▲鮮やかな赤いボディがイタリア車っぽい雰囲気! 1992年デビューのマツダ ユーノス500の美しさは世界を驚かせました ▲鮮やかな赤いボディがイタリア車っぽい雰囲気! 1992年デビューのマツダ ユーノス500の美しさは世界を驚かせました

90年代初頭にこんな美しいセダンがあったなんて!

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseが中古車情報誌『カーセンサー』にてお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれなかったDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!

今回は日産チェリーアイコウ販売にお邪魔した記事(関連リンク参照)の後編です。

編集部ペリー(以下、ペリー):今回、Boseさんは1992年にデビューしたマツダ ユーノス500をチョイスしました。三菱 ギャランΣや日産 ローレル、トヨタ ソアラなど面白い車は他にもたくさんあったのに、なんでこれを選んだんです?

Bose:お店に足を運ぶ前までは僕も、今じゃ見なくなった四角い車を取り上げようと思っていたんだよね。まさに僕の“ツボ”だし、80年代~90年代初頭の車を好きな人が求めていることでもあるからね。

ペリー:「四角くてカワイイ!」と、そのあたりに飛びついちゃう女の子も意外に多いんですよ。

Bose:ちょうど90年代初頭って車が直線的なデザインから流線形に変化していったころだと思うの。その分、デザインの過渡期というか、方向性が定まっていないような気がしていてあんまり魅力を感じていなかったんだよね。

ペリー:今では流線形でカッコイイの、いっぱいありますけれどね。

Bose:でも店頭でユーノス500を見たときにビックリした。「この時代にこんなにデザインにこだわったモデルがあったなんて!」ってね。しかも今の時代とは違う、独特のヌメりがあるんだよ。この時代でしか味わえない曲線美だなって。

ペリー:Boseさんってジョルジェット・ジウジアーロが大好きじゃないですか。

Bose:好きだねえ。フィアット 初代パンダやいすゞ 117クーペ、ゴルフに乗ったのもジウジアーロデザインだからだもん。

ペリー:前回もお伝えしましたが、ユーノス500ってジウジアーロが当時「世界で最も美しい小型サルーン」と称したといわれているんですよ。

Bose:そうなんだ。やっぱ僕の感性はジウジアーロの方向を向いているのかも(笑)。でも恥ずかしい話、僕はユーノス500の存在を知らなかった。当時、かなり話題になったモデルなの?

ペリー:デザインの美しさから車好きの間では話題になりましたが、商業的に成功したモデルとは言えないでしょうね。現在もマニアがいて中古車がたくさん残っているということもありません。取材時点でカーセンサーnetに掲載されていた中古車は今回見た1台だけでしたから。

Bose:そうだよね。ここからはおじゃました日産チェリーアイコウ販売の高橋社長にも話を聞いてみよう!

▲「ルーフからおしりにかけてのラインがたまらなく色っぽいよね」とBoseさん。どちらかというと流線形の車に対してアンチな立場でしたが、ユーノス500には参っていました ▲「ルーフからおしりにかけてのラインがたまらなく色っぽいよね」とBoseさん。どちらかというと流線形の車に対してアンチな立場でしたが、ユーノス500には参っていました

“普通の古い車”はパーツ探しに苦労するかも

高橋社長:うちはMTを中心に王道とは違う中古車を積極的に扱っているんですが、Boseさんは面白いところに目を付けましたね。

Bose:僕はまずユーノス500のデザインにヤラれちゃったんですが、今でも引き合いはあります?

高橋社長:問い合わせ殺到! の人気モデルとは違いますが、電話やメールは入りますよ。数は少ないけれどこの車が好きだった人が全国にいるという印象ですね。

Bose:実は僕、今回の取材で初めてユーノス500を知ったんです。ボディが赤だからっていうのがあるかもしれないけれど、雰囲気がアルファロメオに似ていて、メチャメチャカッコイイですよね。とくに顔つきやリアのラインが156にそっくりだなって。

高橋社長:イタ車っぽいというのはこの車にとって最高の褒め言葉だと思いますよ。でもBoseさん、登場したのはアルファ156よりユーノス500の方が先です(笑)。

Bose:そうか。ということは、もしかしたら156がこの車の影響を受けたのかもしれないね。今、マツダは「魂動(こどう)」というデザインコンセプトを打ち出しているけれど、その流れはこの時代から始まっていたんだって感じが伝わってくるもの。マツダのデザインって昔から時代の先を行っていたんだな。内装もいいですよ。きっとこのときはマツダもユーノスの展開に夢があったんだろうな。しかもこの物件は驚くほどキレイ。前のオーナーが大切に乗っていたのが伝わってくるもの。愛を感じる。

高橋社長:もちろん私たちでクリーニングをしてありますが、シートやステアリングにヤレが全然ないですからね。これは平成4年(1992年)式ですからデビュー年に製造されたもの。とてもそう見えないでしょう。

Bose:これは僕の想像だけど、きっと前オーナーは新車からずっと「土足厳禁」で乗ってたんじゃないかと思う(笑)。だって普通に使っていたら運転席ドアのところに靴の擦り跡が付くものじゃない。それが一切ないから。ところでユーノス500は数が少ないじゃないですか。メチャメチャ古いモデルというわけではないけれど、乗るうえで注意しておいた方がいいことってあるんですか?

高橋社長:デザインが洗練されているので古さを感じませんが、デビューが1992年ということは、なんだかんだで25年近く前のモデルです。当然走行距離を走ったものが多くなるし、経年劣化しているパーツも出てくる。それなりに整備は必要になることは頭に入れておいた方がいいでしょうね。

Bose:僕らが「今夜はブギー・バック」をリリースしたのが1994年。それより前になるんだもんね。

高橋社長:それでここからがとても重要ですが、この年代の車はメーカーからのパーツ供給が終わっている可能性が高いことを覚えておいてほしいですね。シルビアや180SXなどそれなりに流通台数が残っていて乗っている人も多い車は比較的部品を手に入れるのは容易なんですが、普通の車は部品を探すのが案外大変だったりします。

Bose:たしかにそうだよね。中古車自体が全国で数台しかなかったりする車だと、廃車になって部品取り用にしている車もないだろうし……。

高橋社長:カーセンサーnetの物件情報にも書きましたが、このユーノス500はエンジン始動時にタペット音がします。ただ、それを直そうにも部品が見つからないんですよ。エンジンが温まると音は消えるので当面は問題ないだろうと判断しましたが。

Bose:乗る人はそれなりに覚悟が必要だね。

高橋社長:この時代の車をいろいろ扱ってきた私の印象ですが、マツダと三菱車はとくに部品を探すのが大変です。そういう事情を理解してもらったうえで「それでも好きだから」という人に乗ってほしいですね。

Bose:1960年代~70年代の輸入車だとパーツが見つからなくて数ヵ月~1年くらいガレージに入るという話を聞くけれど、80年代~90年代の国産車もその域に入ってきたものが出てきているんだな。

高橋社長:もっとも今はSNSなどでファンが交流し、パーツ情報を交換したりもしています。以前に比べたら格段に探しやすくはなっていますよ。

▲このユーノス500は5MT車。スポーツカーと違い手荒く乗られている可能性は低いので、距離を走っていても状態がいいものが見つかるかもしれないですよ! ▲このユーノス500は5MT車。スポーツカーと違い手荒く乗られている可能性は低いので、距離を走っていても状態がいいものが見つかるかもしれないですよ!

「社長の愛車は?」と尋ね、ガレージから出てきたのは……!

Bose:ところで社長は少し古めのマニュアル車にこだわっているじゃないですか。それはなぜなんですか?

高橋社長:MT車が欲しいという人が一定数いるからです。今はほとんどの新車がATやCVTなどの2ペダルでしょう。でもいつの世もMT車に乗りたい人はいるものです。うちは早い時期からMT中心でやっていたけれど、最近は同じような形態のお店が増えてきちゃいましたね(笑)。

Bose:僕なんかはカーセンサーnetを見るとき、最初に“MT”で検索するの。きっと僕世代のおじさんでもう一度MTに乗りたいっていう人が多いんだろうな。あとは走り屋とか?

高橋社長:たしかにそういう人もいますが、案外多いのは免許取り立ての若い子なんです。AT限定ではない免許を取って、「MTならなんでもいい!」とうちに来る子、とても多いですよ。彼らにとって大切なのはMTであること。一方でシルビアや180SXのような走り屋やおじさんが好むモデルは数が少なくなって相場が上がってしまい若い子には手が出せない。その結果、うちには珍しい車のMT車が多くなったんです。ただ最近はそういう子に乗ってほしいMT車も手に入りづらくなっているんですよ。

Bose:分かるなあ。僕も国産で「これ!」というのが見つからなくて、80年代の輸入車に乗ったりしているから。

高橋社長:考え方はいろいろあるけれど、私は輸入車は扱っていないんです。とくにこの時代は国産車の方が信頼性が高いのでね。

Bose:若い子のために珍しいMTを仕入れて、運転を楽しんでもらう。そんな社長は今、何に乗っているんです?

高橋社長:私の車? いちおう古い輸入車で、あそこのガレージに入っているんだけど……。

Bose:輸入車を扱わない社長の愛車が、古い輸入車。せっかくだから見せてくださいよ。…………って、出たー!!!!!! これ、デトマソ パンテーラじゃん!!! 何を隠し持っているんですかっ!!! それに奥にあるのはフェアレディZ!!!

高橋社長:若い頃にZでドラッグレースをやっていてね。あれはそのときの車です。パンテーラは今でもよく乗っていますよ。

Bose:この車がガレージに隠してあったことで、これまで聞いた社長のMTに対する信念、古い車の苦労話に一気に深みが出ましたよ(笑)。それにしてもなんでパンテーラなんですか?

高橋社長:私は今、45歳ですが、20代の頃に頑張ってきた自分へのご褒美と思ってカウンタックを買いに行ったんです。でも当時からカウンタックは高くてとてもじゃないけれど買えなかった。ちょうどそのときにパンテーラがあると言われて、私でも無理すればなんとか手が出せる価格だった。それで思い切って乗ることにしたんです。もう20年くらい前の話ですよ。

Bose:ひとつの車を長く大切にしてきた社長がやっている、マニュアル車をウリにした中古車屋さん。免許取り立ての若い子もいろんなことを相談できそうだね!

▲ガレージから出てきた社長の愛車、デトマソ パンテーラに大興奮! 「手をかけながら気に入った1台に乗り続ける。これこそ車好きの夢だよね」 ▲ガレージから出てきた社長の愛車、デトマソ パンテーラに大興奮! 「手をかけながら気に入った1台に乗り続ける。これこそ車好きの夢だよね」
▲高橋社長の愛車を見ながら雑談。「最近は普通のMT車も手に入りづらくなっているから、マニュアルを探している若い子が可哀想」だと言います ▲高橋社長の愛車を見ながら雑談。「最近は普通のMT車も手に入りづらくなっているから、マニュアルを探している若い子が可哀想」だと言います


イベントのお知らせ

『スチャダラ2016 ~LB春まつり~』
公演日時:2016年4月17日(日)
開場時間:15:30 /開演時間:16:30
会場:日比谷野外大音楽堂
※雨天決行・荒天中止
料金(税込):前売 \6,500(全席指定)
チケット発売日:2月20日(土)

<各プレイガイド>
チケットぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット 0570-084-003
イープラス http://eplus.jp

主催:HOT STUFF PROMOTION
企画・制作:Melody fair/HOT STUFF PROMOTION
INFO:HOT STUFF 03-5720-9999
www.red-hot.ne.jp

text/高橋 満(BRIDGE MAN)
photo/篠原晃一