▲子供が独立した後に、若い頃に乗っていた、または憧れていた車を購入する中高年層は少なくない。団塊世代にオープンカーが人気なのも納得だ ▲子供が独立した後に、若い頃に乗っていた、または憧れていた車を購入する中高年層は少なくない。団塊世代にオープンカーが人気なのも納得だ

日本人は「ドア・イン・ザ・フェイス」に向いてない!?

既婚者にとって車購入の大きなハードルのひとつが、家族の同意だ。若い頃はスポーツカーでのドライブが趣味だった人も、結婚して幾年月。妻からのミニバン圧力に屈した人も多いだろう。せめて次に買い替えるときは自分が欲しい車を手に入れたい。そんなときに使える心理テクニックはないのだろうか。

例えば「ドア・イン・ザ・フェイス」。最初に高い要求をして徐々に要求を下げていき、最後に自らの本当の要求にYesと言わせる方法だ。車でいえば、まずは2シーターオープンカーを提示して、4シータースポーツカーを買わせるといったところか。

しかし、心理学者の内藤誼人先生は「日本人には、ドア・イン・ザ・フェイスは向いていない」と語る。

「最初の要求が大きすぎると、そもそも交渉になりません。妻を怒らせるだけです」

では、いったいどうすれば良いのか。

「ひとつは、スポーツカーでも妻の要望を叶えられるといったデータを示すこと。女性は車の性能やスタイルではなく、その車によってもたらされる生活が重要なんです。荷物が積める、チャイルドシートが設置できるなど、妻が求める生活が満たされるなら、スポーツカーでもいいはずです」

▲妻が喜ぶ条件は「燃費の良さ」「車内の広さ」「両側スライドドアや低床など子供の乗り降りのさせやすさ」などなどだろう。どれも重要だけど、個人的には加速やハンドリングも考慮して欲しい ▲妻が喜ぶ条件は「燃費の良さ」「車内の広さ」「両側スライドドアや低床など子供の乗り降りのさせやすさ」などなどだろう。どれも重要だけど、個人的には加速やハンドリングも考慮して欲しい

相手にこちらの強い気持ちを見抜かれたら負け!

とはいえ、やっぱりミニバンと比較すると、スポーツカーは使い勝手では分が悪いような……。

「個人的にオススメしているのは“先手譲歩の原則”。これは僕が名付けたのですが、まず最初に譲歩してしまう、という交渉術です」

譲歩したら、お望みの車が買えないのでは?

「そうです。今回は譲歩する。ただし、次に車を買い替えるときには自分の要望に沿った1台を購入すると約束をしておくのです」

そもそも交渉においては「どうしても○○が欲しい」「○○をしたい」という要望がある方が確実に不利。この場合、どうしてもスポーツカーが欲しい男性側が不利となるのだ。だったら、どうしても欲しい車は長期戦に持ち込んで手に入れるのが心理学的には理にかなっているという。

個人的にはあまり長く待ちたくないので、スポーツカーでも妻の要望を満たすことができることを切々と語る方がいいかな。それか、すごーく仕事を頑張ってお金を稼ぎ、自分だけの1台を持つ! って、それが一番ハードルが高そうだ……。

【取材協力(敬称略)】
内藤誼人(ないとう・よしひと):心理学者、アンギルド代表、立正大学客員教授。心理学を応用した実践的なノウハウに着目した著書多数。近著に『同性にモテる技術』 (中公新書ラクレ)、『人はなぜ、「そっち」を選んでしまうのか』(青春出版社)など

text/コージー林田