今夏、8月4日に種子島宇宙センターから国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられる予定の「こうのとり」4号に、ロボット宇宙飛行士が搭乗すると話題になっている。彼の名は「キロボ」。今冬、日本人初の船長としてISSに滞在する若田光一氏の到着を待ち、世界で初めてとなる“宇宙における人とロボットとの会話実験”を、ISS内のきぼう日本実験棟内で実施する予定だ。

お披露目された「キロボ」は、身長約34cm、体重1kgととっても可愛らしいサイズだが、その能力は侮れない。相手の顔を覚えて挨拶をしたり、言葉を音声認識して一問一答に応じたり、相づちを打ったりすることもできる。この技術を生かして、若田さんの話し相手になったり、地上からの指示や実験手順を伝えることでミスを防いだり、作業を効率化したりできるかを調べるのだという。

「キロボ」は、ロボ・ガレージ、電通、東京大学先端科学技術研究センター、トヨタの協同プロジェクト。トヨタは「音声認識を用いたロボットの知能化」という分野を担当している。「なぜ自動車メーカーがロボット?」と不思議に思うかもしれないが、実はトヨタはロボットにおいても、日本を代表する企業なのだ。

トヨタは創業以来「モノづくりを通じての豊かな社会づくり」という企業精神に基づき、自動車工場で培った産業ロボットの技術を進化させ、社会の中で人と共生し、人の役に立つ「パートナーロボット」の開発に取り組んでいる。

2000年頃に要素技術の研究が開始され、2005年には愛知万博でトランペットを吹く二足歩行ロボットがデビュー。現在は介護・医療支援、生活支援、移動支援の分野で活躍するロボットが開発されており、2020年以降にはトヨタの中核事業のひとつになるともくされている。

自動車メーカーでいえば、ASIMOで有名なホンダも、「Honda Robotics」の名称で、ヒューマノイドロボット研究を行い、量産製品への転用や応用製品の実用化に取り組んでいる。最新のASIMOは自律行動制御技術を搭載することで自律性を高め、周囲の人の動きに合わせて自ら行動する判断能力を備えたことで、人による操作を受けずに連続して動き続けることができるという。

自動車が社会のあり方を大きく変えたように、ロボットがこれからの社会をより豊かにしてくれる。そんな未来の種が自動車メーカーによって育まれている。

キロボの声にはHOYAサービスの音声合成ソフトウェアVoiceTextを採用。会話のコンテンツは電通が作成している

キロボの声にはHOYAサービスの音声合成ソフトウェアVoiceTextを採用。会話のコンテンツは電通が作成している

無重力実験に挑むキロボ。他にも合計12の試験を行っている。写真左奥にはロボットデザイナー、高橋智隆氏の姿も

無重力実験に挑むキロボ。他にも合計12の試験を行っている。写真左奥にはロボットデザイナー、高橋智隆氏の姿も