車両本体価格755万円のものも! スチャダラパーBoseがレパードの専門店に突撃!
2016/11/20
エンジンだけで数百万円! マニアも納得する本気のレストア作業
日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseが中古車情報誌『カーセンサー』にてお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれないDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!
編集部ゆきだるま(以下、ゆきだるま):Boseさん、今回お邪魔するのはどんなお店なんですか?
Bose:カーセンサーnetで見つけたお店なんだけどさ。なんていうかこう……よくわからないんだよ。レパードの専門店なんだけど、売っている中古車が600万円、700万円というものなんだ。
ゆきだるま:700万円!! レパードって『あぶない刑事』で人気のあった車ですよね。私は平成生まれなのでリアルタイムではテレビドラマを見ていないですが、今年の頭に映画が公開されて話題になっていたから知っていますよ。でも……レパードってそんなに高いんですか??
Bose:他のお店に置いてある中古車はフタケタ万円か、高くても100万円台だよ。今日のお店だけずば抜けて高いんだ。
ゆきだるま:なんか危険なにおいがしませんか……ちょっと怖いです。
統括工場長・渡辺明彦さん(以下、渡辺さん):あはは。そんなに怖がらないでください(笑)。うちがこういう値段でレパードを販売しているのには理由があるんですよ。
Bose:今日はよろしくお願いします! さっそくなんですが、600万円台、700万円台のレパードってどういうことですか?
渡辺さん:当店はレパードを単に仕入れて販売するのではなく、好きな方が満足できるレベルまで徹底的に仕上げています。600万円台、700万円台のものはコンクールコンディションにまで持っていっているやつですね。ボディやエンジンをレストアして、内装もすべて張り替えたり。
Bose:レストアを施すと一気にそこまで高くなるものなんですか?
渡辺さん:単なるレストアならそこまでしないでしょう。でもうちは先ほども言ったように、「マニアの方が満足できるレベル」までやっています。例えばオールペンをするとき、普通はガラスやモールをマスキングして塗装します。なぜなら古い車なので外すときに壊れてしまったら代わりのパーツがないんですよ。でもそのやり方だとどうしても塗れない部分が出てきます。うちでは特別な技術を持った職人がガラスやモールをすべて外してドンガラの状態で塗ります。だから塗れない部分がない。でもこのやり方だと費用はかなりかかってしまいます。
Bose:確かに本物のマニアだと色が違う部分があったら許せないだろうな。
渡辺さん:エンジンもフルオーバーホール。ピストンやピストンリングなどは新品にします。ただしレパード用のオリジナルパーツはほとんど残っていないので、日産純正の部品から使えるものを探して加工を施したうえで組み込んでいく。そのうえでエンジンに結晶塗装を施して、新車時の輝きを取り戻しているんですよ。
Bose:めちゃめちゃ手間をかけているんだ。だいたい1台あたりどのくらいの時間がかかるものなんですか?
渡辺さん:早くて数ヵ月。エンジンだけでも最低1ヵ月はかかりますね。でもパーツが見つからなければ探すのに数ヵ月かかってしまいますし、どのくらいの期間で仕上がるというのはお約束できないのが正直なところです。金額も結晶塗装まで施すとエンジンだけで数百万円かかってしまいます。ボディなども同じくらいかかります。
Bose:だから仕上がった中古車は600万円台とか700万円台の値が付いちゃうんだ。しかも作業にそれだけの時間がかかるということは仕上げられるのは年に数台。普通の車屋さんや整備工場とはまったく違うやり方なんだな。
渡辺さん:せっかくだから仕上げる前と仕上がった後のエンジンを見比べてみますか?
Bose:見たい見たい。いったいどこまで違うんだろう。
渡辺さん:これが手を施す前のエンジン。F31型レパードがデビューしたのは1986年2月なので今から30年以上前です。それだけ使っていればこういうヤレ方をしていても不思議じゃないですよね。
Bose:僕が乗っているゴルフ2のエンジンだってこういう感じだよ。これが当たり前だと思っているからなんとも思わなかったです。
渡辺さん:こちらが作業が終わったものです。どうですか?
Bose:うわっ、何これ!!!!! どこかから新品のエンジンを持ってきて載せ替えたんじゃないの??
渡辺さん:違います(笑)。もともとのエンジンをフルオーバーホールしたんですよ。ね、全然違うでしょう。
Bose:違うも何も、まったく使われていない感じじゃないですか。これをマニアが見たら、欲しいって思うのは当然だよ。
渡辺さん:走りも全然違いますよ。車は機械ですから、長く使い続けるとだんだんとパワーが落ちてきます。でも普通の人はずっと乗り続けているからそれを体感できません。でもこうやって仕上げると昔のパワーが甦るので、何よりオーナーさんが驚きますよ。「自分の車はこんなにすごかったのか」って。
Bose:しかしすごい世界だね。こちらのお店はもともとレパードマニアに向けた車を販売していたんですか?
渡辺さん:私が入社する前は別の場所で普通に中古車や中古バイクを販売していました。そのときにレパードが安く入ってきたのですが、たまたま高く売れたそうです。それで社長がレパードはおもしろいんじゃないかと思った。もう20年以上前の話です。
Bose:20年以上前といったら、ハイソカーの人気がまだ高かった頃ですね。でもF31レパードの希少性はそこまで高くなっていない。それが時が経って旧車ブームが到来して状況が変わった。
渡辺さん:流通台数が激減していますし、それをいい状態で所有したいと考えたらいろいろと手を加えないといけない。うちにもたまに「昔憧れていたから予算が合えば欲しい」というお客さんが迷い込んでくることがあります。そういう人はレパードが安かった、それこそ50万円とかで乗れた頃と同じ感覚で来店するんです。で、うちの車の値段を見て飛びあがる。「なんで30年も前の車がこんなに高いんだ!」ってね。うちとしては時代が変わったとしか説明のしようがありません。
Bose:そしてお店も時代の変化に合わせて、マニアが求めるものを生み出していく。すごいよね。話の中身が中古車屋さんというよりも骨董品屋さんの世界に近いんだよね。
ゆきだるま:Boseさん、カーセンサーに出ていた600万円や700万円の車も見せてもらいませんか?
Bose:そうだね。僕も見たいよ。
渡辺さん:あちらの倉庫にあります。ご案内しましょう。
お宝が眠る倉庫に潜入! そこには目を疑う光景が……
Bose:うわー、何これ。すごい光景だな。変な言い方だけれど、流通台数が少ないレパードだから倉庫にも数台が置いてあるだけかと思っていたけれど……。ここには何台くらいあるんですか?
渡辺さん:現在は50台くらいですかね。あとは板金工場に10台くらい、そして部品取りの車が10台くらいでしょうか。
Bose:文字どおり日本中のレパードがここに集結しているって感じだよ。
渡辺さん:さすがにそれはオーバーですが(笑)、専門にやっているのはうちだけですし在庫は一番多いですね。レパードはオーナー車がけっこうあるんですよ。大切に乗っていて絶対手放さないという方が多いんです。
Bose:ほんとすごい世界だよ。
渡辺さん:この車はカーセンサーに本体価格642万円で掲載しているもので、前期型の2.0 XS-II グランドセレクションになります。一昨年に行われた旧車ショーに出品したものです。
Bose:すげえ……。ピカピカとかそういうレベルのものじゃないじゃん。30年近く前に作られて10万km近く走ったなんて思えないよ。ちなみにこのグレードで新車時の価格はいくらくらいなんだろう。
渡辺さん:これで320万円とかですね。
Bose:物価が違うけれど、30年経って2倍の値段になるんだ。すごいことだよ。
(倉庫の奥の方へ)
渡辺さん:これは前期型3.0アルティマで、本体価格755万円の値を付けています。『あぶない刑事』で使われたものと同じ、ゴールドツートンかつサンルーフ付きなので人気があるんです。
Bose:これもすごいよね。贅沢な趣味だなあ。ある意味、フェラーリとかを買うより贅沢かも。
ゆきだるま:倉庫を見させてもらうと100万円台の車もあるんですね。
渡辺さん:それは2Lモデルでまだ仕上げる前のものですね。販売する際はそこからどのように手を加えていくか、お客さんと相談します。
ゆきだるま:この状態では販売しないんですか?
渡辺さん:しないことはないですが、それだとうちで買う意味がないでしょう。たまに「車検に通ればいい」という方が来ることもあります。でもレパードは古い車だけにそういう状態で販売すると数ヵ月で壊れて再生不能ということもあるんです。うちはそういうことはしたくなくて。
Bose:話を聞けば聞くほど奥深くてマニアックな世界だよ。後編ではそんなレパードにどんな人が乗っているのか、どういうふうに楽しんでいるかを聞いてみよう。お楽しみに!
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