6月24日~28日にスイス・ジュネーブで開催された国連欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第160回会合で、水素燃料電池自動車の安全性に関する国際基準が成立した。2005年に国土交通省が策定した安全基準の大部分が盛り込まれ、今後、日本の自動車メーカーが開発競争で優位になる見込みだ。

WP29は、国連で自動車の世界的な基準調和を議論する唯一の場。各国は今回採択された世界統一基準に基づいて法律などを定めるため、現在の基準を変更しないで済む国産メーカーにとっては朗報といえる。

燃料電池車は水素を燃料とし、空気中の酸素と反応させて発電し、モーターを駆動する。電気自動車(EV)と同様に排気ガスを一切出さないため「究極のエコカー」と呼ばれるが、燃料の水素が燃焼・爆発しやすく、高い安全性を確保する必要がある。

今回成立した基準は「水素漏れ防止」(排気される気体の水素濃度が4%を超えないこと)、「感電防止」(高電圧の電気装置に直接接触できないよう被覆すること)、「衝突時安全性」(車両衝突後60分間の水素放出が、1分当たり118NLを超えないこと)、「水素タンク強度」(2万2000回の圧力サイクルに耐える耐久性を備えること)の4項目となっている。

燃料電池車の開発は巨額の費用がかかるため、現在では「トヨタとBMW」、「日産とダイムラーとフォード」といった共同開発が盛んだ。さらに7月2日には「ホンダとGM」が共同開発することを発表したばかり。今回の採択を受けて、日本の自動車メーカーが世界のパートナー企業や、ひいては自動車業界全体をリードするという雄姿を目にする日も近いかもしれない。

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