2010年12月、世界初の量産型電気自動車(EV)として鳴り物入りで発売されたリーフが、今年の1月に世界累計販売10万台を達成。これにより、リーフは世界のEV市場のシェア45%を占める存在となった。

ちなみに、世界累計販売5万台を達成したのは2013年2月。発売から2年以上の月日を要している。しかし、2013年4月に値下げを行ったことで、約10ヵ月でさらに5万台を販売。一時期の販売不振を巻き返し、世界累計販売10万台を達成した。そのリーフが、次の一手に打って出るために狙いを定めたのがブータン王国だ。

日産は、ゼロ・エミッション国家を目指すブータン王国政府をサポート。ブータン王国の首都ティンプーの政府公用車、およびタクシー車両としてリーフを提供することで合意した。既に、サンダー・モーターズ社を現地パートナーとして、ブータン王国における日産車の輸入、販売、アフターサービスを行うことも決定している。

しかし、なぜブータンなのか。世界銀行によると、ブータンの1000人あたりの自動車普及率は57台。約72万人の人口から推測しても、4000台程度しか走っていないことになる。それでも、ブータンでEV事業を行うのには、同国の国家戦略が大きく関わっているのからだ。

ブータン政府は、ゼロ・エミッション国家になるという目標の実現にあたり、EVを重要な戦略として位置づけており、ティンプー市民10万人以上の交通手段をクリーンエネルギーで賄う“クリーン・エレクトリック”シティとなることを目指しているとのこと。この理念に賛同し、ブータンをEVにとって象徴的な存在にしたいという考えもあるのだろう。

さらに、ブータン側には、1990年代後半から推進している水力発電による再生可能なクリーンエネルギーを有効活用したいという思いある。

ブータンのクリーンエネルギーは、輸出も行っているが、一方で、化石燃料である石油を輸入している。自国のクリーンエネルギーを有効活用して石油輸入を少しでも減らしたいようだ。そこで、日産は、水力発電によるクリーンエネルギーを使った急速充電インフラの全国ネットワークの拡充も予定している。

もしも、ブータンで完全なEV社会が実現できたなら、それは他の国でも実現できる可能性があるということ。新興国でのEV普及における試金石として、今後の動向を見守っていきたい。

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