スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

記憶喪失モノとしては映画史上1、2を争うほどの名作!

ボーン・アイデンティティー|映画の名車
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DVD『ボーン・アイデンティティー』発売中 2002年・米 監督=ダグ・リーマン 出演: マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、クライヴ・オーウェン、ブライアン・コックス、アドウェール・アキノエ・アグバエほか 販売元: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 1,800(税込)
「記憶喪失」は、映画やドラマのシナリオにおいて簡単に話を膨らますことのできるお手軽なキーワードの一つだ。特に近年は何かと乱用され、都合が悪くなると「記憶が…」と登場人物が頭を抱えるベタベタな展開に辟易させられることも多い。そんな手垢まみれのこの素材を極上の料理に仕立て上げたのが、『ボーン・アイデンティティー』『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』と続く、ご存じボーン3部作だ。

なかでも第1作目の『ボーン・アイデンティティー』は、記憶喪失モノとして映画史上1、2を争うほどの秀作。大海原にプカプカ浮かぶ男(マット・デイモン)がイタリアの漁船に発見され引き上げられる。男は銃弾を受けており、瀕死の状態。なんとか回復したものの、自分の正体が皆目見当がつかない。手がかりは尻に埋め込まれていたカプセルで判明したチューリッヒ相互銀行の貸金庫番号だけ。上陸した彼はさっそくスイスに向かい、貸金庫を開けてみると、そこには6冊のパスポートとピストル、無造作にひっくるめられた札束、ジェイソン・ボーンという名前とパリにある自宅の住所だった。

ここからはもう怒涛の展開。銀行を出たボーンを何者かが躍起になって追いかけてくる。その魔の手をワケもわからぬまま振り払っていくのだ。ボーンはアメリカ大使館で出会ったマリー(フランカ・ポテンテ)の赤いローバー ミニに、札束をちらつかせて同乗させてもらう。2人はボーンの自宅があるパリへ無事到着するも、そこには殺し屋が待ち受けていた。どうにか撃退に成功したものの、赤いローバー ミニはパリの警察からマークされており、今度はボーンがハンドルを握って決死の逃亡劇を繰り広げる!!

追ってくるのはシトロエン ZXをベースにした数台のポリスカー。「タイヤの空気圧がバラバラで」「右に寄っていく」オンボロのクラシックカーでは勝ち目はない。それでもボーンは超絶テクニックで歩道や階段をモノともせず、パリの街を縦横無尽に駆け抜けていく。ミニならではの機動力を生かす展開は、以前に紹介した『ミニミニ大作戦』でもフィーチャーされていたが、本作の場合は旧型なのがポイント。圧倒的にポテンシャルの低いマシンで、高級車を翻弄するカーチェイスは、続編の2作品にも継承されることになる。

命からがら逃げ切った2人の結末は、映画をご覧いただきたい。ボーンがなぜ記憶を失っているのか、なぜ武術や運転テクニックに長けているのか、一連の謎についても膝を打つように納得できるはずだ。日本では「ジミーちゃん」などとアダ名をつけられ、パッとしない印象もあったマット・デイモンも、ジェイソン・ボーンという当たり役を得て、一段上のステージへ駆け上がった。絶品のスパイアクションにして、記憶喪失モノの最高峰。シリーズ3作で一応完結とのことだが、まだまだ続編にも期待したい。

映画に登場する車たち

ローバー ミニ

放浪癖のあるヒロイン、マリーが乗っていたのは赤いローバー ミニ。偉大なる英国の大衆車ミニについては、もはや説明不要だろう。マリーの所有車ではなく、おそらく友人に借りているだけのこのクラシック ミニ。古いだけでなく、ほとんど手入れをしていないため、普通に走っていると右に寄っていってしまう(タイヤの空気圧がバラバラなため)。それでもボーンは手足のように乗りこなし、ポリスカーや白バイから見事逃げ切ってしまうのだ。

シトロエン ZX

ゴルフをライバルに見据えたフランスのカローラともいうべき大衆車。日本でも隠れた名車として愛されたが、すでに1998年に販売が終了しており、良質なタマが少なくなっている。劇中ではボーンとマリーが乗る赤いローバー ミニを発見したパリの警察が、あの独特のサイレンを鳴らしながら白いZXのポリスカーで追跡する。ZXもかなりコンパクトだが、ミニはさらに小さく、普通車では進入不可能な路地に逃げ込まれ、立ち往生してしまう…。
Text/伊熊恒介