採用。「ガングリップ」形状のステアリングが印象的であった。

全長4510×全幅1690×全高1335mm。1987年には2.7Lの水平対向6気筒エンジンバージョンを追加し、4WDシステムも刷新され、巷の車オタク少年の間では「ポルシェと同じスペック」などと言われていた。洗練さに欠ける初代に比べ、2代目SVXには流麗さが加味された印象がある。見た目の薄っぺらなエクステリアは空気抵抗に効果があり、Cd値(空気抵抗係数)0.29達成を声高に叫んでいた。

また、車名の由来「アルシオーネ」は、プレアデス星団のなかでおうし座の名前にちなんでおり、「SVX」は、「スバル・ビークルX」の略となる。個人的な好みもあろうが、より「アルシオーネ」の名にふさわしいのは、2代目ではないだろうか。

SVXデビューの頃、この業界に筆者は入った。当時は「セルシオVSシーマ」とか、「ソアラVSコスモ」など、大排気量車の対決試乗企画がバカ受けしていた時代。あるとき、ソアラとコスモ、GTOそしてSVXを借り出した試乗企画があった。筆者が借りたのは、こげ茶系のボディカラーの最上級グレード。取材を終えた帰路、SVXで都内の大渋滞にはまった時のこと。ふとバックミラーを見ると、後ろのトヨエーストラックに乗っていた3人のガテン系お兄さんが、SVXを指差して大笑いしていた。デザインがかなり凝っていたので、「なんか珍しい面白い車がいる」という具合で笑っていたようだ。

実際、そのユニークな見た目ゆえか販売は苦戦。とはいっても、技術が売りのスバル車。しかもブランドのフラッグシップとなる車なので、ハイテクデバイスの多用もあり、走りは満足のいくものであったことを覚えている。スズキとダイハツ以外のメーカーが6気筒(もしくはそれ以上)で3Lオーバーの2ドアクーペをラインナップしていた、いまから見れば信じられない時代の話である。